名古屋走りをしたら危険運転として逮捕される? 危険運転の概要と刑罰

2020年03月19日
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名古屋走りをしたら危険運転として逮捕される? 危険運転の概要と刑罰

名古屋走りに代表されるようなローカル運転ルールは、時に大きな交通事故を引き起こします。令和元年の名古屋市の交通事故死亡者数は33人、愛知県全体の死亡者数は156人でした。名古屋走りにも一因がある可能性は、大いにあると考えられます。

しかし、名古屋以外にも○○走り、○○ルールと呼ばれるローカル運転ルールが存在し、各地で問題となっているのです。これらのローカルルールは、法律に違反しているのでしょうか。そして、逮捕される可能性はあるのでしょうか。

本コラムでは、名古屋走りに代表されるローカル運転ルールは、どのような罪に問われるのか、逮捕される可能性はあるのかなど、ローカル交通ルールと法律の関係について解説します。

1、○○運転は危険運転として取り締まりを受ける?

日本各地には、さまざまなローカル運転ルールが存在します。ルールといっても道路交通法や条例などで定められているものではなく、危険が伴うものがほとんどです。まず、どのような行為が、危険なローカル運転ルールに該当するのかを見ていきましょう。

  1. (1)名古屋走りだけでない、危険なローカル運転ルール

    名古屋走り以外にも各地方にさまざまなルールが存在し、ある程度の類似点があります。

    ●名古屋走り
    強引な右折、車線変更時にウィンカーを出さない、黄色信号でもためらいなく交差点に進入する、車線変更を頻繁に繰り返す、などの行為が名古屋走りとされています。

    ●松本走り
    赤信号から青信号に変わった途端に直進車の進行を妨げるように右折する、対向車が左折する際に同時に右折するなどの、強引な右折が松本走りと呼ばれています。長野県松本市が広報で市民に対して強引に右折しないように呼びかけるほど、日常的に見られるようです。

    ●伊予の早曲がり
    愛媛県でみられる強引な右折は、伊予の早曲がりと呼ばれています。信号がある交差点で、青信号になったと同時に急発進して右折することをいいます。

    ●茨城ダッシュ
    茨城ダッシュも、伊予の早曲がりと同様に対向車が直進するより先に右折しようとする強引な右折です。

    ●関西走り
    大阪を中心とする関西で見られる、信号無視や割り込みなどの強引な運転です。

  2. (2)危険運転とは?

    ロール運転ルールは、「危険運転」に該当するのでしょうか。

    危険運転ときくと、東名高速道路で起きたあおり運転による死亡事故を思い浮かべる方が多いかもしれません。危険運転とは、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)」において次のように定義しています。

    ●酩酊(めいてい)運転、薬物運転
    アルコールや薬物の影響によって正常な運転が困難な状態で運転する行為

    ●制御困難運転
    コントロールができないほどの高速度で自動車を走行させる行為

    ●未熟運転
    自動車をコントロールすることができるスキルがないのに運転する行為

    ●進路妨害運転
    人や車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入したり著しく接近したり、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。

    ●信号無視運転
    赤信号や赤信号に相当する信号を無視して、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。

    ●通行禁止違反運転
    通行禁止道路を進行し、なおかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為。

    ●病気運転
    自動車の運転に支障を及ぼすおそれがあるとして政令で定められている病気の影響で、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転する行為で、結果として病気の影響で正常な運転が困難な状態に陥ったもの。


    危険運転の結果、死傷者がでた場合は「危険運転致死傷罪」が成立します。

    危険運転致死傷罪の法定刑は、運転の状態や被害者が死亡したかどうかによって異なります。
    アルコールや薬物、病気によってその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール、薬物、病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、事故を起こし被害者を死亡させた場合は15年以下の懲役、負傷させた場合は12年以下の懲役です。それ以外のケースにおいて死亡させた場合は1年以上の懲役、負傷させた場合は15年以下の懲役に処されます。

2、危険運転の根拠となる法律と刑罰

前述したように、名古屋走りによって事故を起こし、被害者を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。

しかし、名古屋走りをしたとしても、死傷者がでなければ罪に問われないというわけではありません。名古屋走りをして事故を起こさなくても、「道路交通法違反」に問われるおそれがあります。

道路交通法に違反すると点数によって行政罰、もしくは刑事罰に処せられます。違反点数が6点を超えると刑事罰6点未満であれば行政罰となります。

行政罰にあたる行為の場合、すぐさま刑事罰に処せられるおそれはありませんが、違反点数が加算され反則金を支払うことになります。累計の違反点数や過去の処分回数によっては、免許の停止や取り消しといった処分を受けることもあります。

3、逮捕される可能性はある?

名古屋走りなどの危険な運転行為をしただけでは、逮捕される可能性は極めて低いでしょう。
しかし、違反を見とがめられた警察官に対して暴力や暴言などがあった場合は、公務執行妨害の現行犯としてその場で逮捕されるおそれがあります。
また、危険な運転によって被害者が死亡やケガをした場合において、逃亡や証拠隠滅の可能性があると判断された場合は、逮捕される可能性が非常に高まるといえます。

  1. (1)逮捕された場合の流れ

    道路交通法違反や公務執行妨害、危険運転致死傷罪などの疑いで逮捕された場合は、最長で72時間にわたって身柄を拘束されます。
    逮捕後の48時間は、警察官によって取り調べを受けます。その後、事件は検察官へ送られ、24時間以内に検察官は勾留請求をするか判断します。
    勾留の判断がなされた場合には、最長で20日間も身柄拘束が続きます。

    勾留期間中に、検察官は起訴・不起訴を判断します。起訴されると刑事裁判において、有罪か無罪かが争われます。起訴された場合の有罪率は非常に高いため、起訴を回避するための弁護活動が重要と言えます。

4、弁護士に依頼すべき理由

名古屋走りなどの危険運転によって逮捕される可能性がある場合、または逮捕された場合は、弁護士に弁護を依頼すべきでしょう。

  1. (1)勾留阻止・不起訴獲得のための弁護活動

    逮捕後の72時間は、原則として外部と連絡をとることはできません。家族であっても、同様です。この期間、唯一面会ができるのが弁護士です。弁護士は、取り調べに対するアドバイスのほか、ご家族からのメッセージを伝える、捜査状況や今後の見通しを共有するなど精神的にもサポートします。
    平行して、捜査機関に対して弁護活動を行います。逮捕されてから早い段階で弁護士に依頼することで、勾留請求を阻止できる可能性や不起訴を獲得できる可能性が高まります。

  2. (2)被害者との示談交渉

    名古屋走りによって起こした事故で逮捕された場合は、早急に被害者と示談を成立させることが重要です。示談が成立することで、和解が成立し被害者に処罰感情がないと判断されるため、早期の釈放や不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。

    ただし、被害者は危険な運転をした加害者や、加害者の家族からの連絡を拒むケースが予想されます。そのため、示談交渉は弁護士へ依頼することが得策です。第三者である弁護士との交渉であれば、話し合いに応じてくれる可能性も期待できます。
    また、示談金についても適切な金額での合意が望めるでしょう。

5、まとめ

名古屋走りなどの危険な運転で交通事故を起こすと、危険運転致死傷罪や道路交通法違反などで逮捕されるおそれがあります。逮捕されれば身柄拘束が長期間続き、社会的影響は甚大です。危険運転致死傷罪に問われて有罪になった場合は、懲役刑が課される可能性もあります。
危険運転をしてしまい、逮捕される可能性がある場合は、まず弁護士へ相談しましょう。また、すでに身近な方が逮捕されている場合は、早急に弁護士にご連絡ください。

ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスでは、交通事故や交通違反に関するご相談を広く受け付けております。経験豊富な弁護士が、状況に応じて適切にサポートします。まずは、お気軽にご相談ください。

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