内容証明郵便でダブル不倫の慰謝料を請求された! 解決策はある?
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名古屋市の統計によると、名古屋市の平成30年の離婚件数は、4294件でした。
離婚の原因となった事情は、それぞれの夫婦によってさまざまでしょう。
ご自身の不倫などが原因となって離婚する際には、配偶者から慰謝料を請求される可能性があります。また、既婚者どうしが不倫をした、いわゆるダブル不倫の場合には「不倫相手の配偶者から、内容証明郵便で慰謝料を請求された」ということもあるでしょう。
このようなダブル不倫の慰謝料請求に適切に対処するためには、それぞれの当事者がどのような権利や義務を負うのかを把握しておく必要があります。
本コラムでは、ダブル不倫における慰謝料請求とその解決策について、ベリーベスト 名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、ダブル不倫の慰謝料請求は複雑
はじめに、ダブル不倫の慰謝料請求は複雑なため、そもそもダブル不倫とは何か、そして不倫の慰謝料請求の基本的な考え方について解説していきます。
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(1)ダブル不倫とは
まず「ダブル不倫」について、確認しておきましょう。
「ダブル不倫」とは、不倫関係にある当事者がお互いに既婚者であることを指しています。
一般的に不倫というと、既婚者と未婚者の不倫関係がイメージされることもあるため、両方の当事者がどちらも既婚者である不倫については、このように呼ばれることがあります。 -
(2)不倫の慰謝料とは
夫婦は民法752条により、お互いに同居義務や貞操義務を負っています。
そのため、それに違反する行為をすれば、民法709条に定められている不法行為に該当し、であり、慰謝料請求が認められています。
妻が不倫をした場合、夫は妻と不貞相手、ふたりから不法行為を受けたことになります。夫は、妻と不貞相手が共同して行った不法行為によって、精神的苦痛を受けたことになるため、民法709条により、慰謝料を請求することができます。 -
(3)ダブル不倫の慰謝料請求はなぜ複雑?
ダブル不倫で慰謝料請求をする場合には、不法行為の被害者がふたりいますので、双方の家庭に加害者と被害者がいることになります。
具体例で解説していきます。
たとえば夫Aと妻Bの夫婦と夫Cと妻Dの夫婦がおり、AとDが不倫関係になったとします。この場合、AとDの不倫は「共同不法行為」であり、AとDは2人でひとつの不法行為を行った「共同不法行為者」となり、「不真正連帯債務」として慰謝料支払い義務を負います。そして、被害者は、AとD2人に対して慰謝料を請求するか、どちらか一人に対してのみ請求するかを選択することができます。
このケースでは、まず、妻Bは不倫された被害者として、自分の夫Aと夫の不倫相手であるDに慰謝料を請求できます。AB夫婦が離婚しないときには、同一家計内は「財布はひとつ」であるため、夫Aには慰謝料請求せず、不倫相手のDのみに慰謝料を請求することも多いです。
しかし、問題は、Bだけでなく妻Dに不倫されたDの夫Cも被害者であるという点です。Cも、自分の妻Dの不倫相手Aと、自分の妻であるDに対して慰謝料を請求可能です。この場合も、CとDが離婚しないときには、家計内での慰謝料請求は回避して、Aに対してのみ慰謝料を請求することが多いです。
そのため、同一家計の夫婦単位でみると、AB夫婦からCD夫婦に慰謝料を請求することができますが、CD夫婦からAB夫婦にも慰謝料を請求することができることになります。
つまりAB夫婦とCD夫婦はお互いに慰謝料を請求し合うことができるので、実質的に経済的な利益を得られない可能性があります。
しかし双方の夫婦が離婚したり一方の夫婦のみが離婚したりすれば、また話は変わります。
離婚した後は元夫婦の財布は別々になるため、AB夫婦が離婚し、CD夫婦は離婚しない場合、Bは、不貞相手Dに加えて、元夫Aに対しても慰謝料請求に踏み切ることも多くなります。これに対し、Cは妻Dには慰謝料請求せず、不貞相手のAのみに対して慰謝料請求をすることになります。
そして、慰謝料の請求を受けた不倫相手の配偶者が、ダブル不倫の事実を知っているかどうかによっても違いが生じます。というのも、仮に、Cが、妻Dの不倫の事実を知らなければ、CD夫婦からAB夫婦に対する慰謝料請求はされず、AB夫婦からDに対する慰謝料請求のみ行われ、AB夫婦に、経済的な利益が生じる可能性があるためです。
このように、さまざまな事情を考慮したうえで、慰謝料を請求する必要があるので、ダブル不倫の慰謝料請求は複雑だといえるでしょう。
2、不倫の慰謝料は、減額できるのか?
慰謝料請求されたときには、相手が提示する金額が適正なのかを判断する必要があります。ここでは、どのような事情が不倫の慰謝料に影響するのか、確認していきましょう。
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(1)慰謝料の金額に決まりはない
慰謝料の金額に法的な決まりはなく、当事者同士が話し合いで合意できればその金額が支払額となります。しかし、当事者同士で合意できないときには、裁判などで慰謝料額を決めることになります。
裁判で認められうる慰謝料の金額は、様々な事情(たとえば結婚している期間や、未成年の子どもの有無・人数、社会的な地位や資産など)によって大きく変わってきます。 -
(2)どんな事情であれば、減額されるのか?
ダブル不倫の場合、
- 相手夫婦が離婚しない場合
- 自分ではなく不倫相手が不倫関係を主導していた場合
上記の場合には自分が支払うべき慰謝料が減額される可能性があります。
また、相手夫婦の夫婦関係が、不倫前から破綻していたときには、そもそも慰謝料を支払う義務が生じない可能性があります。
このように不倫慰謝料の金額は、それぞれのケースで大きく異なるので、ご自身だけで判断することなく弁護士に相談するのがよいでしょう。
3、内容証明郵便を無視したらどうなる?
それでは、不倫相手の配偶者から慰謝料を請求するという内容証明郵便が送付されてきたときには、どのように対処をすべきでしょうか。無視してそのまま放置してもよいのでしょうか。
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(1)内容証明郵便では強制執行はできない
内容証明郵便は、郵便局員から直接手渡しされ、郵送した日時や受取の証明ができるため、慰謝料請求の有無が争いになったときの証拠となります。また慰謝料請求権が、時効によって消滅することを防ぐためにも利用されます。
しかし内容証明郵便には法的な強制執行力はなく、それだけで給与や財産が差し押さえられることはありません。したがって冷静に「慰謝料の支払い義務があるかどうか」「請求額は妥当なのか」を検討する必要があります。
ただし法的な効力はないからといって、内容証明郵便を無視して対応しなければ慰謝料請求訴訟を提起される可能性があります。 -
(2)無視すれば裁判になる可能性もある
裁判を起こされたときには、請求の当事者同士が主張や立証を行い、最終的には裁判官が判決を言い渡す形で、解決が図られます。
判決で慰謝料の支払いを命じられたのにもかかわらず、その支払いが滞った場合には、給与や財産などを差し押さえられる可能性もあります。
そのため内容証明郵便が送付されたときには無視することなく、早期に次のような解決方法をとるようにすべきでしょう。
4、ダブル不倫の慰謝料請求はどのように解決したらよい?
ダブル不倫で相手の配偶者から慰謝料請求されたときには、裁判になる前に次のような方法をとり、早期解決を図ることがのぞましいといえます。
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(1)示談での話し合い
内容証明郵便などで相手の配偶者から慰謝料請求されたときには、請求者と直接連絡をとり話し合って解決するのも方法のひとつです。
話し合いでは、「慰謝料請求に応じるかどうか」「支払う金額」「分割払いまたは一括払いなどの支払いの方法」などを決めていきます。
しかし直接話し合いをするとなるとお互いに感情的になり、話し合いが進まず大きな精神的負担となることも少なくありません。 -
(2)弁護士が代理人として交渉
不倫相手の配偶者から慰謝料請求されたときには、弁護士に相談すればスムーズに解決できる可能性が高まります。
弁護士は、ご相談者の代理人として請求相手と交渉することが可能です。ご相談者にとっては、直接請求相手と顔を合わせることなく解決を図ることができるため、精神的負担も軽くなります。
また、弁護士は、請求額が適切かどうか、裁判例などをもとに判断することができます。そして過大な請求であれば、根拠を示して減額を求めて交渉することも可能です。
さらに、裁判になったときでも、法的に有利な主張や立証をして有利な判決を得られるように活動をします。
一般的に弁護士が関与すれば、請求者は不当な要求をしにくくなり、示談成立となる可能性が高くなります。その際示談書を作成すれば、後日の紛争予防にもなるでしょう。
5、まとめ
本コラムでは、ダブル不倫における慰謝料請求とその解決策について、解説していきました。
ダブル不倫は、さまざまな事情を考慮しなければならないため、慰謝料請求の問題が複雑になりがちです。
解決策としては、早期から弁護士に相談して、相手との交渉を任せることがおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士は、ご相談者のご希望をうかがい、その希望に近い形で解決できるよう尽力します。ダブル不倫の慰謝料請求でお悩みの際には、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています