未成年の息子が東山線で痴漢容疑者に! 家族はどう対応すればよい?

2019年09月04日
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未成年の息子が東山線で痴漢容疑者に! 家族はどう対応すればよい?

東山線は、名古屋市の交通機関の中でも乗降人数が多い路線です。家族が通勤通学で利用している家庭も多いのではないでしょうか。東山線は、平成14年に東海圏の地下鉄で最初に女性専用車両を導入した路線で、平成27年4月以降は平日の始発から終電まで運用が拡大されています。

それだけ痴漢の被害が多く発生している東山線で、あなたの息子が痴漢容疑で逮捕されてしまったら……。突然の出来事に、事実だと受け入れるのが難しいほどに動揺してしまうことでしょう。

親としてとにかく早く警察から出してあげたい、将来への影響が不安といった気持ちは理解できます。この記事では、未成年者が痴漢の容疑で逮捕された場合、身柄の取り扱いや裁判はどうなるのか、また家族が知っておくべきことについて、名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、未成年の犯罪はどう裁かれるのか

未成年者が痴漢で逮捕された場合、どのような処遇を受けるのでしょうか。これは刑事責任を問える年齢かどうかで手続きが異なります。

  1. (1)14歳未満の場合:逮捕なし

    刑法第41条において「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定められています。
    加害者が14歳未満の場合、「触法少年」と呼ばれ、警察により逮捕・起訴されることはありません。しかし、児童相談所で身柄を保護されるケースがあります。

  2. (2)14歳以上の未成年の場合:少年事件扱い

    加害者が14歳以上の場合は、「犯罪少年」と呼ばれ、刑事責任能力があるとして逮捕される可能性が十分にあります。少年事件であっても、逮捕や取り調べの手続きは、成年の場合とほとんど変わりません。

    逮捕後は、警察の留置所などに身柄を拘束され、取り調べを受けます。検察官は、捜査後に少年を家庭裁判所に送り、その後の処遇については、家庭裁判所に委ねられることとなります。家庭裁判所での流れについては後述します。

2、成年が痴漢容疑で逮捕されたあとの流れ

14歳以上の未成年者が痴漢をして逮捕された場合、家庭裁判所に送られるまでは、成年が痴漢容疑で逮捕される場合と基本的な流れは変わりません。成人が逮捕されたあとの一般的な流れもあらかじめ知っておきましょう。

  1. (1)逮捕と警察での取り調べ

    痴漢容疑の逮捕は、現行犯逮捕が多数を占めます。被害者や周りの乗客により取り押さえられたら、駅の乗務員室などに誘導されたあと、警察に引き渡されます。

    逮捕後は警察で48時間以内の取り調べを受けます。逮捕後は面会制限を受けることがあります。ただし、弁護士であれば接見が可能です。

  2. (2)検察への送致

    警察は、逮捕から48時間以内に事件を検察に送致します。以降は捜査機関の呼び出しに応じて捜査に協力することとなります。

    一方、身柄ごと検察に送致された場合は、検察官は24時間以内に、裁判所に対し「勾留(こうりゅう)請求」を行うかどうかを判断します。逮捕から勾留が決定するまでのあいだ、家族は面会が許されないケースがほとんどです。

  3. (3)勾留

    勾留とは事件の捜査のため、被疑者が逃亡したり証拠を隠したりしないように、身柄を拘束することを指します。

    裁判所が勾留を認めた場合、留置所などの刑事施設で最大で10日間身柄を拘束されたまま取り調べが続けられます。さらに最大でプラス10日の延長まで認められているため、状況によっては最長20日間ものあいだ、帰宅できず、学校や仕事に行くこともできません。

    ただし、少年事件の場合、勾留に代わる観護措置が請求されるケースがあります。勾留に代わる観護措置の請求が認められると、多くの場合、少年鑑別所へ送致されることになります。

  4. (4)起訴・不起訴の決定

    検察は、勾留期間中に、起訴するか、不起訴とするかの決定を下すことがほとんどです。なお、在宅事件扱い(書類送検)の場合は、起訴・不起訴の決定まで、上記(3)で述べたような、勾留期間の制限に伴う時間の制約がありません。

    少年事件の場合は、検察は起訴・不起訴の判断を下しません。取り調べが終わると、犯罪の嫌疑がないなど特別な事情がない限り家庭裁判所へ送致されます。

3、少年事件の家庭裁判所での取り扱い

前述のとおり、未成年の場合、成年との大きな違いとして家庭裁判所への送致があります。

  1. (1)観護の決定または釈放

    逮捕または勾留されている少年の送致を受けた家庭裁判所は、事件の態様や生活環境などについて調査します。そのうえで、「観護措置」とするかを判断します。 観護措置には、少年鑑別所に送致するもの(収容観護)と少年鑑別所には送らず身柄が解放された状態で家庭調査官の観護に付するもの(在宅観護)がありますが、実務上後者はほとんど活用されていません。

    観護措置(収容観護)となった場合、原則2週間、最長で8週間ものあいだ少年鑑別所へ収容され、鑑別を受けます。ほとんどのケースでは、期間は4週間となります。鑑別とは、医学や心理学などさまざまな学術に基づいた調査を行うことで、犯罪行為をするに至った背景や今後の更生を目指す際の指針を示す取り組みを指します。

  2. (2)審判不開始または審判・処分

    少年事件では裁判ではなく、審判により少年の最終的な処分を決めることになります。もっとも、調査終了後、少年審判の必要がないと判断されれば、「審判不開始」として審判を開くことなく事件は終了となります。

    一方、審判が必要となれば、少年法に基づく処分が決定されます。成人の裁判と異なり、少年事件の審判は原則非公開です。

  3. (3)審判での処分内容

    家庭裁判所の審判では、以下の処分のいずれかが下されます。

    ●不処分
    非行の事実がなかった場合や、事案が軽微で保護処分の必要がないと判断された場合は、不処分となり身柄は釈放されます。

    ●保護観察処分
    自宅で、保護観察所の指導監督のもと、社会内で少年の更生を図ろうとする処遇です。少年は、保護観察期間中に守らなければなら事項を決められ(遵守事項)、また、保護司と連絡をとり、あるいは報告することを約束することになります。

    ●試験観察
    最終的な処分の決定を一定期間留保するものです。少年を家庭などに戻し、その経過を見た上で、後に最終的な処分を決めます。

    ●更生施設への送致
    社会内での更生が難しい場合は、児童自立支援施設・児童養護施設や少年院へ送致となります。少年院等は、更生施設ですので、目的は少年の処罰ではなく、少年の矯正や育成にあります。

    ●検察への送致
    死刑・懲役・禁固に当たる重大な罪を犯した少年について、刑事処分が相当と認められた場合は、家庭裁判所から検察に送致(逆送)され、以後は、成人の事件と同様の手続きをたどることになります。裁判で有罪となれば前科がつきます。

4、弁護士に依頼するメリット

万が一、未成年の息子が痴漢で逮捕されたとして、いち早く身柄を解放するには、できるだけ早く弁護士に依頼することをおすすめします。

  1. (1)逮捕後のサポート

    前述のとおり、逮捕から勾留が決定するまでの最長72時間のあいだは、たとえ家族であっても面会を制限されることがあります。しかしながら弁護士であれば、自由な接見が可能です。逮捕され動揺しているだろう本人の話を聞き、家族との連絡を取り持ったり、取り調べにどのように応じるのかも相談したりすることができます。

    また、長期にわたる身柄拘束の可能性がある勾留や観護措置によって、受験や進級、仕事などに大きな影響を及ぼす可能性も考えられます。その際は、できる限り回避できるよう、意見書を提出して働きかけることや、裁判官と面談して観護措置を取ることによって更生が妨げられる可能性が高い旨などを伝えます。

    また、審判の際は、少年本人や保護者、付添人の意見を求められます。事件の初期から少年本人とかかわってきた弁護士を付添人として選任することで、スムーズな対応が行えるでしょう。また、どのような受け答えをすべきかなどのアドバイスも行えます。

    弁護士は、捜査機関に対し、十分に反省していること、身元引受人の体制、更生の方針などを捜査機関に適切に伝えることで、早期釈放につなげます。

  2. (2)被害者との示談交渉

    示談では、事件の当事者間で賠償と謝罪を行い、被害者が刑事罰を望まない意思表示を行うことを目指します。
    成年事件においては、示談が成立している事件では、勾留の見送り、不起訴となる可能性が高くなります。痴漢事件の早期解決には、示談の成立が非常に有効といえるでしょう。
    少年事件でも、示談成立の有無が、審判の際、影響を及ぼすことがあります。
    被害者と示談を行うのは、法定代理人である両親です。しかしながら、痴漢は性犯罪であり、被害者が加害者である少年との接触を避けたいと考えることも多く、交渉には弁護士など第三者が行うことが望ましいと考えられます。示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、被害者の感情を刺激せず、適切な金額で迅速な示談成立を望めるでしょう。

5、まとめ

ご家族が痴漢容疑で逮捕された場合は、できるだけ早く弁護士を依頼することをおすすめします。もし事実であった場合は、息子さんの将来への影響を最小限にとどめるためにも対応を相談してください。学校などへ影響が及ぶ可能性があるときは、弁護士が交渉することも可能です。

本人が犯行を否認している痴漢冤罪事件であればなおさら、無実を示すには弁護士の知見なしに戦うことは非常に難しくなります。取り調べを受ける場合も、必ず弁護士のサポートを受けることを強くおすすめします。不本意な自白や調書を取られてしまうと、裁判で圧倒的に不利となってしまいます。

弁護士は、状況に応じた最善策をご提案します。まずはベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています