モラハラを理由に離婚するために行うべきことは? 慰謝料の請求はできる?
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モラハラとは「モラルハラスメント」の略称で、精神的な暴力を指します。名古屋市では男女共同参画推進センター「イーブルなごや」でモラハラを含むDV相談窓口を設置しています。また、男性相談員による「男性相談」も毎週水曜と日曜に開設されています。
このように、モラハラは妻が受けている場合もあれば、夫が受けている場合もあります。モラハラは個人の人格を否定するものであり、モラハラによって、自分でも気付かないうちに心に深い傷を負っているかもしれません。
あなたが第三者に助けを求めることで、つらい現状から脱する一歩になるかもしれません。ここでは、モラハラを理由とする、離婚や慰謝料の請求について名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、モラハラとは何か
モラハラ(モラルハラスメント)とは、一般に、肉体的な暴力ではない、精神的な嫌がらせのことを指します。
本来、夫婦が対等であり、それぞれの人格や価値観を尊重しあえるならば、夫婦で言い争うことそのものに問題はありません。しかしながら、努力のしようのないこと等で人格を否定したり、どちらかが一方的に精神的な抑圧を受け続けたりする関係性は決して健全なものではないでしょう。
夫婦間であっても、モラハラによって精神的に傷つけられることは人権侵害にあたり得ます。
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(1)モラハラの具体例
では、具体的にどのような行為がモラハラとされているのでしょうか。
- 暴言による人格否定 「バカだ」「ダメ人間」とののしるほか、ささいなことで「どうしてそんなこともできないのか?」「稼ぎもないくせに」などと相手をおとしめる言動をする。また、他人の前で公然と批判することで、相手の自尊心を傷つける。
- 威嚇的にふるまう わざと大きな音を立てて物を置いたり、乱暴にドアを閉めたりして、相手に恐怖心を与える。
- 不快感をあらわにするが、理由を言わない 不機嫌であることを隠さずに行動するが、理由を尋ねても「そんなこともわからないのか?」などと発言し、理由を言わない。
- 経済的な自由を極端に制限する 夫婦間で自由になるお金に差がありすぎる。お金を渡さないことで行動の自由を制限する。
- 相手の趣味や考えを受け入れない 相手の好きなものをおとしめたり、所持品を勝手に捨てたりする。相手の言葉や意見に対して聞く耳を持たない。
- 人間関係を制限する 親族や友人関係に対し「あいつとは付き合うな」などと口を出す。そのためにメールや通話履歴をチェックするなどの監視行為をする。人間関係を狭めることで、相談先や逃げ道を奪おうとする。
- 相手が弱っているときに冷淡な態度を取る たとえば病気のときに「日頃の行いが悪いからだ」「貧弱」などと罵倒し、協力したり、やさしい言葉をかけたりすることがない。
これらの言動は、ほんの一例にすぎませんが、このような言動に心当たりがあれば、モラハラを受けている可能性があります。 -
(2)モラハラ加害者の特徴
モラハラをする人の年齢や職業、年収に一定の傾向はありません。もっとも、性格的には、プライドが高く、相手への共感力が低い傾向があるといわれています。加害者本人が、かつて親からモラハラ被害に遭っていたケースも少なくありません。
また、家庭外では人当たりがよいことも珍しくないため、知り合いに相談しにくいケースもあるようです。知人や友人、家族だけではなく、行政が開設している配偶者相談支援センター等の相談窓口で話してみることもおすすめします。 -
(3)モラハラを受ける側の影響は?
モラハラは肉体に受ける暴力とは違い、あざも傷もできませんが、心身に影響が出る可能性があります。
相手の顔色をうかがい、極度の緊張状態に置かれていると、イライラ感、倦怠(けんたい)感、不眠、食欲不振、動悸(どうき)、多汗などがあらわれます。次第に「自分は価値のない人間だ」「自分がすべて悪い」「社会に適合できない人間だ」などと思いはじめ、「何をしても楽しくない」「何に対しても興味がわかない」などの抑うつ状態に陥ることもあります。
これらの症状が現れているならば、心療内科などで適切な治療を受ける必要があるかもしれません。モラハラから脱しても、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの後遺症をもたらす可能性もあります。医療機関を受診し、病名がつく状態であれば、診断書を必ずもらっておきましょう。
2、モラハラを理由にした離婚手続きについて
モラハラは、加害者の性格や成育歴、価値観に深く根差すことが多く、一朝一夕で解決できないケースが多いものです。
話し合いをしても加害者本人に改善の意思がなければ、自分自身の心身の健康を守るために離婚という選択肢も検討すべきでしょう。
しかし離婚するにあたり、財産分与、親権、養育費などについて話し合いをする必要があっても、モラハラ加害者は多くの場合、相手の主張を認めないため、話し合いでの協議離婚や、家庭裁判所での調停離婚では解決しない可能性も考えておく必要があるでしょう。
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(1)モラハラを理由に離婚はできる?
相手が離婚を拒み、調停も不調に終わった場合は、裁判による離婚を目指すこととなります。本来、離婚するためには双方の合意が必要ですが、相手が離婚に承諾していなかったとしても裁判において離婚が認められる理由を「法定離婚事由」と呼びます。
(裁判上の離婚)
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
モラハラが繰り返され、修復する余地がないほど夫婦関係が破綻してしまった場合は、上記の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するでしょう。
正当な理由なく生活費を渡さないといった経済的な圧力を受けているような場合も、同様に離婚事由に該当するものと考えられます。
もし裁判で争う場合、離婚を申し立てる側が、相手側にこれらの離婚事由に該当する状況があったことを証明する必要があります。モラハラの証拠集めについては、後述します。 -
(2)モラハラに対する慰謝料は請求できる?
慰謝料とは、精神的苦痛を受けたことに対する損害賠償金です。
モラハラを原因とする離婚であれば、慰謝料の請求が認められる可能性があります。慰謝料の相場は、数十万円程度から、約300万円近くまで幅があり、相手の支払い能力やモラハラの態様によって大きく異なります。いずれにしても、慰謝料の請求が認められるためには、できるだけ第三者が見てもモラハラがあったと理解できるような証拠が必要です。
3、モラハラの証拠集め
モラハラの証拠は、「いつ」「どこで」「誰が」「どのように」行ったのか、なるべく客観的にわかる形で残しましょう。また、一過性ではなく、継続的にモラハラが行われてきたことがわかるように記録しておくことを強くおすすめします。
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(1)音声や動画で記録する
モラハラの様子をボイスレコーダーや携帯電話の音声録音機能で保存しましょう。多くの場合、自動的に保存した日時が残るため、簡便で記録しやすい手段です。また、クラウドサービスなどでネット上にデータを保存すれば、万が一端末を破棄されても記録が消えることはありません。
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(2)手書きで記録する
日記などにモラハラを受けた日時、場所、会話などをできるだけ細かく記録しましょう。自分のアカウントでのSNS投稿も証拠とみなされる可能性があります。
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(3)行政などへの相談記録をもらう
行政が開設している相談窓口へ相談してみましょう。裁判になれば、これらの相談記録、警察への相談記録なども証拠と認められるでしょう。
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(4)診断書をもらう
精神科や心療内科を受診し、モラハラの経緯を話しましょう。心身の症状がある場合は診断書をもらいましょう。特に、医療機関での診断書も、一つの証拠になり得ます。
4、弁護士に依頼するメリット
モラハラは、加害者からの一方的な支配関係になっていることが多く、対等に話し合いをすること自体が非常に難しいものです。そのため、第三者である弁護士に依頼することで、冷静な話し合いができる可能性が高まるかもしれません。また、離婚問題やモラハラの知識を持つ弁護士であれば、あなたの立場、手元にある証拠、手に入る証拠、相手が準備してくる証拠などを踏まえて解決への見通しを立てることができるでしょう。
これから離婚をしたい、離婚を考えたいと思った段階で、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
モラハラに悩んでいる方は、弁護士による客観的なアドバイスを受けることができれば、次に取るべき対策が明確になり、将来への不安が軽減できるでしょう。しかし、モラハラによってあまりにも精神的に追い込まれた場合、判断力が低下し、相談するというアクションを取ること自体が難しくなることもあります。
このような夫婦関係はおかしいのではないか、と感じたら、早い段階でベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスへご相談ください。あなたが安心して生活できる環境を取り戻すために尽力します。
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