突然の解雇予告! 解雇通知書の受け取り時に確認すべきこととは?
- 不当解雇・退職勧奨
- 解雇予告
- 通知
令和2年の「あいちの就業状況」(愛知県県民文化局県民生活部統計課労働力統計グループ)によれば、労働力人口約425万4000人に対して、就業者数は約414万7000人、完全失業者は10万7000人であることがわかりました。
愛知県内だけでも約10万人が完全失業者数に該当します。その中には、会社から突如として解雇を言い渡された方もいるでしょう。会社の上司から解雇予告を通知された場合、不当な理由であっても解雇命令に従わなければいけないのでしょうか。今回は、解雇通知書の受け取り時に確認すべきことなどについて弁護士が解説します。
1、解雇予告通知書と解雇予告のされ方
仕事上のミスや能力不足により労働契約を解除される場合、解雇予告通知書を受け取ることがあります。解雇予告通知書とは、どんなものなのでしょうか。そして、解雇予告を口頭で受けた場合と通知書がある場合では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
-
(1)解雇予告通知書とは?
会社と雇用関係にある者に対して、解雇を予告する書面のことを解雇予告通知書といいます。本来、解雇予告は、口頭による説明でも構いません。しかし、会社としては書面に残しておかないと解雇に関する事実を、「伝えた・伝えなかった」などのトラブルに発展してしまう可能性があるため、労働者に対して「○日までに解雇します」と記述した書面を証拠として渡すことが多いかもしれません。
-
(2)口頭での解雇予告
解雇の意思表示は、従業員に到達した時点で有効に成立し、たとえ従業員の同意がなくても、その解雇に理由があり、予告期間が終了した時点で当然に労働契約は終了します。伝達方法については、労働基準法上のルールは存在しません。そのため、直接、口頭で述べることもできます。
しかし、解雇予告を口で述べた場合、会社から労働者に対して伝達した証拠が残らないため、そもそも解雇予告があったかどうかについて、争いになる可能性があります。 -
(3)通知書での解雇予告
解雇予告通知書を通して解雇予告を受けた場合、一般的に、その通知書には解雇予告者に関する下記のことが記載されています。
- 氏名
- 通知書の作成日
- 社名
- 代表者名
- 解雇日
- 解雇に関する意思表示
- 解雇理由
- あなたの解雇理由が該当する就業規則の条文
通知書であれば、口頭による解雇予告と比べると解雇される日や解雇理由が明確にわかるため、事実確認がしやすいでしょう。この場合、通知書を受け取った時点で、解雇の意思表示がされたと認められやすいでしょう。他にも、解雇予告通知書がメールで送信されることもありますが、メールの場合は、送信日時に関わらず受信者がメールを読むことが可能な状態になった時点で、解雇予告日が確定すると考えられるでしょう。
ただし、解雇の意思表示が有効に成立したとしても、後述のように、解雇に理由がない場合は、解雇自体の効力が否定されることになります。
2、解雇予告通知書をもらったときに確認すべきこと
会社から解雇予告通知書を受け取った場合、突然のことでパニックになってしまっても仕方ありません。この場合、何を確認すれば良いのでしょうか。
-
(1)不当解雇の可能性
まずは、解雇に問題がないか、事実を確認しましょう。そもそも、下記のような場合には、解雇の効力が問題となります。
- 解雇予告または予告手当の支払いがないまま解雇される(ただし、一定の場合にはこの限りではありません)
- 解雇される理由がない(労働契約法16条によれば、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」と定められています)
原則として会社が労働者を解雇する場合は、解雇をする日から30日以上前に予告する必要があります。解雇予告の際、解雇日までの日数が30日未満であるなら、解雇予告手当を受ける権利があります。
また、上述のように、解雇に理由がないにもかかわらず、契約が解除される場合は、不当解雇に該当することがあります。 -
(2)解雇理由
会社が労働者を解雇する場合、上述のように、解雇に理由がなく、社会通念上相当と認められない場合には、その解雇は無効となる可能性があります。解雇にあたっては、会社がクビにしたいと思ったからといって、すぐに解雇できるわけではありません。たとえば、解雇通知書に書かれている解雇理由に心当たりがないのであれば、不当解雇に該当する可能性があります。解雇理由として不当なものの例としては、下記の通りです。
- 笑顔がないという理由で解雇された。
- 育児休暇を取得したため解雇された。
- 上司の不正を内部告発した結果、解雇された。
もし、解雇理由に対して疑問を感じるのであれば、会社に不当な行為であることを述べておきましょう。
-
(3)解雇理由証明書の重要性
解雇予告通知書を受け取ったら、すぐに解雇理由証明書を請求しましょう。解雇理由証明書には、なぜ解雇するに至ったのかその理由が記されます。解雇理由証明書を労働者が請求すれば、ただちに会社は解雇理由を記述した書面を作成し、交付しなければいけません。
解雇理由証明書は、失業手当の申請や不当解雇を争う場合に必要な書類となります。口頭で発行を要求すれば受け取れることも多いため、退職してしまう前に手続きを進めることが大切です。
3、解雇を受け入れる場合に注意すべきこと
解雇を受け入れる場合は、解雇理由証明書記載の解雇理由を確認してください。解雇理由証明書を見れば、あなたの解雇理由がわかります。具体的な解雇理由が明記されていない場合は、会社に対して再発行を要求する必要があります。
解雇理由証明書を利用して就業中のどのような行為が就業規則の条項に該当しており、解雇理由となってしまうのかを書面でチェックしましょう。
また、雇用保険の関係で、離職票の記載にも注意が必要です。会社都合退職とは、リストラや廃業を理由に、強制的に解雇されることをいいます。一方で、自己都合退職とは、転職や介護など、自分の都合によって退職することを意味します。
万が一、会社から送られてくる離職票に自己都合による退職であるとの記載があれば、会社都合による退職であることを主張して内容を改めてもらいましょう。会社都合退職の方が失業給付金を早く受け取れます。ただし、人間関係や勤務態度による会社都合退職であった場合、転職で不利になることがあるかもしれません。
もし、精神的に厳しい状況であれば、退職に関するすべての交渉を弁護士が代わりに進められます。弁護士に依頼することで、交渉が有利に進むケースがあるので、事前に相談することを検討しましょう。
4、解雇を拒否する場合に注意すべきこと
万が一、解雇されることに納得がいかず拒否する場合でも、解雇理由を把握するため解雇理由証明書を交付してもらいましょう。解雇理由を明確化していなければ、後日、会社から「自分から辞めた」と言われかねませんし、会社がどのような理由で解雇したかについて確定しておくことで、事後に紛争が生じた際、的確に争うことができるでしょう。
解雇理由証明書に記載されている解雇理由が不当である場合は、解雇が無効であることを主張できます。
解雇理由証明書の請求が遅れてしまうと、会社の一方的な理由で押し通されてしまうこともありえます。不安な場合は、弁護士などを通じて有利に交渉を進めることをおすすめします。
5、解雇予告された場合の相談先
実際に、会社からの解雇に納得できない場合どのような制度を利用すれば良いでしょうか。
-
(1)労働局によるあっせん制度
あっせん制度は、労働者と会社の間の労働関係のトラブルにつき、紛争調整委員会という機関に間に入ってもらって、解決案を提示してもらえる制度です。費用がかからない点や迅速に手続きが進む点がこの制度の利点です。しかし、会社側に参加義務が課されない(不参加を表明した場合は手続きが打ち切りになってしまう)などの短所もあり、実効性ある解決が難しい場合もあります。この制度の利用は、地方労働局や労働基準監督署で受け付けています。
-
(2)労働組合を通じた団体交渉
労働組合に加入している場合、所属している組合を通じて会社と交渉する手段が考えられます。組合員の解雇に関する団体交渉は、会社に交渉義務が課されます。仮に、会社が組合からの団体交渉申し入れを不当に拒否し、あるいは誠実に交渉しない場合には労働委員会に救済を申し立てることができます。
-
(3)弁護士を利用する
弁護士に依頼すると、会社との具体的な交渉など、不当解雇問題の解決に向けて、あなたの代わりに尽力します。弁護士と聞くと、裁判をイメージされる方もいるかもしれません。弁護士は、裁判をする以外にも会社との交渉を労働者の代わりに進めることができるのです。
もし、本来もらえるはずだった給与や解雇予告手当てなどがある場合は、弁護士が代わりに請求します。もし、希望するのであれば、元の職場への復帰もサポートします。会社の担当者と顔を合わせたくないという場合でも、弁護士に相談すれば労働者の代理人となるため、最後まで安心して手続きを進められます。
6、まとめ
今回は、突然の解雇予告があった場合、どのように対処すれば良いのかについて解説しました。会社から解雇された結果、冷静な判断が難しい状況にあるのなら今すぐ弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所の弁護士は、雇用によるトラブルの対応や法的な解決経験が豊富であるため、解雇を巡ったさまざまな問題に対して、何でも相談できます。
解雇予告に関する相談先をお探しなら、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご連絡ください。もし、解雇理由が不当だと感じるのであれば、1日でも早く必要な手続きを弁護士と一緒に進めていきましょう。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています