優良誤認とは何か? 指摘された場合の対応方法とは
- 一般企業法務
- 優良誤認とは
令和3年8月、消費者庁が名古屋市内の通販会社に対して「貼るだけで痩せる」と公告し機器を販売したことについて、根拠がなく優良誤認(景品表示法違反)にあたるとして、課徴金3332万円の納付を命じました。
企業では、さまざまな商品やサービスを開発しており、多くの方に利用してもらいたいと考えて広告やパッケージのデザインなどに工夫を凝らしています。
しかし、実際の商品やサービスよりもよく見せる表示がなされてしまうと、その広告を信じて商品を購入し、サービスを利用した消費者が不利益を被るおそれがあります。そこで、景品表示法では、このような広告や表示を「優良誤認」として規制の対象にしています。
今回は、どのような場合に優良誤認に該当するのか、優良誤認と指摘された場合の対応はどうすべきか、などについてベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、優良誤認とされた事例
実際に、優良誤認として規制対象となった事例にはどのようなものがあるのでしょうか。優良誤認として行政処分を受けた事例を紹介します。
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(1)牛肉の品質
実際には、結着した成型肉を使用していたにもかかわらず、「ローストビーフ」と記載してローストされた牛肉の肉塊をスライスした映像を表示していたことが優良誤認表示とされました。
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(2)一般照明用電球型LEDランプ
実際には、60ワット型の白熱電球の明るさを大きく下回るものであったにもかかわらず、60ワット型の白熱電球とほぼ同等の明るさと表示していたことが優良誤認表示とされました。
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(3)スポーツクラブに設置した浴場
実際には、温泉法に規定する温泉の基準を満たさない水道水などを用いた温水であったにもかかわらず、新聞折り込みチラシやホームページ上で「天然鉱石ラジウム温泉<露天風呂>」などと表示したことが優良誤認表示とされました。
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(4)美容機器
実際には、当該表示を裏付ける合理的な根拠がないにもかかわらず、美顔器の効果として「なでるだけで脂肪分解効果あり」、「アクネ菌や皮脂腺の殺菌効果」、「肌の汚れの除去効果」などが得られると表示したことが優良誤認表示とされました。
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(5)はちみつ
実際には、中国またはハンガリーで採蜜された天然はちみつが混合されているにもかかわらず、原産国として岩手、盛岡などの産地を記載することによってあたかも国内で取れたはちみつのみを使用しているかのように表示したことが優良誤認表示とされました。
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(6)中古自動車の走行距離
実際には、10万キロメートルを走行した中古自動車であるにもかかわらず、「走行距離3万キロメートル」であるかのように表示をしたことが優良誤認表示とされました。
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(7)オンラインゲーム
実際には、ガチャを1回利用する場合の特定のキャラクターの出現率が0.333%であったにもかかわらず、「出現確率:3%」などと表示をしたことが優良誤認表示とされました。
2、優良誤認となる条件とは
具体的に、景品表示法における優良誤認表示となるのはどのような要件を満たした場合なのでしょうか。以下では、優良誤認表示の概要や要件について説明します。
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(1)優良誤認とは
景品表示法では、一般消費者が適切な商品やサービスを選択することができるように、商品やサービスの品質や価格などについてさまざまな表示規制を行っています。優良誤認表示もその規制の一つであり、商品やサービスの品質や性能などについて、実際のものよりも著しく優れていると誤認される表示について禁止しています。
優良誤認表示の規制に違反をした場合には、消費者庁による措置命令の対象になったり、課徴金の納付が命じられたりすることがあります。 -
(2)優良誤認の要件
景品表示法による規制対象である優良誤認表示といえるためには、以下の要件を満たす必要があります。
① 商品やサービスの品質、規格その他の内容についての表示であること
品質とは、商品に関する成分や属性のことをいいます。
それぞれ、- 商品に関する成分……原材料、濃度、純度、添加物など
- 商品に関する属性……性能、効果、安全性、耐用度、鮮度など
が含まれます。
規格とは、国や公的機関などが定めた一定の要件を満たすことで表示することが可能になる等級、基準などをいいます。
その他の内容としては、原産地、製造方法、製造年月日、有効期限など商品やサービスの品質や規格に影響を及ぼす可能性があるものも含まれます。
② 実際のものよりも著しく優良であると表示すること
優良誤認表示といえるためには、その表示が- 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
- 事実に相違して競争関係にある事業者にかかるものよりも著しく優良であると示すもの
であることが必要になります。
ここでいう「著しく」とは、誇張や誇大の程度が社会一般に許容される程度を超えていることをいいます。
そして、誇張や誇大の程度が社会一般に許容される程度を超えているかどうかは、その表示を見たユーザー(顧客)が、誤認して誘引されるかどうかで判断されます。
③ 一般消費者が誤認するおそれのある表示であること
優良誤認表示にあたるかどうかは、表示を行う事業者や当該業界の一般的な知見を基準にするのではなく、表示の受け手である一般消費者を基準として、誤認する可能性があるかどうかで判断されます。
ここでいう「一般消費者」とは、一般的な常識を持っている消費者を指します。
3、優良誤認と消費者庁に疑われた場合どうなるか
優良誤認表示の疑いがある場合、消費者庁は、以下のような調査を行い、違反した事業者に対して措置命令や課徴金納付命令を行います。
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(1)調査
消費者庁では、景品表示法違反の疑いがある場合に外部からの情報提供を受け付ける窓口を設けています。景品表示法に違反する優良誤認表示がなされている疑いが生じた場合、消費者はオンラインによる情報提供フォームや郵送・電話による方法で消費者庁へ情報提供を行うことができます。
また、消費者庁では、都道府県の消費生活センターからも情報を収集するなどして、優良誤認表示の疑いのある事案についての調査を行っています。
このような情報提供や調査によって優良誤認表示の疑いが発生すると、消費者庁は、関連資料の収集や当該事業者への事情聴取などを行い、事実の調査を行っていきます。 -
(2)弁明の機会の付与
上記の調査の結果、事業者に景品表示法に違反する行為が認められたとしても、直ちに行政処分がなされるわけではありません。行政処分を行う前には、事業者に対する手続き保障として弁明の機会を与えなければならないとされています。
消費者庁の認定した事実関係に対して、事業者に言い分がある場合には、資料などを提出するなどして説明することが可能です。
なお、消費者庁は、優良誤認表示に該当するかどうかを判断するために必要があると認める場合には、事業者に対して表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求めることができます。定められた期限内に資料の提出がなかった場合には、当該表示は優良誤認表示であるとみなされますので注意が必要です。 -
(3)措置命令
事業者による弁明を踏まえてもなお違反行為が認められる場合には、消費者庁は、事業者に対して措置命令を行います。
措置命令の内容としては、以下のようなものが挙げられます。- 不当表示によって一般消費者に与えた誤認の廃除
- 再発防止策の実施
- 今後同様の違反行為をしないこと
なお、消費者庁による措置命令に不服がある場合には、審査請求や取消訴訟によって措置命令を争うことも可能です。
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(4)課徴金納付命令
商品やサービスの取引について優良誤認表示を行った場合には、課徴金の納付が命じられることがあります。課徴金とは行政処分の一環として納付を命じられるものであり、罰金などの刑罰とは異なります。優良誤認表示によって事業者が利益を得た場合には、違法または不当な手段によって得た利益ですので、そのような利益を吐き出すために設けられたものが課徴金制度です。
課徴金として納付が命じられる金額は、課徴金対象期間における優良誤認表示にかかる商品やサービスの売上額に3%を乗じた金額です。
ただし、事業者に優良誤認表示の違反行為があったとしても、当該事業者が不当表示であることを知らず、かつ、表示の根拠となった情報を確認するなどして相当の注意を払っていたと認められる場合や課徴金額が150万円未満の場合には、課徴金の納付を命じられることはありません。また、違反行為をした事業者が自主的に事実を報告した場合には、一定の要件を満たすことで課徴金額の2分の1が減額されます。
4、弁護士と顧問契約を結ぶメリット
事業者が弁護士と顧問契約を結んでいた場合には、以下のようなメリットがあります。
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(1)優良誤認表示に該当するかを判断してもらえる
優良誤認表示に該当するかどうかについては、法律やガイドラインなどを踏まえた法的な判断が必要になりますので、企業の担当者では正確に判断することが難しいケースもあります。
弁護士と顧問契約を結んでいれば、優良誤認表示に該当するかどうかなどの悩みが生じた場合に、表現方法についての相談やリーガルチェックを依頼することができますので、万が一の事態を回避するために有効といえます。 -
(2)景品表示法に関する研修の講師を依頼できる
優良誤認表示に該当する表示を行わないためには、企業の担当者が法令に対する正確な理解を有していることが大切です。そのために有効な方法が定期的な社内研修の実施です。
弁護士と顧問契約を結んでいれば、顧問弁護士に研修の講師を依頼することができますので、正確な知識や豊富な経験に基づく社内研修を実施することが可能になります。
5、まとめ
優良誤認表示に該当する広告などを行ってしまうと、消費者庁からの措置命令によって企業としては消費者からの信頼を失う事態になってしまいます。それに加えて、課徴金を科せられるリスクや、社会的な信頼を失う恐れもあります。
そのため、普段から景品表示法に違反するような表示を行わないように意識して行動することが大切です。自社の商品やサービスに関する表示が景品表示法に違反していないか不安だという事業者の方は、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています