離婚裁判とは? 裁判の流れと早期解決を目指す方法を弁護士が解説

2018年05月30日
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離婚裁判とは? 裁判の流れと早期解決を目指す方法を弁護士が解説

離婚に向けて協議しようとしても条件が折り合わなかったり、相手方から協議そのものを拒否されたりした場合には、裁判所で離婚調停を経て離婚裁判で争うことになります。

本記事では、離婚裁判ではどのようなことが行われるのか、またかかる費用や早期解決の方法について考えてみたいと思います。

1、離婚裁判について

「配偶者と離婚を考えているけれど、話し合いが進まない」「事情があって、そもそも話し合える状況にない」という場合には、裁判所を利用した法的手段を取ることになります。ここでは、その最終手段となる離婚裁判について解説します。

  1. (1)離婚裁判とは

    夫婦が離婚を考える際は、まず相手方と離婚や離婚条件に関する協議をします。夫婦間の協議により離婚することを「協議離婚」と言います。

    協議が進まない場合は、離婚するかしないか、慰謝料や財産分与の支払いをどうするか、夫婦間に未成年の子がいる場合は親権をどちらが持つか、養育費をどうするかなどについて、裁判で判断をしてもらうことになります。これが離婚裁判と呼ばれるものです。

  2. (2)調停前置主義

    「夫婦での協議ができないから離婚裁判をしたい」と考えても、いきなり裁判を起こすことはできません。

    法律上、離婚裁判を起こす前には、離婚調停を先にしなければならないことになっているからです。これを「調停前置主義」といいます。

  3. (3)法定離婚事由に当てはまらなければ離婚裁判はできない

    離婚裁判では、民法で定められた5つの離婚事由に当てはまらなければ原則として離婚が認められません。

    その5つの事由とは、以下の通りです。

    民法で定められた5つの離婚事由

    • 配偶者以外の相手と肉体関係を伴う不倫(「不貞行為」)をした
    • 同居や夫婦間での協力・扶養義務を怠るなどの「悪意の遺棄」がある
    • 配偶者が3年以上「生死不明」の状態であること
    • 配偶者に回復の見込みのない「強度の精神病」がある
    • その他、婚姻を継続しがたい「重大な事由」がある

2、離婚裁判を起こす必要があるケース

離婚裁判を起こしたほうが良いケースには、主に3つのケースがあります。

  1. (1)相手方が離婚協議に応じない場合
  2. (2)離婚調停をしても折り合いがつかない場合
  3. (3)法定離婚事由にあてはまる場合

以下で詳しくみていきましょう。

  1. (1)相手方が離婚協議に応じない

    夫婦のどちらか一方が「離婚したい」と伝えて離婚に向けて話し合いを始めようとしても、相手方が「離婚したくない」などと言って協議が進められないことがあります。

    この場合は調停を経て裁判にしたほうが良いでしょう。

  2. (2)離婚調停をしても折り合いがつかない

    また、裁判所の調停委員のもとで離婚調停をしても折り合いがつかない場合も、離婚裁判に移行したほうがよいでしょう。
    たとえばDVやモラハラが原因で離婚する場合は、相手方が指定された期日に出廷せず話し合いが進められないことがあるため、裁判にしてしまったほうが良いと考えられます。

  3. (3)法定離婚事由にあてはまる

    先述の通り、離婚裁判を起こして勝訴するためには、民法上定められた離婚事由のいずれかに当てはまっていることが条件となります。

    逆に言えば、法定離婚事由にあてはまっていれば、離婚裁判を起こして争うことができるため、協議や調停が整いそうにない場合は裁判へ移行したほうが良いこともあります。

3、離婚裁判で必要な書類・費用について

離婚裁判で必要な書類は、主に訴状・調停不成立証明書・戸籍謄本の3つです。
その他、養育費や財産分与などを請求する場合は預貯金通帳のコピーなどの証拠資料も必要となります。

  1. (1)訴状

    訴状とは、離婚裁判を求める側(原告)が作成し、裁判所に提出する書類のことを指します。
    裁判を起こすには、事件の内容に応じて裁判所に収入印紙を納める必要があります。

    離婚を請求するだけの場合は印紙代として1万3000円が必要ですが、財産分与を請求すると1200円が、養育費も請求すると子ども一人につき1200円がそれぞれ加算されます。また、離婚慰謝料を請求する場合は、慰謝料の金額によって、以下のように印紙代の金額が異なります。

    慰謝料を請求する場合の印紙代
    (請求金額が)160万円まで 1万3000円
    200万円まで 1万5000円
    300万円まで 2万円
    500万円まで 3万円


    同時に、裁判所から相手方に訴状などを送るときの切手代(6,000円程度)も必要となります。裁判所によって額が異なりますので、事前に電話などで問い合わせるといいでしょう。

  2. (2)調停不成立証明書

    調停不成立証明書とは、調停が整わなかったことを証明するための書類のことを言います。
    この証明書を取得するには、裁判所に調停不成立等証明申請書を作成して提出します。なお、調停不成立証明書の申請には、300円の印紙代が必要です。

  3. (3)戸籍謄本

    さらに、提訴するときには夫婦の戸籍謄本も必要になります。

    戸籍謄本の発行手数料は1通あたり450円です。郵送で取り寄せる場合は、返信用封筒に貼る切手代が必要になるほか、現金の代わりに定額小為替で支払うので手数料100円がかかります。

4、離婚裁判の流れ・手順について

離婚調停が整わず、離婚裁判を起こした場合、以下のような流れに沿って進みます。

  1. (1)裁判所に提訴する

    原則として、夫婦のどちらかの住所地を管轄する家庭裁判所に訴状などの必要な書類をそろえたうえで離婚裁判を提起(提訴)します。

    ただし、調停を行った家庭裁判所でそのまま離婚裁判を行う場合もあります。訴えられたほう(被告)には、裁判所から訴状が届きます。
    被告は、指定された期日までに、裁判所と原告(またはその代理人)に答弁書を送らなければならないことになっていますので、提訴した後は相手方から答弁書が届くのを待ちましょう。

  2. (2)口頭弁論

    提訴から約1ヶ月後に、第1回目の口頭弁論が行われますので、原告・被告とも指定された期日に裁判所へ出廷します。

    口頭弁論では、訴状や答弁書のほか、原告・被告双方が事前に裁判所へ提出した書類をもとに、原告・被告双方が主張を展開します。

    その後1ヶ月に1回程度の頻度で口頭弁論が行われます

  3. (3)結審・判決

    審理を重ねて、争点・書証の整理、証拠調べと裁判が進み、原告・被告双方の争点が明らかになったところで、本人尋問や証人尋問が行われます。

    この本人尋問・証人尋問を最後に離婚裁判が結審します。結審から約1~2ヶ月後に裁判官が判決を下し、裁判所から原告・被告双方に判決書が送られてきます。

    離婚を認める場合には、判決書に「原告と被告とを離婚する」と記載されます。

5、離婚裁判にかかるおおよその期間について

離婚裁判は、争点が多ければ多いほど期間が長くなる傾向があります。
また、争点の中に「親権者の指定」「養育費の請求」がある場合は、当事者の主張立証のほか、家庭裁判所の調査官による調査が入るため、期間が長引くことになります。

  1. (1)判決が出るまでには1年~1年半かかる

    最高裁判所事務総局家庭局の公表資料によると、平成28年の離婚裁判全体の平均審理期間は12.3か月となっています。
    しかし、原告・被告双方による口頭弁論が行われ、判決まで至ったケースでは平均審理期間が17.3か月となっています。(※)

    つまり、離婚裁判を行う場合は、およそ1年から1年半ほどの期間がかかると思っておいたほうがよいでしょう。一般的には、争点が多ければ多いほど裁判が長引く傾向があります。

  2. (2)早期解決したければ和解勧告に応じるのもひとつの手段

    離婚裁判の審理を行っている最中に、裁判官から和解を勧告されることがあります。
    原告・被告双方が話し合い、お互いが納得すれば、判決を待たず和解により早期に裁判を終わらせることが可能です。
    和解が成立すれば、裁判所のほうで和解調書が作成され、離婚が成立します。

    最高裁判所事務総局家庭局の公表資料によると、平成19年から28年まで毎年およそ1万件前後の訴訟が提起されており、そのうち4500件前後で和解が成立しています。
    つまり、離婚裁判を提起してもおよそ半数が和解離婚に至っているのです。(※)

    (※)最高裁判所事務総局家庭局「人事訴訟事件の概況(平28.1~12)」

6、弁護士に依頼した場合の費用について

離婚裁判の場合は、ほとんどの当事者が弁護士を立てています。

弁護士に支払う費用は、主に法律相談料・着手金・報酬金の3つに分けられます。このほか、事務手数料や裁判所に出廷するときの日当や交通費、切手代なども必要です。

  1. (1)法律相談料

    弁護士の法律相談料は、30分5000円(消費税別)が一般的ですが、最近では初回相談料無料という法律事務所も増えてきました。

  2. (2)着手金

    離婚問題の解決に向けて、弁護士が実際に着手するときに弁護士に支払うお金です。

    離婚を請求するのみの場合は30万円程度であることが多いですが、さらに財産分与や養育費、慰謝料などを請求する場合は別途費用がかかります。

  3. (3)報酬金

    弁護士が問題を解決した後に、弁護士に支払うお金です。

    訴訟で離婚が成立した場合は40万円程度の場合が多く、財産分与や慰謝料、養育費、親権が得られた場合は、別途費用が加算されます。

  4. (4)その他実費

    上記のほかに、事務手数料として3万5000円程度(印紙代は別途)、裁判所に出廷するときの日当として、着手金に含まれる期日回数を超えた場合に1期日につき3万円程度かかりる場合があります。

7、離婚裁判を弁護士に依頼するメリット・デメリット

離婚裁判を弁護士に依頼するとメリットも数多くありますが、その反面デメリットもあります。離婚裁判を弁護士に依頼するメリットとデメリットはそれぞれどのようなものがあるのでしょうか。

  1. (1)離婚裁判を弁護士に依頼するメリット

    ①手続きを有利に進めることができる

    離婚裁判を弁護士に依頼するメリットとしては、まず手続きを有利に進められることがあげられます。

    裁判を有利に進めるには、状況に応じて適切な証拠を示しながら主張を展開し、裁判官に納得してもらうことが何よりも大切です。

    弁護士に依頼をすることで、しっかり戦略を練った上で法的に論理整合性のとれた主張ができるので、こちら側に有利な条件を引き出せる可能性も高まるでしょう。

    ②裁判所に出廷しなくてすむ

    裁判所に出廷しなくてすむことも、離婚裁判を弁護士に依頼することの大きなメリットです。
    口頭弁論は一般的に平日の日中に行われるので、仕事を持っている人であれば仕事の都合をつけて出廷する必要がありますが、弁護士に依頼すれば弁護士が代理人として出廷してくれるので、仕事を休む必要もなくなります。

  2. (2)離婚裁判を弁護士に依頼するデメリット

    ①高額な費用がかかる

    離婚裁判を弁護士に依頼するデメリットは、やはり高額な費用がかかることではないでしょうか。1回離婚裁判を起こすだけで、着手金や報酬をあわせると合計100万円以上かかることもあります。
    そのため、分割払いやクレジットカード決済ができるように配慮している法律事務所も多くあります。

    離婚裁判の費用は事案により異なりますので、実際に裁判をお考えの場合には担当の弁護士と費用面についてもしっかりと確認をしておくとよいでしょう。

    この時、費用の内訳を曖昧にしたり、説明をしぶるような弁護士なら、安心してまかせることはできません。後々、「こんなに裁判費用がかかるなんて!」という事態になりかねません。デメリットもしっかり説明してくれる、信頼できる弁護士を選ぶべきです。

    ②満足のいく結果が得られないこともある

    裁判では、具体的な状況・証拠を提示した上で、希望する離婚条件について主張を行うことになります。

    しかし、過去の判例等も踏まえた上で法的観点から客観的に判断がなされるため、離婚裁判をしたからといって、必ずしも満足のいく結果が得られるとは限りません。
    場合によっては、慰謝料や養育費が主張した額よりも少ない額で終わってしまうケースや、離婚自体が認められない可能性もあり得ます。

    離婚問題の取り扱い経験が豊富な弁護士であれば、裁判の見通しも立ててくれますので、相談をしておくとよいでしょう。

    また、弁護士の能力により裁判の流れが変わってしまうこともあります。

    弁護士が離婚裁判に慣れていなかったり、揃えた証拠が十分なものでなかったりすると、裁判で満足のいく条件で解決することが難しくなるでしょう。
    離婚裁判を満足がいく結果にしたいのであれば、「離婚問題の取り扱い経験が豊富な弁護士」に依頼するのが最も安心です。

    また、離婚裁判では弁護士とは長い付き合いになりますので、経験が豊富なだけではなく相性の合う弁護士を選ぶのも大きなポイントです。

8、離婚裁判をお考えの場合は、早めに弁護士へ相談を

離婚裁判となると、長期戦を強いられることになります。

弁護士に依頼をすれば、書類作成や手続きのサポートから精神的なサポートまで、さまざまな場面で強力な味方となってくれるでしょう。

そのため、裁判になる前にできるだけ早い段階で法律のプロである弁護士に相談しておくことをおすすめします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています