借金があり生活保護を受給したい方へ! 生活保護の申請前に知っておきたいこと
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失業後に転職しようとしてもうまくいかなければ、生活はどんどん困窮していきます。そのようなとき思い浮かぶのが生活保護です。しかし、差別を受けるなどさまざまな悪評を見聞きするせいか、最終手段だと考えている方も多いでしょう。なお、愛知県名古屋市で生活保護を受けている世帯は、令和2年9月時点で、61584世帯あることがわかっています。
生活保護は、生活保護法第1条で規定されているとおり、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障する」とする憲法第25条の理念に基づいて施行されている制度です。受給するためにはもちろん申請は必要ですが、恥ずべきことではありません。
今回は、借金があって生活保護を受けたい方向けに、生活保護の申請をする前に知っておきたいことについて、名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、生活保護費とは
生活保護は、生活に困窮する方に対し、国や地方自治体がその困窮程度に応じて必要な保護を行う制度です。国内のどこに居住していても申請できます。
以下では、この制度の目的や受給できる条件について解説します。
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(1)生活保護制度の目的
まず知っておかなくてはならないのが、なぜ生活保護制度があるのかということです。前述のとおり、日本国憲法第25条では、国民が健康で文化的な最低限度の生活をする権利を保障しています。どのような方でも、今は問題なくても、何が起こるかはだれも予測できません。突然病にかかったり、災害に襲われたりして働けなくなり、明日の食事を確保することさえ難しい状態に陥ることもあり得ます。
そこで、生活に困窮している方を保護し、最低限度の生活をサポートするとともに自立を促すために生活保護制度があります。
なお、生活保護で支給される金額は、最低労働賃金と連動しています。つまり、労働者の賃金が低くなればなるほど生活保護費が削られ、また、生活保護費が減れば労働者の賃金も低くなる傾向があるというわけです。平成30年10月から段階的に生活保護基準が見直されることから、一部でニュースになりました。 -
(2)生活保護を受給できる条件
生活保護は生活が苦しいからという理由だけで認められるわけではありません。生活保護を受けるためには、以下の条件をクリアしている必要があります。
●利用できる資産の活用
生活が苦しくなっても、資産があれば生活保護が受給できない可能性があります。現金や預金はもちろんのこと、マイカー、マイホームなどの不動産、有価証券など、自分名義の資産がないか調べる必要があります。原則的には利用できる資産を活用して生活の糧にする必要があります。ただし、マイカーなど、例外的に保有を認められる場合もありますので、一度相談してみるとよいでしょう。
●能力を活用すること
健康で働ける状態であるにもかかわらず働きたくないなどの理由では、生活保護は認められません。生活保護は最低限の生活を保障するだけでなく、自立の促進も目的とする制度であるためです。
働いて収入があれば、生活を再建することができます。健康上の問題があって働けない場合であれば、申請が認められる可能性は高いでしょう。
●親族からの援助を活用すること
親族から援助を受けられる人は、援助を活用するように促されます。たとえば、親族が経済的な余裕があり資産も多いような場合、福祉事務所の担当者はその援助を仰ぐことをすすめてくるはずです。
また、生活保護申請にあたり、扶養義務者による扶養の可否を調査することがあり、親族からの援助が受けられないという事実がなければ申請が通らないケースもあるでしょう。具体的には、職員が手紙や電話を用いて、「生活保護の申請があったが、援助できないか?」など、申請者の親族へ問い合わせて確認しています。問い合わせを受けた親族が全員、援助ができないと回答すれば、生活保護はより認められやすくなります。
なお、ここでいう親族とは、親や子等の直系血族と、兄弟姉妹を指します。これらの親族には民法上、相互に扶養する義務がありますので、連絡が行われているようです。たとえば、数十年前に離婚して以来、一度も会っていない実子のもとにも問い合わせの連絡が届く可能性があることは、知っておいたほうがよいかもしれません。
●あらゆるものを活用すること
生活保護制度以外に活用できる制度を受ければ生活できるとみなされるとき、生活保護を受けることができない可能性があります。つまり、生活保護以外に活用できる公的制度がない場合には、生活保護は認められやすくなります。
たとえば、十分な年金を受け取れる人が生活保護を申請しても認められません。また、福祉手当を受給できる資格がある場合、そちらを利用することをすすめられます。 -
(3)借金の有無は関係ない
借金の有無が生活保護の可否に影響を与えることはないため、まずは安心してください。借金の有無は、生活保護受給の条件に入っていません。借金があることをしっかり伝えたうえで、生活保護の申請を行ったとしても、条件を満たせば受給権利者となり得ます。ただし、後述のように、生活保護の費用で借金の返済を行うことはできませんので、注意が必要です。
2、生活保護を申請する手続きの流れ
生活保護を受けたいとき、申請を行う手続き方法を知っておきましょう。
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(1)最寄りの福祉事務所へ相談に行く
あなたが名古屋市内にお住まいであれば、住んでいる区にある「区役所保健福祉センター」へ足を運んでください。民生子ども課か、支所区民福祉課で相談を受け付けています。また、地域の民生委員にも相談することができます。
相談の時点では、生活保護の説明を受けたり、需給を受けるための条件などを教えてもらったりすることができます。もし、入院中などの理由でセンターへ行けないときは、親族などが代わりに足を運んで相談することも可能です。
なお、相談の時点で住民票や免許証などの身分証や銀行の通帳、障害者手帳や診断書などがあればそれらを持っていくとスムーズに話ができるはずです。 -
(2)生活保護の受給を申請する
相談を行ったのち、申請を行うときは、現在の収入および資産などについて申請する必要があります。必要書類などは福祉事務所の担当者に確認しておきましょう。
また、申請後、前項の「(2)生活保護を受給できる条件」をはじめとした、さまざまな条件を満たしているかが調査されます。調査が完了したら、生活保護が受給できるかどうかの通知が自宅へ届きます。 -
(3)生活保護の支給スタート
生活保護の受給が許可されると、毎月決まった日に生活保護費が支給されます。支給される額は、自治体の基準による最低限の生活費から収入を差し引いて算出されます。住まいが賃貸であれば、家賃は代わりに支払われることになるケースもあるでしょう。
また、あなた自身の生活状況を理解するとともに自立を促すため、ケースワーカーが定期的に訪問することがあります。そのとき、悩みがあれば相談を聞いてもらうこともできるでしょう。
3、生活保護費を受給中にしてはいけないこと
生活保護の受給が決まれば、お金を定期的に受け取ることができます。しかし、お金の使い道はある程度制限されているのです。生活保護受給中は、次のことをしないよう、注意が必要です。
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(1)生活保護費で借金を返済してはいけない
そもそも生活保護は生活に困った人を援助することを目的とするものであり、借金の返済を援助するためのものではりません。
しかも生活保護費は国民の納めた税金を原資としています。したがって、個人の借金返済に使われるのは許されません。たとえ住宅ローンを返済するためであっても、社会福祉事務所から指導され、生活保護費の支給をストップされるおそれもあります。 -
(2)新たな借り入れはしない
生活保護は最低限の生活を送れるようにして、生活を再建するためのものです。生活保護を受給しているときに新たに借金をしてしまうと、生活を再建するどころかさらに生活が苦しくなってしまうことは明白です。当然のことですが、新たな借金は絶対にしないようにしましょう。
4、生活保護を受給前に借金を整理したい場合は、債務整理をする
前述のとおり、借金があっても生活保護費を使った借金返済はできません。つまり、生活保護を受給する前に借金の整理を検討する必要があります。借金の整理方法には、任意整理や自己破産などの債務整理を、状況に応じて選択する必要があります。
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(1)月々の返済額を減額したいのなら任意整理
任意整理は、将来支払う利息のカットや返済期間の延長などを貸金業者と交渉して返済していく手続です。将来支払う利息をカットすることによって借金の返済額を減らしたり、返済期間を延長することによって月々の負担を少なくしたりすることに向いていますが、安定収入が必要です。
今はまだ借金を返す余力が多少残っているが、生活が苦しくなってきている人は、まずは任意整理による借金返済を目指すことをおすすめします。それでも、労働自体が難しい、もしくは低賃金状態が続いている、生活できない場合、生活保護を検討するとよいでしょう。 -
(2)借金の支払い義務を免除してもらいたいのなら自己破産
任意整理が難しいほどに借金額が膨れ上がってしまい、困窮した生活から脱却したい人は、自己破産を検討する必要があります。
自己破産については生活保護の申請が通った後でも行うことができます。したがって、すぐにでも生活保護を受給したい人にも向いています。また、生活保護申請の際に借金の存在を伝えると、ケースワーカーから自己破産をすすめられることも多いようです。
裁判所で自己破産を申し立て、免責が許可されれば、借金の支払い義務がなくなるため、改めて自立を目指した生活を再建できます。ただし、自己破産においては、メリットだけではなく、財産の処分やさまざまな制限を受けるデメリットがあるので注意してください。
5、まとめ
借金があっても生活保護を受給すること自体はできます。しかし、生活保護費で借金を返済することはできないため、結局のところ借金はそのまま残ってしまうだけでなく、利息が膨らむことになりかねません。
生活保護受給前に任意整理をすることや、申請後であっても自己破産をすることで借金問題を解決へ導くことができるでしょう。どの方法が適しているのかについては、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスでもアドバイスを行います。借金問題を解決して生活を再建したいと考えているのであれば、まずは相談してください。
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