専業主婦の熟年離婚…知っておくべき情報は?弁護士が教えます!
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長年の性格の不一致に耐えられない…子どもたちも独り立ちして、老後は第二の人生を自由に歩みたいなど、様々な理由で熟年離婚を考える専業主婦の方々は多くいらっしゃいます。話し合いで離婚が成立するケースもありますが、夫がなかなか離婚に応じてくれないこともあります。
これからの人生を豊かに過ごすため、弁護士への相談を考えておられる専業主婦の皆様のために、熟年離婚について詳しく解説します。
1、熟年離婚とは
そもそも熟年離婚とは、長い間連れ添った夫婦が中高年層で離婚をすることを言います。
今までは、女性の方から離婚を切り出すケースが多いとされてきましたが、現在は男性も様々な理由から離婚を切り出す熟年離婚のケースが増えているようです。
2、熟年離婚の原因・理由は?
離婚する多くの夫婦は「性格の不一致」が原因で離婚しますが、長年連れ添った夫婦の間ではどんなことが原因で離婚するのでしょうか。
- 定年退職後、一日中共に生活をすることが苦痛
- 退職金が出るまで待っていた
- 会話がない
- 性格の不一致
- 相手の親の介護がつらい
- 相手からモラハラやDVを受けている
- 家にいても、全く家事をしない
- 子どもが自立したため
- 相手の不倫や浮気問題
- 価値観の違い
など
「性格の不一致」という一般的な離婚理由から、「子どもが自立したため」や「退職金が出るまで待っていた」など熟年離婚ならではの理由もあります。
3、弁護士に依頼したときの離婚の流れ
弁護士に解決を依頼したとき、いきなり裁判にはなりません。調停前置主義があるから、調停なしにいきなり訴訟はできないのです。
原則、離婚手続きは「交渉 → 調停 → 訴訟」という流れで進んでいきます。
順番に見ていきましょう。
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(1)交渉
交渉は、弁護士が最初に行うステップです。
弁護士は、あなたの代理人として、ご主人と話し合いを行います。弁護士が代わり交渉を引き受けますので、あなたが直接夫と話し合う必要はなくなります。
弁護士は、あなたから十分に事情を伺った後、あなたが離婚したい理由を整理してご主人に説明するとともに、なぜご主人が離婚に応じられないのかを聞き、状況を整理していきます。
解決の糸口がみつかれば、弁護士は、あなたにとって最善の条件獲得を目指して交渉を詰めていきます。ご主人が納得すれば、晴れて離婚成立となります。交渉のメリット
弁護士が参加することで、話がこじれていた原因が明らかになり、解決の糸口がみつかる可能性が高まります。
今まで妻が離婚を口にはしていても、本気だとは思っていなかった夫が、弁護士が入ったことで妻の真剣さを理解し、話し合いが前進することがあります。
また、夫が離婚自体は仕方ないと思っていても、財産分与の金額やマイホーム、退職金の扱いについて不安を持っており、離婚を渋っていたことが分かるなど、複雑に絡まった糸がほぐれていくこともあります。
交渉の限界と、その後の流れ
ただし、すべてのケースで上手くいくとは限りません。
弁護士が代理人として交渉しただけでは、夫が納得せず、解決の見通しが立たないケースもあります。そういった場合、調停という手続きを選択します。 -
(2)調停
調停とは、家庭裁判所で行う話し合いの手続きです。
調停委員が、あなたとご主人から順番に事情を聴き、合意に向けてお互いを説得します。
弁護士は、調停にあなたと一緒に出席し、あなたが意見を言うのをサポートしたり、裁判所に提出する書面を準備したりします。話し合いがまとまれば、調停条項が作成され、離婚成立になります。調停のメリット
調停をすると、弁護士のみならず、公平な第三者である調停委員からも意見を言ってもらえるので、夫の考えが変わる可能性が高まります。
また、調停の費用は、1200円の印紙代と切手代だけなので、合わせても数千円の範囲です。
調停の限界と、その後の流れ
調停も、あくまで合意がなければ成立しないので、どうしてもご主人が応じない場合、調停は不調で終わってしまいます(ケースによっては、審判が出る場合もあります)。
それでも離婚したい場合、次はどうすればよいのでしょうか。
その場合、最後の手段として、訴訟を提起することになります。
注意点として、訴訟を進めるには、調停を経ておく必要があります(これが調停前置主義です)。 -
(3)訴訟
訴訟は、家庭裁判所で行う裁判手続きで、判決を求める手続きです。
訴訟になった場合、弁護士はあなたの言い分を整理して書面で主張します。そして、書面を通じて論点が明らかになった後は、必要に応じてあなたやご主人、親族等の尋問を行っていきます。 最終的には判決が下りますが、もし途中で和解が成立すれば、そこで解決します。訴訟のメリット
訴訟の結果は、最終的には判決で決まりますので、合意がなくても、離婚が成立する点が最大のメリットです。
訴訟の限界
訴訟で勝訴するためには、離婚原因(民法770条)が必要です。
夫の不貞行為や、性格の不一致で長年家庭内別居が続いている等、婚姻を継続しがたい重大な事由等が必要です。これがない場合、離婚は認められず、敗訴してしまいます。
弁護士はそうした点を見極めて、訴訟が適切な手続かどうかにつき、メリット・デメリットをあなたに説明し、あなたに合った手続きを提案します。
4、財産分与や年金分割、退職金などの金銭関係
専業主婦の方の熟年離婚の場合、最も大きな問題となるのが金銭問題です。
複雑ですが、今後の生活の糧は、熟年離婚を考える場合、どうしても避けては通れない大切な問題です。
ここでは、弁護士が熟年離婚の金銭問題にまつわる大切なポイントを順番にご説明します。相談前にこれらのポイントを押さえておいていただくと、ご相談の際、お話をスムーズに進めることができます。
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(1)財産分与
財産分与とは、結婚している間に夫婦が築いた財産を清算するために、財産を夫婦で分けることです。原則として、夫婦で半分ずつ、財産を分けることになります。
家・土地・預貯金等、結婚している間に築いたあらゆる財産(共有財産)が、分与の対象となります。
共有財産の判断に、名義は関係ありません。婚姻中に築いた財産かどうかがポイントとなります。
専業主婦の方の場合、家の名義がローンの支払いのために夫になっていたり、メインの預金口座が夫名義になっていたりするケースがありますが、心配いりません。
そういった場合でも、婚姻中に築いた財産であれば、きちんと分与の対象になり、2分の1ずつになります。
逆に、結婚前から持っていたお互いの財産(特有財産といいます)は分割の対象となりません。例えば、夫が親から受け継いだ実家の土地・建物等です。
分割割合は、通常半分ずつです。
しかし、離婚の原因を夫側が作ったといえる場合や、長年専業主婦であったので、妻の離婚後の生活が苦しくなる可能性が高い場合には、妻側により有利な条件で分割が行われる場合もあります。 -
(2)年金分割
専業主婦の方の場合、今後の人生を安心して暮らしていくために、大きなカギとなるのが年金です。今後受け取る年金についても、きちんと財産分与の対象となりますから、ご安心ください。
年金分割する場合、今後受け取る年金をその都度、直接分割するのではなく、年金保険料の納付記録を分割することになります。そこで離婚後の年金は、最初から夫婦別々に振り込まれることになります。これが年金分割です。
今後貰える年金の額は、年金保険料の納付実績に従って計算されます。漏れなく納めていればいるほど高くなり、そうでなければ安くなります。
年金分割では、その年金算定のもととなる婚姻期間中の年金納付実績を、夫と原則として半分ずつに分けることになります。合意分割と3号分割
専業主婦の方は、会社員の夫の扶養に入っており、第3号被保険者になっているケースが多いです。その場合は、離婚後、夫の合意なくして、夫の年金記録を自動的に2分の1に分割できるという制度があります(厚生年金法78条の14)。これを3号分割といいます。
そうでない場合は、合意によって分割することになります(厚生年金法78条の2、3)。これを合意分割といいます。
年金分割は、年金事務所への請求によって行います。
そして、原則として離婚から2年以内にしなければいけません。 -
(3)退職金
専業主婦の方にとって、夫の退職金をあてにして、老後の人生設計を考えておられる方も多いと思います。
熟年離婚の場合、基本的には退職金も財産分与の対象となります。
詳しく見ていきましょう。退職金が支払い済みの場合
通常は預金等の形で保管されているので、そのまま預貯金等として分割されます。
ただし、退職金は勤続年数に応じて支払われるものなので、分割の対象になるのは、結婚から離婚までの勤続年数に対応する範囲に限定されてしまいます。
この点、注意が必要です。
退職金の支払いがまだの場合
退職金がまだ支給されていない場合は、退職金の支給が確実に見込まれるという条件を満たせば、分与の対象にはなります。
確実といえるかどうかは、就業規則、勤続年数から判断することになります。
熟年離婚のケースでは、夫が長年会社に勤めているケースが多いので、確実に退職金が支給されるという判断になりやすいです。
ただし、夫が転職を繰り返しており、現在の会社での勤続年数が浅い場合や、退職金の支給規定が会社にない場合、退職金が分与の対象にならない可能性があります。
分与の対象になった場合は、婚姻期間に対応する分の退職金を分与してもらえます。
5、離婚請求を弁護士に依頼するメリット
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(1)負担を減らすことができる
相手がなかなか離婚に同意しない場合、スムーズに話を進められず調停や裁判に進むケースがあります。弁護士に依頼をすることにより、煩雑な書類の作成や今後のやり取りを弁護士が代理人として対応することが可能です。
弁護士が代理人として対応しますので、ご自身で対応されるよりか負担を減らすことができます。 -
(2)有利な条件で進めることができる
熟年離婚する際に気をつけておきたい、年金や退職金などの金銭面で、きちんと正当な財産分与がなされるか判断することができます。
離婚した後は、誰かと共に暮らす以外は一人で生活していくことになりますから、財産分与で不安に感じる方は弁護士に相談すると良いでしょう。 -
(3)相手に離婚の意思が固いことが伝わる
相手と二人だけの話し合いですと、いつもの口喧嘩の延長線上や、冗談に取られてしまう場合があります。
しかし、弁護士に依頼すると分かれば、相手にその本気度が伝わり、正式な離婚に向けて話し合いを進める一つのきっかけとなります。
6、熟年離婚でお悩みの方は弁護士へ
熟年離婚は、必ずしも今後の人生が豊かになるとは限りません。
金銭面については、熟年離婚を考える上でネックとなる部分でしょう。
特に、子どもが成人している場合は注意が必要です。
子どもが成人している場合、離婚しても養育費も婚姻費用も貰えません。よって、離婚後の生活費をどのように確保するかが大きな課題となります。離婚後の生活のことも十分に考慮した上で、財産分与について相手方と交渉をする必要があります。
本コラムをご覧の方の中には、「子どもも成人になって独り立ちしたし、熟年離婚をしよう」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、財産分与についてしっかりと取り決めを行わないまま離婚してしまうと、離婚後、経済的に不利な状況になってしまいますのでご注意ください。
もしも、熟年離婚にご不安がある場合は、弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、財産分与で満足ができるよう、お手伝いできます。
財産分与以外にも、熟年離婚に向けて何か気がかりなことがあれば、一度弁護士に相談してみてください。
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