能力不足を理由に突然解雇を言い渡された! 解雇理由に違法性はない?
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ある日突然会社の上司に呼ばれ解雇を伝えられ、「解雇を受け入れなければならないのか」「どう対処したらよいか」悩む方も少なくありません。
実際に愛知労働局における平成30年度の統計によると、労働基準監督署などに寄せられる民事上の個別労働紛争でも「解雇」は3番目に多い相談内容であることが分かります。
解雇の理由はさまざまありますが、「能力不足」だった場合、解雇理由に違法性はないのでしょうか。本コラムでは、「能力不足」を理由として解雇を言い渡された場合、どのように対応すべきかについてベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説していきます。
1、能力不足を理由にした解雇は認められる?
解雇は、会社側の一方的な意思表示で、労働者との雇用関係を終了させるものです。
そもそも能力不足を理由とした解雇は、認められるのでしょうか。
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(1)解雇が認められる場合とは?
解雇には整理解雇・懲戒解雇・普通解雇の3種類があります。能力不足であることを理由とした解雇は、基本的には普通解雇に当たると考えられます。
しかし解雇は、「客観的に合理的な理由」があり社会通念上の「相当性」があるという要件を満たす場合にのみ有効と認められます。
そのため、就業規則に能力不足の場合には社員を解雇する旨が規定されていたとしても、これらすべての要件を満たしていなければ解雇は有効になりません。 -
(2)能力不足を理由とした解雇の有効性
能力不足を理由とした解雇では、「社員の業務成績が悪い」という点だけでは解雇は有効と言えません。たとえば、労働者の業務成績の評価が社員全体の平均以下であったとしても、それだけをもって解雇することは認めらないのです。
能力不足を理由として解雇する場合は、労働者側に会社の経営に支障がでるぐらいの重大な能力不足があり、会社側が配転や教育訓練や指導などを行っても改善の見込みがないような場合において、有効とみなされる可能性があります。
つまり、会社側が何ら解決策を講じていないにもかかわらず、能力不足を理由に解雇することはできないのです。
2、解雇を告げられたらやるべきこと
能力不足を理由として解雇を告げられた場合には、解雇の事実と理由などを明確に書面に残しておくことが重要です。
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(1)解雇通知書の交付を請求
解雇を労働者に伝える方法については、法律上の規定はないので書面でなく口頭で言い渡すことも可能です。
しかし、口頭で伝えられた場合には、労働者側と会社側で「解雇と言った」「解雇とは言っていない」と主張が食い違っても証明することができません。そのため会社から解雇と言われて退職したのに、従業員の自己都合による退職だったなどと主張されてしまうこともあり得ます。
自己都合退職となってしまうと、「客観的に合理的な理由」があり社会通念上の「相当性」がなければ解雇できないとする解雇に関する規制が適用されなくなってしまい、労働者側は圧倒的に不利な立場に追い込まれてしまいます。
したがって解雇を告げられた場合は、会社に「解雇通知書」の交付を請求し、書面で解雇の事実を残しておくことが大切です。また、「解雇通知書」から解雇日なども明らかになるので、解雇予告手当の請求根拠も明らかにすることができます。 -
(2)解雇理由証明書の交付を請求
解雇通知書に解雇理由の記載がない場合には、会社に解雇理由証明書の交付を請求します。
解雇理由は、解雇の有効性を判断する重要な要素になるため、会社側にできるだけ具体的に記載してもらいましょう。
なお解雇理由証明書は、労働者から請求があった場合には、会社は交付しなければならないことが労働基準法で規定されています。つまり労働者が請求しなければ会社に交付義務はありませんが、労働者が請求すれば会社は必ず交付しなければならない書面ということです。
そのため解雇理由が書面で明確にされていない場合には、積極的に会社に解雇理由証明書の交付を請求するとよいでしょう。 -
(3)就業規則などの入手
会社の就業規則に、能力不足や勤務成績不良の場合に解雇することがある旨の規定を設けていることがあります。
就業規則の規定に基づき能力不足として解雇されたときには、就業規則を確認しましょう。
あわせて、雇用契約書などで契約内容を確認しておくことも大切です。
これらは、解雇の有効性を争うときに、重要な書類になる可能性があります。会社のパソコンからしか閲覧できないような場合は、ダウンロードや印刷するなどして保管しておくことをおすすめします。
3、解雇を言い渡されたときの対処法とは?
解雇を言い渡されたときに、「解雇を受け入れる場合」と「解雇の有効性を争う場合」では対応方法が異なります。
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(1)解雇を受け入れる場合
解雇を受け入れる場合には、解雇手当や退職金などを確実に会社に請求する必要があります。
労働者を解雇する場合には、会社は原則として退職日より30日前に、解雇予告を行う必要があります。
もし解雇予告が退職日より30日未満の時点でなされたときには、会社は労働者に対して30日に足りない日数分の平均賃金を、解雇手当として支払わなければなりません。
また、退職金規定がある会社や退職金を支給する労使慣行がある会社の場合は、退職金を請求できる可能性があります。その他、サービス残業などで未払いになっている賃金があれば、未払い分を算出して会社に請求します。
会社へ請求ができるのか自身では判断ができないといった場合や、請求しても会社側が応じない場合は、弁護士など専門家に相談するとよいでしょう。 -
(2)解雇の有効性を争う場合
不当解雇として解雇の有効性を争う場合には、解雇の無効を主張して未払い賃金を受け取る方法と、不法行為による損害賠償を請求する方法があります。
不当解雇が認められた場合には、解雇されなければ働いて得られたであろう賃金を請求できます。そして労働者が復職を望むのであれば、復職することも可能です。
また不当解雇が民法上の不法行為に該当する場合には、損害賠償を請求することができます。
しかし、不当解雇の有効性や損害賠償の請求を会社側に行う場合には、証拠の収集や損害の金額の算定など、越えなければいけない高いハードルがあります。また本人が直接会社に交渉しても、納得できる結果を得られる可能性は少ないと言えます。
そのため解雇の有効性を争う場合には、弁護士に相談することが得策と言えるでしょう。
4、不当解雇問題に対して弁護士ができることとは?
能力不足などを理由にした不当解雇の問題に対して、弁護士に相談、依頼することをおすすめします。
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(1)最終的な解決まで対応を依頼できる
不当解雇問題については、労働基準監督署などの専門機関に相談することも可能です。
しかし労働基準監督署などは、原則として会社側への是正勧告が主な対応です。その結果、会社側が解雇を撤回する可能性もありますが、個別のサポートを望むことは難しいでしょう。
一方、弁護士であれば会社への申し入れから、裁判に至ったときの対応など最終的な解決まで対応が可能です。状況に応じた助言を受けながら、交渉を進めることができます。
また、会社との交渉がまとまらなかった場合には、労働審判や裁判で解決を図ることになります。弁護士は、労働審判や裁判でも法的根拠に基づき、適切な主張ができるので、納得できる結論が得られる可能性が期待できます。 -
(2)証拠の収集についてアドバイスを受けられる
不当解雇を証明するためには、有効な証拠を集めることができるかが非常に重要です。
弁護士は、裁判で不当解雇が認められるためにはどのような証拠が有益かを熟知しているので、証拠の収集について適切なアドバイスをすることができます。 -
(3)会社との交渉を一任できる
解雇を受け入れる場合でも不当解雇を争う場合では、まずは会社と交渉する必要があります。
しかし解雇を言い渡した会社に対して、ご自身だけで直接交渉するのは精神的な負担が非常に大きなものとなるでしょう。弁護士であれば、代理人として会社と交渉することが可能です。第三者として会社側と冷静に交渉を進めることができるので、言い分や要望をしっかりと伝えることができるでしょう。
また、労働者が個人として申し入れをしても、会社側が交渉に応じてくれないというケースも残念ながらあり得ます。しかし、弁護士が代理人となることで、ことを荒らげたくないと考える会社側が交渉に応じるというケースも少なくありません。結果として、早期に交渉が進むことを期待できます。
5、まとめ
会社側から突然、「能力不足」を理由として解雇を言い渡されたら、驚き、ショックを受けることでしょう。しかし泣き寝入りせず、解雇の正当性を確認することが大切です。
まずは会社に解雇証明書や解雇理由証明書などを請求して、「解雇を受け入れるのか」「不当解雇として争うのか」を判断し、対応を検討する必要があります。
ベリーベスト法律事務所では、不当解雇問題の解決に積極的に取り組んでいます。
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