別居期間が長ければ離婚が認められる? 必要な期間と注意点を解説
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「長期間別居すれば、離婚しやすくなる」という話を聞いたことがありませんか?確かに別居期間は、裁判所の離婚の判断と無関係ではありません。相手が離婚に納得してくれず別居を続けている方は、どれほどの期間、別居をすれば裁判で離婚が認められるのか気になっていることでしょう。
名古屋市では令和元年に13874組が結婚した一方、4144組が離婚しています。別居は現代では珍しくなく、この中にも別居をしていた夫婦は少なくないでしょう。
では別居期間と離婚の判断にはどのような関係性があるのでしょうか?別居の際の注意点と合わせて解説します。
1、別居すれば離婚できる?
「生活スタイルが合わない」「冷却期間をおきたい」「愛情がなくなった」などの理由から別居を選択する夫婦は珍しくありません。では離婚を考えている場合、「別居していた」という事実は離婚に有利に働くのでしょうか?
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(1)別居から離婚をする方法
離婚方法には大きく分けて「話し合い」「調停・審判」「裁判」の3つの方法があります。
お互いが離婚に同意していれば、話し合いで財産分与や慰謝料、子どもの親権などの条件を決め、離婚届を提出すれば離婚できます。
しかし、どちらかが離婚に納得していない場合や親権に争いがある場合は、簡単には離婚できません。
話し合いで離婚がまとまらなければ、次に家庭裁判所に調停を申し立てて離婚を目指します。調停で双方が合意すれば離婚できます。
調停とは、裁判所で調停委員を介しながら、相手方と離婚について話し合うことです。
調停当日には、双方裁判所に行くことになりますが、原則として相手方と顔を合わせることなく、調停委員が個別に話を聞き、妥協点を探ります。調停は成立の見込みがあれば複数回開かれ、離婚や親権その他の離婚条件について双方が納得すれば、裁判所の主導で調停条項が確定されます。調停条項を裁判官が当事者双方立ち合いのもと読み上げることにより調停は成立します。双方が納得しなければ、調停不成立となります。
調停が不成立の場合は離婚を希望する側が裁判を起こす方法がありますが、そこで問題となるのが「離婚事由」です。
裁判所は法律で定められた離婚事由があると判断しない限り、離婚を認めてくれません。そのため裁判を起こす場合には、離婚事由に該当する事実があるかどうかをまず確認する必要があります。 -
(2)離婚事由とは
民法で定められた離婚事由は、次の5つです(民法第770条)。
- 配偶者の不貞
- 悪意の遺棄
- 配偶者が3年以上生死不明
- 配偶者が重度の精神病で回復の見込みがない
- その他、結婚生活を続けるのが難しい重大な事由がある
いずれかに該当した場合、それを証拠などから明らかにして離婚訴訟を提起すれば離婚が認められる可能性は高いでしょう。
ただしこれを見ておわかりかと思いますが、ここに「別居」という言葉はありません。では別居は離婚事由として認められないのでしょうか? -
(3)別居はその他、結婚生活を続けるのが難しい重大な事由、に該当する可能性がある
別居は不倫などと違って離婚事由として明記されていませんが、結婚生活を続けるのが難しい事由の一例として認められています。
この、結婚生活を続けるのが難しい、重大な事由の代表的なものとしては、DVやモラハラ、浪費ばかりして働かない、行き過ぎた宗教活動、性格の不一致などがあげられます。
別居も一時的な帰省などではなく長期間に及んだ場合、愛情や信頼が失われて関係修復が不可能になることがあります。そうなればこの先、夫婦として生活していくのは難しいでしょう。
そのため裁判上の離婚事由にあたり、離婚が認められる場合があります。 -
(4)別居の原因を作った側からの離婚請求は難しい
別居は裁判離婚のひとつの根拠になりますが、別居の背景に不倫やDVなどがあった場合、その行為をした側(有責配偶者)から離婚を求めて裁判を起こしても、離婚はなかなか認められません。
自ら別居の原因となることをして夫婦関係を壊しておきながら、離婚を認めてもらおうというのはあまりに身勝手だからです。
ただし不倫などが原因だったとしても、別居期間がかなりの期間に及んでいて、未成年の子どもがいなかったりする場合には、有責配偶者からの離婚請求でも認められる可能性があります。
2、離婚が認められる別居期間とは?
ここまで別居をしていれば、裁判で離婚が認められる可能性があるとお伝えしました。では具体的にどの程度の期間別居していれば、離婚は認められやすくなるのでしょうか?
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(1)別居期間が長いほど離婚は認められやすい
別居期間が長ければ長いほど関係が修復できなかった期間も積み上がるため、離婚が認められる可能性が高まります。
たとえば30年以上別居し、ほとんど連絡もとっていない場合、婚姻関係は破綻しているといえるでしょう。
他方で別居期間が1か月程度の場合、裁判所は関係修復の可能性が残されていると判断し、離婚を認めない可能性は高いといえます。 -
(2)別居の長さだけでなく夫婦関係の破綻が重要
離婚が認められるかどうかは、必ずしも別居の長さだけで決まるわけではありません。結婚生活を続けるのが難しい事由があるかどうかは、別居期間だけでなく、別居に至った理由その他複数の事情を組み合わせて判断されることが一般的です。
別居期間が長くても認められないことはありますし、別居期間が短くても他の事情と相まって離婚が認められることはあります。
大事なのは、夫婦関係が破綻し修復の見込みがないかどうか、です。
別居期間が短くても、明らかに関係の修復が不可能な場合や離婚の必要性がある場合には離婚は認められます。
たとえば相手からのDVやモラハラがあった場合です。
DVやモラハラの被害者は恐怖心から家を出ることができないことも多く、別居期間の長さだけで判断するのは不合理です。身体への暴力によりひどい怪我をしたような事情があれば、別居期間がほとんどなくても、夫婦関係が破綻しているとして離婚が認められる可能性は高いでしょう
また同居期間よりも別居期間の方が長い場合や、夫または妻の離婚の決意が固い場合などにも、別居期間がそれほど長くなくても、離婚できる可能性があります。
なお離婚が認められやすい別居期間の目安として、4~5年以上がよくあげられます。
3、別居する際の注意点
離婚を決意した場合、すぐにでも家を出ていきたいと思うかもしれませんが、無計画に別居を始めると、不利益を被る可能性がありますので、慎重に準備をする必要があります。
別居をする際、相手に何も告げず行き先も教えずに突然家を出ていくと「悪意の遺棄」とみなされる可能性があります。
夫婦には一緒に住み、助け合って生活するという「同居・扶助義務」があります(民法第752条)。これに違反すると、悪意の遺棄と評価されることがあります。
たとえば家を勝手に出て不倫相手と同居し始める、専業主婦の妻に生活費を渡さないといったケースです。
相手の同意なく突然別居を始めることも、同居義務に違反していると判断されるおそれがあります。この点をとらえて、後の離婚訴訟などで、相手から慰謝料を請求されたり、有責配偶者であると主張されたりすることもあります。また、警察に捜索願を出されるなど、事実上トラブルに発展する可能性もあります。別居を始めるにあたっては、その後のトラブルを避けるためにも、できるだけ相手の同意を得ておいた方が望ましいと言えます。
ただしDVを受けていたり子どもが虐待されていたりしている場合、相手に気づかれないように別居をしても自分の責任ではないため、悪意の遺棄には該当しません。
4、別居中の婚姻費用を請求しよう
専業主婦やパートの方など、同居中は主に相手の収入によって生活していた方が別居した場合、別居先の家賃や食費など、生活費に困ることが珍しくありません。その場合は相手に婚姻費用を請求しましょう。
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(1)婚姻費用とは
婚姻費用とは、家賃や食費など夫婦で生活していくうえで必要なお金のことです。
夫婦には婚姻費用を分担し、それぞれが同じレベルの生活を送れるようにする義務があります(民法第760条)。
具体的には、専業主婦・主夫や、パートなどで相手より収入が低い場合には、収入が高い方に生活費を渡すよう求めることができます。 -
(2)別居中も婚姻費用は請求できる
婚姻費用の分担義務は同居・別居に関係なく負います。そのため別居期間中も、離婚するまでの間は婚姻費用が発生します。
ただし婚姻費用は請求しなければ受け取れず、過去分をさかのぼって請求することもできません。
そのため別居を考えている場合には、事前に夫婦で話し合って金額を定めておくか、別居開始後すみやかに相手に請求しましょう。
相手が支払いに応じない場合には家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停が不成立の場合は、審判により裁判所が支払義務の有無や金額を決定します。
ただし自らの不倫が原因で別居に至った場合など、自分に責任がある場合には請求しても認められない可能性があるので注意が必要です。
5、まとめ
別居期間が短いと離婚はできないと思われがちですが、短くても離婚できる可能性はあります。そのためには、いかに説得的に別居に至る事情などを整理して主張するかが重要になります。早期に離婚したい場合は、どうぞベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスにご相談ください。
弁護士は離婚の話し合いや調停、裁判の代理人となることもできますし、慰謝料の相場をお伝えしたり、財産分与で不利とならないようアドバイスをしたりすることも可能です。弁護士に依頼することで、離婚の決意の固さが相手に伝わり、離婚に向けて話し合いが進むこともあります。また、離婚後の面会交流や養育費の不払いなどの問題も、対応いたします。ひとりで悩まず、まずはご連絡ください。
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