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不退去罪とは? 犯罪となる要件や刑罰の内容、逮捕後の流れを解説

2023年04月24日
  • その他
  • 不退去罪
不退去罪とは? 犯罪となる要件や刑罰の内容、逮捕後の流れを解説

令和3年1月、大学入学共通テストの試験会場で、マスクの装着方法で注意を受けた男性が約4時間にわたってトイレに立てこもり、不退去罪の現行犯として逮捕されたニュース報道が注目を集めました。

人の住居や建造物において、退去要求されたのに居座り続けると不退去罪という犯罪が成立することがあります。正当な理由がなく侵入して罪になるのは分かりやすいですが、退去しないことで罪になるのはどういう場合なのでしょうか。

本コラムでは不退去罪が成立する条件や不退去罪で逮捕されてしまった場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、どういう場合に不退去罪に問われる?

刑法130条は、以下の通り規定されています。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。


この条文を整理すると、以下の2つの罪についての内容が含まれていることがわかります。

  • 前段の「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し」の部分が住居侵入罪
  • 後段の「要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった」の部分が不退去罪


したがって、不退去罪とは、刑法130条の後半に規定されている犯罪です。まずは、その構成要件などについて解説します。

  1. (1)不退去罪の要件

    刑法130条の条文から不退去罪の要件を整理すると、以下の3つに分けられます。

    • 退去の要求を受けたこと
    • 滞留することに正当な理由がないこと
    • 人の住居・人の看守する邸宅・建造物・艦船から退去しないこと


    これらをひとつずつ確認しましょう。

    ① 退去の要求を受けたこと
    退去の要求は、その住居などの管理権限がある人が行う必要があります
    住居であれば居住者、店舗などであれば管理権限を委任された店長、現場責任者なども退去要求をすることができます。

    ② 滞留することに正当な理由がないこと
    「正当な理由がないのに」とは、違法に、という意味ですが、これは、立ち入りの態様や程度等など具体的事情を、時間を総合的に考慮して判断されるでしょう。

    また、退去要求を受けた瞬間に不退去罪が成立するわけではなく、退去に必要な時間が経過してから不退去罪が成立することになります。

    ③ 人の住居・人の看守する邸宅・建造物・艦船から退去しないこと
    「人の住居」とは、他人が日常生活の拠点としている場所を指します。

    「人の看守する邸宅」とは、施錠されたり管理人が置かれたりして管理されている居住用の建物で、犯行当時は生活に使用されていない別荘や空き家が該当します。
    また、マンションやアパートの共用部分も邸宅にあたると考えられています。

    「建造物」とは、会社や学校、病院、役所、商業施設、駅など、住居や邸宅以外の建物です。

    「艦船」とは、軍事用、非軍事用を問わず船舶全般を指します。

    なお、住居や邸宅、建造物については、建物内に限らず、建物に付属する塀や柵で囲まれた敷地も含まれます。

  2. (2)住居侵入罪となにが違うのか?

    住居侵入罪は、最初から不法な目的で住居や邸宅、建造物などに侵入した場合に成立します

    窃盗や盗撮など犯罪目的で住居などに侵入する行為が典型例です。

    なお、住居侵入罪が成立する場合には、重ねて不退去罪が成立することはありません。
    つまり、最初から不法な目的で侵入した場合は住居侵入罪、適法に(または過失により)立ち入ってから、退去要求に従わず滞留した場合に不退去罪の成立が問題となります。

  3. (3)不退去罪が問題となるケース

    不退去罪は退去要求に応じずに滞留することで成立する罪ですが、その発端となる行為は犯罪には至らない程度の迷惑行為がほとんどです。

    ① クレーム
    平穏に苦情を述べるクレームが犯罪となることはあまり考えられません。
    それがエスカレートして土下座などの強要や脅迫、業務妨害に発展した場合に罪に問われる可能性もあります。

    しかし、クレームもそれが長時間に及ぶと店舗などの業務に支障をきたして、退去要求に「正当な理由」が生じることになります。

    冒頭で紹介した、大学入学共通テストの試験会場における不退去罪の事例も、報道によれば4時間にわたってトイレに立てこもったとされるケースでした。

    ② 訪問販売や宗教勧誘など
    営業活動や宗教の勧誘、集金などのために自宅などを訪問することは、特段問題がある行為ではありません。

    しかし、退去要求を受けているのにしつこく居座ると、不退去罪が成立することも考えられます。

    ③ 労働争議
    労働組合が要求の実現や意見表明のために集団で行動することを争議行為といいます。

    争議行為は、形式的にみれば住居侵入罪や不退去罪、強要罪などが成立する可能性もありますが、労働組合法で認められる正当行為として処罰されることはありません(労働組合法1条2項、刑法35条)。

    ただし、争議行為が平和的な説得活動の範囲を超えた場合はその限りではなく、不退去罪が成立することもあります。

2、逮捕された場合はどうなる?

不退去罪であれ何らかの犯罪の疑いをかけられて逮捕されてしまうと、以下の点が切実な問題となってくることは間違いないでしょう。

  • いつ身柄を解放されるのか
  • どれくらいの刑になるのか


そこで、本項では、逮捕されてからの刑事手続きの流れについて解説します。

  1. (1)いつ身柄を解放されるのか?

    まず、逮捕された場合、いつまで身柄拘束される可能性があるのかについて、刑事事件の流れとともに解説します。

    ① 逮捕
    逮捕されると集中的な取り調べが行われることになります。
    原則として逮捕されてから、48時間以内に事件が検察官に送致されますが、一定の軽微な事件は、警察限りで刑事手続が終了し、釈放されることもあります。

    ② 検察官送致
    検察官に事件が送致されると、検察官からの取り調べがあります。

    逮捕をされている場合、身柄を拘束できる期間は72時間と刑事訴訟法で決まっています。しかし、検察が身柄拘束を続ける必要があると判断すれば、逮捕から72時間以内に裁判所へ勾留請求をします。

    検察官が勾留の必要はないと判断すれば釈放されますが、この場合には釈放後も、捜査機関の呼び出しに応じて捜査を受けなければなりません(在宅捜査)。

    ③ 勾留
    検察官が勾留請求をすると、裁判官が身柄拘束の必要性を審査します。
    裁判官が勾留を認めた場合、さらに最大10日間の身柄拘束が続きます。
    勾留が認められなかった場合は釈放され、在宅捜査に切り替わります。

    ④ 勾留延長
    10日を経過してもさらに身柄拘束をしたまま捜査を続ける「やむを得ない事由」がある場合は、さらに最大10日間勾留が延長されることもあります。

    ⑤ 起訴
    捜査が終結すると、検察官は次のいずれかの処分を行います。

    • 刑事裁判を求める起訴
    • 書面審理により罰金刑を求める略式起訴
    • 不起訴
    • 処分保留(在宅捜査を続行)


    刑事裁判を求める起訴以外の処分となった場合は釈放されます。

    勾留されている場合、検察官が処分を決定するのは、勾留期限となる最終日になるのがほとんどです。

    ⑥ 刑事裁判
    検察官が刑事裁判を求めて起訴した場合、捜査のための勾留から刑事裁判のための勾留に切り替わり、勾留期間も2か月間となり、以後は1か月ごとに更新されます。

    なお、起訴されると保釈請求が可能となり、保釈が許可されると保釈保証金の納付と引き換えに釈放されます。保釈保証金は事件の内容などにより異なりますが、150万円以上となるのが一般的です

    保釈保証金は、保釈の際に決められる保釈条件に違反したり、逃亡したりしない限り返還されます。

    ⑦ 判決
    懲役刑や禁錮刑の実刑が言い渡された場合を除き、判決宣告後直ちに釈放されます。

    したがって、身柄を釈放される可能性があるタイミングは以下のいずれかとなるでしょう。
    ●逮捕から送致までのあいだ
    ●送致されてから勾留が始まるまでのあいだ
    ●勾留が終わったとき
    ●保釈が決定したとき
    ●判決が下ったあと

  2. (2)どれくらいの刑になるのか?

    不退去罪の罰則は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です

    一般的な傾向として、前科がなくよほど悪質と判断された場合でなければ、執行猶予付きの懲役刑か罰金刑となるケースが多いのではないかと思われます。

    また、被害者と示談が成立しているケースや適当な身元引受人による監督が期待できるケースでは、不起訴処分となる可能性も高いといえるでしょう。

3、家族が不退去罪で逮捕された場合に家族ができること

ご家族が警察に逮捕された場合、警察官からの連絡で知ることになるのがほとんどでしょう。

その際には、捜査に支障が生じるため、事件の詳しい内容などは教えてもらえないのが一般的でしょう。また、逮捕期間中は本人と面会することも困難です。

しかし、逮捕直後の数日間は刑事弁護においては重要な時間となります。
逮捕から72時間以内に行う、勾留請求を回避するための弁護活動が功を奏せば、早期に身柄が釈放される可能性があります

逮捕の原因となった犯罪事実を認めている場合、被害者への弁償と示談の成否が大きなポイントです。

不退去罪は、前科がなければ重い刑事責任が想定される罪ではなく、身柄拘束の長期化を回避する弁護活動が大変重要です。

また、不退去罪の犯罪事実に身に覚えがない、事実の一部が間違っているという場合、留置場での生活や長時間の取り調べという過酷な条件下で、自身の主張を貫くのは容易ではありません。
捜査機関に有利な供述調書に署名してからでは手遅れになることもあるので、この場合も早期の弁護活動が大切です。

4、まとめ

不退去罪は、居住者など管理者の退去要求から相当時間が経過することにより犯罪が成立するため、どこからが犯罪になるのか分かりにくい罪といえます。

それだけに、実際には警察官の説得などでその場が収められるケースも多く、刑事事件となるのはよほど悪質と判断されたケースに限られるといえます。

あなたやあなたの家族が逮捕されてしまったら、刑事弁護の経験が豊富なベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士にぜひご相談ください。不当に重い刑罰を受けることがないよう、弁護士が全力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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