身内が痴漢の再犯で逮捕。再犯で逮捕されると量刑は重くなる?
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痴漢で逮捕された夫や息子が再び痴漢をして逮捕されたら、家族としてはとても落胆することでしょう。家族としては、一度ならず二度までも痴漢を犯してしまい、今回はすぐに刑務所に行かなくてはならないのではないか、と心配に思われることでしょう。
そこで今回は、痴漢の再犯により逮捕されてしまった場合の処遇について、勾留期間や量刑、未成年のケースなどについて解説します。
1、痴漢の再犯率は高い
痴漢は、他の犯罪と比較して再犯率の高い犯罪といわれます。
再犯の原因は痴漢行為が性的依存性を背景としていることが多いためともされています。性的依存症で痴漢をする人は、お酒やタバコがどうしてもやめられないのと同じように、痴漢をどうしてもやめられないのです。
現在では性的依存症の治療を行う病院や施設もあります。夫や息子が痴漢を繰り返してしまうという場合には、そうした病院へ連れて行くなど、家族のサポートが必要な場合があるのです。
2、再犯における起訴と刑期
そもそも再犯は、懲役が終わった日、もしくは懲役の執行の免除があった日の翌日から5年以内に罪を犯し有罪となることをいいます。
痴漢の再犯の場合には、以下のような注意すべき点があります。
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(1)痴漢の再犯は初犯よりも起訴されやすく、刑が重くなる
痴漢の逮捕には迷惑防止条例違反と、強制わいせつ罪の2種類があります。
服の上から触れる、などの痴漢は迷惑防止条例違反が適応されることが多く、痴漢逮捕のケースも迷惑防止条例違反のほうが件数としては多くなっています。
名古屋市内において痴漢した場合、愛知県迷惑行為防止条例違反として、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
再犯だからと言って、この上限が変わることはありませんが、再犯の場合、前回の刑罰よりも重い刑罰が科されることが考えられます。また、再犯は初犯に比べ起訴される可能性が高くなります。 -
(2)再犯者の刑期は長くなる可能性がある
刑法は、犯罪を繰り返す再犯者に対しては、通常より重い刑を科すことにしています。
刑法第57条では「再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。」と示されており、痴漢の再犯も懲役が規定の期間よりも長くなる可能性があります。 -
(3)執行猶予中に再び痴漢した場合
前回の痴漢について執行猶予付の懲役刑に処せられた場合、その執行猶予期間中に再度痴漢を犯せば、原則として前回の執行猶予は取り消され、前回の刑と再犯時の刑との併せた刑に服することになります。
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(4)執行猶予が付かない場合
執行猶予が付かない場合前回の痴漢の執行猶予期間満了日または実刑の刑期満了日の翌日から5年以内に再度痴漢をしてしまい、再犯として懲役刑に処せられる場合には、法律上、執行猶予がつくことはありません。実刑になり、すぐに刑務所に服することになります。
3、痴漢の再犯の量刑相場
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(1)初犯は罰金刑
痴漢の場合、初犯は罰金20万円~50万円に終わることが多いです。被害者との示談成立など情状次第では不起訴になるケースも多くあります。
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(2)再犯でも罰金刑のことはある
再犯でも2回目の場合であれば、再び罰金刑になることもあります。その場合、金額的には30万円~50万円程度です。
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(3)再犯でも執行猶予が付くケースは多い
痴漢の再犯につき、懲役刑に科せられる場合でも、執行猶予中の再犯あるいは執行猶予の付けることのできない短期間での再犯でない限り、執行猶予の付くことが多いです。
執行猶予を付けてもらうには、被害者との示談、痴漢に対する依存性の解消のための治療、家族の監督、その他、再犯防止のために必要な措置を講じるなどの有利な情状を揃える必要があります。
なお、懲役刑に処せられる場合の刑期の目安は4ヶ月~6ヶ月程度です。
4、再犯の場合、勾留される可能性が高い
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(1)勾留とは?
痴漢により逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官に事件を送致します。
その後、24時間以内に、検察官が引き続き身柄を拘束するべきであると判断し、裁判所が検察の申請を許可すればさらに勾留されます。勾留期間は、原則10日間、最大20日間です。これらの流れは初犯と変わりません。 -
(2)身柄拘束は裁判が終わるまで続く
勾留期間の満期までに検察官は、起訴・不起訴を決定します。検察官により起訴され、刑事裁判が開かれる場合、保釈を認めてもらわない限り、裁判が終わるまで身柄拘束は続きます。
痴漢の再犯により逮捕された場合、少なくとも2ヶ月程度は身柄を拘束され続ける可能性があるのです。 -
(3)再犯の場合は勾留される可能性が高い
勾留は、逃亡と証拠の隠滅を防止するため身柄を拘束されることです。
再犯の場合、前回より重い刑に処せられる可能性が高くなるため、逃亡のおそれや証拠を隠滅するおそれは高いと判断され、勾留されてしまう可能性は高くなります。
5、未成年による痴漢の再犯
少年法の主な目的は少年の育成と保護です。
そのため、未成年者の痴漢は再犯でも少年法の適用により、まず起訴にはなりません。刑事裁判として起訴されるのは殺人などの重大犯罪のみです。
ただし、家庭裁判所の判断により、更生のため少年院に送致されてしまう場合があります。両親と同居しており、学校に通っている場合には、痴漢の再犯により少年院送致になる可能性は低いです。
6、痴漢の再犯における弁護士の役割
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(1)早期の身柄解放のための活動
長期間身柄を拘束されることは、仕事や学校などに支障を生じさせます。弁護士としては、まずは、勾留の必要性のないことを主張して、早期の身柄解放を求めます。その際、重要なのが痴漢の被害者との示談です。
示談成立により、加害者はもはや逃亡したり、被害者に不当な働き掛けを行ったりすることはないだろうと考えてもらえるからです。
弁護士であれば被害者とコンタクトを取ることができます。また、これら示談の交渉は加害者の家族が行うよりも、弁護士などの第三者が行ったほうが、被害者の心を乱さずに進めることができます。 -
(2)可能な限り軽い処分にする
痴漢の再犯の場合、弁護士は、できる限り軽い処分により事件が終了することを目指します。具体的には、不起訴、起訴ならば罰金、懲役刑ならば執行猶予を目指します。
そのためには身柄開放の際と同じく、被害者との示談が重要になります。
夫、または子どもが痴漢の再犯で捕まってしまった場合、いち早く弁護士に相談し、できる限りの手を尽くす必要があります。
家族の監督体制、痴漢の原因である依存性解消のための治療行為、公共交通機関を利用しないことを誓約させるなど、再犯防止に向けた取り組みを弁護士と進めるようにしましょう。
再犯の防止を実現することのできる可能性の高いことを主張することが大切です。これは基本的に未成年の痴漢の再犯の場合においても同様です。
7、まとめ
今回は、痴漢の再犯を犯した場合の量刑の目安を中心に、その具体的処遇について解説しました。
一般的に再犯の場合、厳しい処罰の予想されることは、痴漢でも、他の犯罪でも同様です。 早期の身柄解放、刑務所の服役、少年院の入院を回避するためには、早めに弁護士を弁護人・付添人として選任して、すぐに弁護活動を開始してもらうことが肝要です。
その際、国選の弁護士選定まで時間がかかります。弁護士費用は掛かるかもしれませんが、早期解決のために信頼できる弁護士にいち早く依頼することを検討しましょう。
家族が痴漢の再犯でお困りならベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご連絡ください。名古屋オフィスの弁護士が親身に対応いたします。
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