夫がストレス! 帰宅すると体調不良になる夫源病を理由に離婚可能か
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愛知県が公表する「令和5(2023)年度刊愛知県統計年鑑」によると、令和4年に名古屋家庭裁判所で行われた離婚調停は1248件でした。離婚を検討する方の動機は本当にさまざまです。
そのようななか、夫がストレス源となっており、夫がそばにいると体調不良を起こすという症状に悩み、離婚を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。芸能人による発言から広く知られるようになった「夫源病」と呼ばれる状態です。病という名がついていますが、これは正式な病名ではありません。
本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が、夫がストレス源となって夫源病と呼ばれる状態になったことを理由にした離婚が可能かどうかから、離婚を進める際の対処法などを解説します。
1、夫源病とは?
夫源病とは、前述の通り医学的な病名ではなく、循環器の医師石蔵文信氏が命名したものです。「夫」の言動が「源」となり妻の体や心が「病」気になったかのような不調をきたしている症状を示す、いわば概念です。この逆で、妻の言動が原因となり夫が不調になる症状を「妻源病」と呼ばれているようです。
夫源病になりやすいのは、夫の上から目線の言動に不満を感じているのに耐えてきた妻だといわれています。特に更年期を迎えた女性が多いとされていますが、同様の症状で苦しむ若い女性も少なくないようです。
夫に対するストレスがあり、次のような体調不良があるとき、夫源病ではないかといわれています。
- 動悸(どうき)
- 胃腸の不調
- うつ病の発症
- 頭痛
- めまい
- 突発性難聴や頭痛
- 原因不明の高血圧
夫源病は正式な病名ではなく概念であるため、この症状があると夫源病だといえるといった正確な定義はありません。夫が帰宅すると気分が悪くなる、夫と外出する予定があると体調が悪くなるなどの、夫と関わることで体調が悪化する場合や、精神的に不安定になる場合は夫源病の可能性があるでしょう。
なお、いわゆる「亭主関白なタイプ」が、夫源病の原因になりやすいともいわれています。20、30代の妻が夫源病を発症するケースでは、妻の出世や起業、活躍などへの妬み、価値観や性格の違いなどが原因になるようです。
2、夫源病を理由に離婚できるの?
原則として、日本では話し合いを通じて離婚に至る場合は、その理由を問われることはありません。したがって、夫源病で離婚したいと夫に申し入れて、夫が認めれば円満に離婚が成立します。
ただし、妻が夫源病と呼ばれるような症状があらわれてしまう家庭であるならば、夫の多くが、妻から離婚を申し入れられるという事実を受け入れることができないケースがほとんどでしょう。年代などによっては離婚自体に拒否感を強く持っており、世間体を気にすることから、かたくなに、離婚に応じない可能性が非常に高いと考えられます。
その場合は、法的手続きによって離婚を主張することになります。民法では、片方が離婚に応じない場合に、もう片方からの申し立てで離婚が認められる「法定離婚事由」が定められています。
具体的には、以下のようなケースが認められれば、たとえ相手が離婚を拒んだとしても、裁判を通じて離婚することができるでしょう。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
夫源病が法定離婚事由に当てはまるかどうかといえば、非常に判断が難しいところです。状況によっては、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するケースもあるかもしれません。
夫との価値観や性格に大きな隔たりがあり、それが原因で多大なストレスを受けて、体調不良等が生じたという事実関係が証明でき、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という離婚事由として認められれば、夫が離婚に応じなくても離婚することが認められる可能性があります。
3、相手が離婚に応じてくれない場合の対処方法
夫が離婚の話し合いに応じてくれない、離婚を了承しない場合は離婚に向けてステップを進める必要があります。まずは調停を申し立てることになります。調停でも合意できなければ、裁判に移行します。ここでは、各ステップについて解説します。
●別居
夫源病の症状は人によりさまざまです。場合によっては、距離を置くことでお互いに冷静になり、互いの大切さに気付くケースもあります。夫の存在によって体調不良を引き起こしていることが明らかであるならば、まずは、体調を整えるためにも、夫から物理的な距離を取る必要があります。
本人に、真正面から告げることが難しければ、夫が外出中に書き置きを残して家を出てもよいでしょう。ただし、衝動的に家を出るのではなく、計画を立てて別居するようにしましょう。取り急ぎの住む場所と、当面の生活費を用意しておくことを強くおすすめします。
●調停
別居しても関係性が改善せず、夫が離婚に応じない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停とは、調停員が双方の間に入り、言い分を聞いた上で和解案を提示するものです。原則として、話し合いを行う際、夫と顔を合わせる必要はありません。
ただし、夫の主張は調停員を通じて間接的に耳にすることになります。また、調停員によっては夫側の主張に同情的になる可能性もあるでしょう。すべて個人で対応しようとすると、多少のストレスは覚悟しておく必要があります。そのような事態を軽減するためには、弁護士に交渉を一任することもひとつの手段です。
●裁判
調停で離婚が成立しなければ訴訟に移行します。訴訟になった場合は、「法的に離婚が認められる事由が存在するかどうか」が争点になります。夫源病を原因として離婚を主張するのであれば、その証拠を集め、あなたの主張が事実であることを立証する必要があるでしょう。
裁判になった場合は個人で対応することは非常に困難なので、弁護士に依頼することを強くおすすめします。
4、夫源病で離婚する際に請求可能なお金
ここでは夫源病を理由に離婚する際、請求できるお金を解説します。
●慰謝料
離婚の際に受け取るお金の代表格といえば「慰謝料」というイメージがありますが、夫源病の場合は慰謝料が請求できない可能性があります。一般的には、夫の不貞行為や暴力など、被害が明確なケースであれば、慰謝料の請求が可能です。
夫源病の原因が、夫のモラハラであることが明確で、その証拠もある場合は慰謝料を請求できる可能性があります。
●財産分与
妻が専業主婦の場合であっても、財産分与の請求が可能です。結婚してから別居するまでに築いた夫婦の預貯金や、不動産をはじめとした共有財産であれば、原則2分の1受け取ることができます。すでに退職金を受け取っている、もしくは間もなく受け取るのであれば、婚姻年数に応じた退職金も分割可能です。配偶者の資産によっては、非常に高額な財産を受け取れることもあるでしょう。
●養育費
成人していない子どもがいて、妻が子どもを引き取るのであれば夫の収入や子どもの人数、年齢に応じて養育費を請求できます。養育費の支払いは、親が課せられた義務なので免れることはできません。
●年金分割
夫がすでに年金を受給している、もしくは年金保険料を支払い受給予定がある場合は「年金分割」の手続きを行うことで、年金を分割することができます。離婚の際に自動的に分割されるのではなく、自分で手続きを行わなければならないので注意が必要です。
●婚姻費用
夫と離婚成立までの間、別居している場合は、婚姻費用を請求できます。婚姻費用とは妻もしくは夫が生活するために必要な費用です。別居開始から離婚成立するまで受け取ることができますので、必ず請求しましょう。
5、離婚の相談を弁護士に相談するメリット
夫がそばにいるときに強いストレスを受け体調不良になってしまうことからを理由に離婚を考えている方は、なるべく早い段階で弁護士に相談することを強くおすすめします。なぜならば、妻のストレス源となってしまう夫の多くはモラハラに近い態度で妻に接する傾向があるため、離婚の話し合いの際に大きなストレスを受ける可能性が高いためです。離婚の話し合いのせいで、体調が悪化する危険性もあります。
もし離婚が成立する場合は、結婚生活が長い、子どもが小さい、などのケースではまとまったお金を夫に請求できる可能性があります。しかし、離婚の交渉と合わせて金銭の請求交渉を行う必要があることから、交渉そのものをあきらめてしまう方は少なくないようです。
そのような場合は、まずは弁護士に相談してください。弁護士に相談するメリットは「夫から解放される」という精神的メリットだけでなく、「財産分与や養育費請求などで有利な立場に立てる」という金銭的メリットもあるのです。
弁護士に交渉を依頼することで、正当な権利をしっかりと主張し、新しい人生を踏み出すためのお金を手にできる可能性を高めることができます。
あなた自身はまず証拠集めに専念し、交渉は弁護士に一任して、新しい人生をやり直す準備に専念しましょう。
6、まとめ
夫がストレス源となり、夫源病と呼ばれる症状が出ているのであれば、離婚を検討することは当然のことです。しかし、夫が認めないケースが非常に多く、話し合いすらままならない状態になってしまえばさらに症状が悪化することが考えられます。一刻も早く夫から解放されるためにも、離婚を検討した段階で弁護士に相談して、対策を考えてもらいましょう。
ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスには離婚問題に対応した実績が豊富な弁護士が、状況に適したアドバイスを行います。ひとりで抱え込まず、まずはご連絡ください。
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