ネットショップも要注意! 運営するなら知っておきたい特定商取引法

2019年04月23日
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ネットショップも要注意! 運営するなら知っておきたい特定商取引法

特定商取引法という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。これに違反すると、消費者庁や県のサイトなどで事業名とともに公表されるほか、業務停止命令や業務禁止命令などの行政処分など、厳しい罰則が待っています。

今、あなたがネットショップを始めようと思っているのなら、特定商取引法のことを知っておく必要があります。ネットショップもまた、特定商取引法の規制対象となる「通信販売」に含まれるためです。

そこで今回は、特定商取引法について、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、ネットショップには必須の特定商取引法とは?

「特定商取引法」の正式名称は「特定商取引に関する法律」です。まずはその詳細を知っておきましょう。

  1. (1)特定商取引法の主旨

    「特定商取引法」は、消費者トラブルが生じやすい特定の取引を対象に、事業者による悪質な勧誘や取引を公正にし、消費者の利益を守る目的で昭和51年に施行されました。時代の流れや状況などに応じて順次内容が見直されていて、平成29年にも改正が行われています。クーリングオフなどもこの法律の一部として規定されています。

    特定商取引法の規制対象となる「通信販売」には、もちろんインターネットを利用した通信販売も含まれます。特定商取引法の表示義務項目は必ず守るようにしてください。ネットショップを運営する場合においても、指定された項目は表示する義務があります。

    また、表示義務内容を記載することで、お客さまの安心感を高め、トラブルを未然に防ぐ可能性が高まるでしょう。 すべての項目に正しい情報を掲載するようにしてください。

  2. (2)特定商取引法の記載内容

    特定商取引法第11条においてネットショップに掲載が必要と定められている「特定商取引法に基づく表記」の主な項目を以下にあげていきます。

    • 販売価格(送料についても要表示)
    • 代金の支払い時期、方法
    • 商品の引き渡し時期
    • 商品の売買契約の申し込みの撤回、または解除に関する事項(返品の特約なども含む)
    • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
    • 事業者が法人で電子情報処理組織を利用した広告を行う場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
    • 申し込みの有効期限があるときには、その期限
    • 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額
    • 商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
    • いわゆるソフトウエアに関する取引である場合には、そのソフトウエアの動作環境
    • 商品を2回以上継続して購入する必要があるときは、その旨の記載および販売条件
    • 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容
    • 請求により有料カタログ等を別途送付する場合の金額
    • 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス


    以上の他に配送方法も記しておくと親切でしょう。

  3. (3)特定商取引法上で省略できる記載内容

    ネットオークションを除くネットショップでは、法第11条ただし書きに基づき、特定の条件を満たせば「特定商取引法に基づく表記」の一部を省略することができます。

    ただし、消費者からの請求があれば情報を遅滞なく提供する旨を表記し、実際にそれを行える体制を整えておくことが必須です。この「遅滞なく提供する」とは、申し込みの有効期限等の取引実態に即して、申し込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることを言います。

    具体的には、以下については記載の省略が可能です。

    • 代金の支払い時期(後払いの場合)
    • 代金の支払い方法
    • 商品の引き渡し時期(遅滞なく送付できるとき)
    • 事業者(販売者)の氏名、住所、電話番号
    • 事業者が法人で電子情報処理組織を利用した広告を行う場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
    • 商品に傷や不備などがあった場合の責任を負う場合


    なお、「販売価格」「送料」「その他消費者が負担する金額」のすべてを記載していない場合は、上記に加えて以下の事項も省略できます。

    • 前払いの場合における代金の支払い時期
    • 1週間以上かかる場合の商品の引き渡し時期
    • 商品に傷や不備などがあった場合の責任を負わない場合


    ただし、お客さまの立場になって考えれば、いずれも明確に記載したほうが信用できるネットショップとなるでしょう。また、トラブルを未然に防ぐ手だてにもなりえます。

    総合的に考慮した上で、どこまで記載するかを決定するのがよいでしょう。そのほかにも、交換のときの手数料はどちらが負担するかなど、後日トラブルにつながりそうな事項があれば、あらかじめ記載しておく方がよいかもしれません。記載内容について心配がある場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。

2、ネットショップで特定商取引法に違反したらどうなる?

もし仮に特定商取引法に基づく表記がないままネット通販を行ってしまった場合、一体どのような罰則があるのでしょうか?

  1. (1)特定商取引法違反による罰則

    結論から言えば、住所や電話番号など、特定商取引法に基づく表記を行わないことによって生じる直接の罰則はありません。ただし、業務改善指示(特定商取引法第14条)、業務停止命令(同法第15条)を受ける可能性があります。

    また、著しく事実に相違する表示や販売者にとって有利に誤認させるような表示などをしていると、誇大広告などの禁止(同法第12条)などの特定商取引法該当項目に違反しているとみなされ、所轄の経済産業省から業務改善指示や業務停止を受ける可能性があるでしょう。

    また、それでも改善が見られない場合の罰則については以下の項目で解説します。

  2. (2)特定商取引法違反の懲役などの罰則

    所轄の経済産業省から業務改善指示を受け、それに従わなければ6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。また、業務停止命令に従わない場合は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方を科せられる可能性があります。また、それらの違反による刑事罰につき法人もその主体となっている場合は法人に対しても罰金が科せられる可能性があります。

3、特定商取引法違反に該当する可能性がある行為は?

それではどのようなケースがネットショップの特定商取引法違反とみなされるのでしょう。次に具体的なケースをいくつか見ていきましょう。

  1. (1)誇大広告による特定商取引法等の違反

    特定商取引法第12条では、著しく事実と異なる内容の表記や誇大広告を禁止しています。誇大広告とみなされると、特定商取引法違反だけでなく、景品表示法や、扱う製品によってはそのほかの法に基づいた処罰を受けることもあるでしょう。

    誇大広告とみなされてしまう危険性がある表現や記載方法は以下のとおりです。

    • 本来の商品の定価を釣り上げて表示して、あたかも大幅な値引きをされているように記載する
    • 期間限定キャンペーンをずっと行っている
    • 枕の広告で「ただ寝るだけで体重○○㎏減少」と記載する等、合理的な根拠がないまま効果効能を実際のものよりも著しく優良なものとして表現する
    • 医薬品としての承認を受けていない健康食品などの紹介で「~が治る」などと断定する言葉を表示する
  2. (2)返品方法不明瞭表示による特定商取引法違反

    ネットショップの返品方法不明瞭表示に該当する可能性があるのは、たとえば「効果がないと感じた場合はお気軽にご相談ください」とだけうたっている場合が考えられます。これでは返品できるか不明瞭であり、具体的な方法も示されていません。

    返品特約があるかなどの返品要綱は事業者が詳しく明示しなければなりません。返品特約の表示が不明瞭であることによって、無用なトラブルが生じる可能性もあります。返品特約については明確に記載しましょう。

4、不安があれば弁護士に相談すべき理由

やろうと思えば、気軽に今すぐ、個人でもネットショップがオープンできるようになりました。しかし、個人でも、法人でも、新規にネットショップをオープンするとなると、法律上の制約を知っておく必要があります。万が一、間違ったことを記載してしまえば、大損をしてしまう可能性もあります。それだけならまだしも詐欺罪に問われるようでは安心できません。

万が一に備えて、できる限り弁護士へ相談しながら記載内容を決めていくことをおすすめします。

特定商取引法では住所などの明記が義務付けられていることもあり、個人であっても自宅住所や電話番号などをインターネット上に記載しなければなりません。ためらうかもしれませんが、利用するお客さまの視点から考えてみてください。運営している人の名前も住所も連絡先もわからない店舗で商品を購入することは、非常に抵抗があるのではないでしょうか。

ネットショップとはいえ、実際の店舗と同じと考えて運営を考える必要があります。特定商取引法のほかにも、知っておくべき法律はほかにもあります。しかし、すべてを知り尽くすことは非常に難しいことです。そこで、法律を熟知した弁護士に頼ることで、アドバイスを受けながら店舗運営をすることが可能となります。あらかじめ法に準じた対応をしておくことで、大きなトラブルを回避することができるでしょう。

5、まとめ

実際にネットショップを出店したとしても、特定商取引法を知らなければ大きな問題に発展してしまう可能性があります。やはり、ネットショップをオープンするときには、万が一のことを考え、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、必要なときにすぐに頼ることができる顧問弁護士サービスも行っています。転ばぬ先のつえとして、利用を検討してみてください。どうすべきか悩んでいるのであれば、まずは一度ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスで相談することをおすすめします。法律を熟知した弁護士が、親身になって適切なアドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています