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不当解雇を証明する証拠とは? 証拠を収集できないときの対処法も解説

2021年07月12日
  • 不当解雇・退職勧奨
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不当解雇を証明する証拠とは? 証拠を収集できないときの対処法も解説

名古屋を管轄する厚生労働省愛知労働局では、令和元年度の個別労働紛争解決制度等の施行状況を公表しています。それによると、令和元年度の個別労働紛争相談件数は、1万8307件で全国3位の数字です。そのうち、解雇に関する相談が、2082件あったようです。

会社から突然解雇を告げられた場合にはどうすればよいのでしょうか。解雇をするためには、それ相応の理由が必要になりますが、正当な理由なく解雇された場合には、解雇の有効性を争うことができる場合もあります。

今回は、会社から不当解雇をされた場合に、どのような証拠を収集したらよいかについて、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、もしかして不当解雇?

会社から解雇を告げられた場合に、どのようなケースが不当解雇となるのでしょうか。まずは不当解雇を説明する前提として、解雇にはどのようなものがあるかについて説明しましょう。

  1. (1)解雇の種類

    解雇の種類は、大きく分けて以下の3種類に分類されます。

    ① 懲戒解雇
    懲戒解雇とは、労働者が重大な規律違反や悪質な非違行為をした場合に、最も重い懲戒処分として行われる解雇のことです。

    そもそも、懲戒処分は、「当該懲戒にかかる労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効」とされます。(労働契約法15条)

    その中でも、懲戒「解雇」は、使用者による、一種の制裁罰である懲戒処分としての性格と、解雇としての性格を併せもつものであることから、懲戒処分と解雇に関する法規制の双方が適用されます。そのため、懲戒解雇をするためには、以下の条件を満たしていなければなりません。

    ・懲戒解雇の根拠規定があること
    どのような行為をした場合に懲戒処分を受けるかを就業規則などによって明記しておくことが必要です。

    ・懲戒解雇に該当する行為をしたこと
    労働者が、就業規則などに規定された、懲戒事由に該当する行為をしたことが必要になりますが、形式的な該当性に加え、実質的な該当性を要求されるといえます。たとえば、日本通信事件(東京地判平成24年11月30日)では問題となった行為が、形式的に就業規則に該当するだけではなく、「少なくとも、その性質及び態様その他の事情に照らし、重大であって、かつ反訴原告会社の企業秩序を現実に侵害し、あるいは、その現実的かつ具体的な危険性を有していることが必要であると解される。」としています。

    ・懲戒解雇が相当であること
    懲戒解雇は、労働者にとって重大な不利益となることから、制裁として企業外に労働者を排除しなければならないほどの重大な義務違反、業務阻害や職場規律上の実害の発生がある場合でなければ行うことができません。懲戒処分として懲戒解雇を選択したことが相当であるといえない場合、懲戒解雇は無効とされる可能性があります。

    ② 整理解雇
    整理解雇とは、会社の経営悪化など経営上の理由による人員削減として行う解雇のことをいいます。

    会社側の一方的な都合で従業員を解雇する整理解雇は、立場の弱い労働者の権利を保護するため、解雇の中でも特に制限されています。そのため、整理解雇の有効性については、以下の4つの要件によって厳格に判断されます

    ・人員削減の必要性
    人員削減の必要性とは、人員削減措置の実施が企業経営上の十分な必要性があってなされること、またはやむを得ないと認められることをいいます。

    ・解雇回避努力
    解雇回避努力とは、解雇以外の人員削減手段(配転、出向、残業削減、一時休業、希望退職者募集など)によって、解雇をできる限り回避することをいいます。

    ・人選の合理性
    人選の合理性とは、客観的に合理的な選定基準を定め(勤務態度、勤続年数、家族構成など)、その基準を公正に適用し、解雇対象者を選定することをいいます。

    ・手続の妥当性
    手続の妥当性とは、使用者は、労働組合または労働者に対して、整理解雇の必要性および整理解雇の内容(時期、規模、方法など)について説明を行い、誠意をもって協議をすることをいいます。

    ③ 普通解雇
    普通解雇とは、懲戒解雇や整理解雇以外の解雇のことです労働者の能力不足やけがや病気等を理由にする解雇などが、これにあたります

    ただし、普通解雇をする場合にも、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効になります。(労働契約法16条)

    ・客観的に合理的な理由があること
    解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。

    解雇の理由にはさまざまなものがありますが、たとえば、勤務能力や成績不良、職務懈怠(遅刻等)、非違行為・服務規律違反などが典型的といえるでしょう。

    当該理由に基づく解雇に客観的合理的理由があるかについては、その内容や性質、程度、重大性、解雇回避措置が取られているかなど、当該解雇理由に応じ、さまざまな事情を考慮して検討されます。そういったさまざまな事情を考慮した上でなお、労働契約を継続することが困難といえる場合には、客観的合理的な理由を欠くといえるでしょう。

    ・社会通念上解雇が相当であること
    解雇はあくまでも最終的な手段ですので、配転、降格などによって対応することができず、解雇以外に手段がないといえることが必要になります。

  2. (2)不当解雇とは

    解雇は、労働者にとって重大な不利益処分となることから、どの種類の解雇をするにしても、厳格な要件のもと、適正な手続きをとらなければなりません。

    不当解雇とは、解雇の要件を満たしていない場合や、労働基準法および個別の法令による解雇制限を無視して行われた場合の解雇や、就業規則上に規定された手続き内容に反してなされた解雇のことです。

    不当解雇は、法律上は有効な解雇ではないため、解雇の効力を争うことができる場合があります

2、不当解雇の証拠になり得るものとは?

不当解雇として解雇の効力を争うためには、解雇が「不当」であるという証拠が必要になります。解雇の効力を争うための証拠としては、以下のようなものが考えられます。

  1. (1)解雇理由証明書

    解雇理由証明書とは、会社が従業員を解雇した場合に、どのような理由で解雇をしたのかを証明する書類です。

    法律上、労働者から解雇理由証明書の発行を請求された場合、使用者は遅滞なく交付しなければならないとされています。会社は、従業員から請求をされた場合には、解雇理由証明書の発行をする義務がありますが、請求がなければ発行する必要はありません。

    そのため、解雇理由証明書の存在を知らずに、請求することなく退職してしまった方も多いかもしれません。解雇理由証明書は、不当解雇を争うための重要な証拠となりますので、必ず請求するようにしましょう

  2. (2)就業規則

    懲戒解雇をする場合には、就業規則などで定められた懲戒事由に該当していなければなりません。解雇の理由となった事実が、懲戒事由として就業規則に規定されているか確認するためにも、就業規則の写しを会社に請求し取得することが大切です。

    普通解雇においても、就業規則に基づく解雇事由により解雇された場合には、その内容を確認する必要があるため、就業規則を確認する必要があります。

    また、解雇にあたって支払われた退職金が相当な金額であるかどうかを判断するためにも就業規則や賃金規程、退職金規程が必要になる場合があります。

    なお、労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する使用者には、就業規則の作成と、労働基準監督署への届け出が義務として課せられています。また、作成した就業規則については、労働者に周知しなければならないとされています。

    このように就業規則の作成、届け出、周知は、法律上の義務とされていますので、就業規則の周知がなされていないにもかかわらず、懲戒解雇をされた場合には、解雇が無効になる可能性もあります。

  3. (3)勤怠記録

    解雇の理由が、遅刻や早退、欠勤などである場合には、勤怠記録から会社が主張する遅刻等の事実はない、ということを争うこともあります。

    不当解雇を争う場合には、併せて未払いの残業代を請求する場合もあります。未払いの残業代金を計算するためにも、勤怠記録は重要な証拠となりますので、必ず取得しましょう

  4. (4)人事評価書や業務日報

    解雇の理由が、労働者の成績不振や勤務態度を理由とする場合には、普段の成績や勤務態度を証明するために、人事評価書や業務日報が証拠になる場合があります。

    また仮に成績不振や勤務態度に悪い点があったとしても、解雇は最終手段ですので、それだけで解雇をすることは相当性を欠くことが大半です。

  5. (5)会社の業績に関する資料

    会社が整理解雇を理由に解雇を告げた場合には、整理解雇の要件を満たすかどうか判断するために、会社の業績に関する資料が証拠となる場合があります。

    整理解雇をするためには、人員削減の必要性が求められます。そのため、会社の業績が好調であるとか、新規採用をしているような場合には、人員削減の必要性が否定されることになります。

  6. (6)労働契約の内容がわかる資料

    解雇の有効性を争うための直接の証拠ではありませんが、不当解雇を争う場合には、未払い賃金なども併せて請求することになりますので、労働契約の内容のわかる資料も必要になります

    具体的には、以下のようなものがあるとよいでしょう。

    • 雇用契約書
    • 労働条件通知書
    • 給与明細、賞与明細

3、証拠を集めることができないときは弁護士に相談を

不当解雇を争うためには、上記のような証拠が必要です。労働者が自由に不当解雇の証拠を集めることができるのは、在職中に限られますが、実際に証拠集めをするのは解雇を告げられてからの方が大半でしょう。もし、ご自身で証拠を収集できない事情があるなら、弁護士への相談がおすすめです。

  1. (1)証拠保全手続きの活用

    証拠保全手続きとは、「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情」がある場合に、本来の証拠調べの時期に先立って、裁判所が証拠の取り調べを行い、その結果を保全する手続きのことをいいます。

    わかりやすい例としては、医療訴訟において、カルテの改ざんを防止する前に訴訟提起前にカルテを保全するということをイメージしてもらえればよいでしょう。

    不当解雇の事案では、会社側が不当解雇の証拠となりそうなものを、あらかじめ処分・隠ぺいする可能性があります。労働者側で証拠収集をしてもよいですが、会社側に証拠収集の動きを知られた場合に、証拠を処分・隠ぺいされる可能性があるようであれば、証拠保全の手続きも検討してみるとよいでしょう。

  2. (2)弁護士に相談するメリット

    不当解雇にどのような証拠が必要となるかを労働者本人が正確に判断することは難しく、会社と比べて立場の弱い労働者が十分な証拠を収集するのも難しい場合が多いです。

    そのような場合には、弁護士に依頼をすることで、弁護士が労働者に代わって会社と交渉をすることもできます。また、証拠保全の手続きは、法律を知らない方には難しい手続きであることに加え、あくまで訴訟に至った場合に取れる手段です。事前に証拠を収集することは重要なことですから、法律の専門家である弁護士に依頼するほうが適切に手続きをすすめることができるでしょう。

4、不当解雇を疑ったときにとるべき対応

身に覚えのない理由で解雇を告げられた場合には、まずは以下のような対応をとるようにしましょう。

  1. (1)解雇理由証明書の発行を求める

    すでに説明したとおり、解雇理由証明書は、不当解雇を争うための重要な証拠です。

    解雇理由証明書に記載すべき解雇の理由は、具体的に示す必要があり、就業規則の該当条項の内容、解雇に至った事実関係を詳しく記載する必要があります。そのため、解雇理由証明書を取得することが、不当解雇を争う第一歩となるのです。

    正当な理由なく解雇をしようとする会社側としては、解雇理由証明書の発行は拒みたいところですが、法律上、労働者から請求された場合には、発行する義務があるため拒むことはできません。会社から発行を拒まれた場合には、弁護士に相談をするとよいでしょう。

  2. (2)退職届の提出を求められても拒否する

    実際には解雇であるにもかかわらず、労働者に退職届の提出を求める会社もあります。これは、解雇をする正当な理由がないことから、労働者が自主的に退職したという扱いにして、解雇の不当性を回避しようとするために行われるものです。

    解雇であるにもかかわらず退職届を提出してしまうと、不当解雇として争うことが難しくなってしまいます。退職の意思がないのであれば、会社から退職届の提出を求められたとしても拒否するようにしましょう。

    会社から何度も退職届の提出を求められ、対応に困るようであれば、弁護士に相談するとよいでしょう。

5、まとめ

労働者にとって解雇は将来の生活の基盤を失う重大な処分です。解雇に身に覚えがないのであれば、不当解雇として解雇の有効性を争う必要があります。不当解雇を争うためには、何よりもまず証拠の収集が重要となりますが、労働者がひとりで行うのは難しい場合があります。

弁護士であれば会社との交渉や証拠収集、労働審判の手続きまで労働者に代わって行うことができます。「不当解雇されるかも」もしくは「不当解雇されてしまった」というお悩みであれば、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご相談ください。労働問題に関する経験豊富な弁護士が、問題解決に向けてサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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