AirDrop痴漢を行っている方へ! どんな罪になるかを解説

2020年07月30日
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AirDrop痴漢を行っている方へ! どんな罪になるかを解説

令和2年1月から令和2年3月までに愛知県の性犯罪で検挙された人数は約70人でした。このような統計を見ると、いたずら目的でAirDropを使ってわいせつ画像を送ったことがある方は、もしかしたら、これも犯罪かもと思い、不安に感じているのではないでしょうか。
AirDrop痴漢は犯罪行為です。被害者が警察へ被害届を出せば、逮捕される可能性は十分あります。この記事では、このような行為をしてしまった方向けに、AirDrop痴漢がどんな罪に問われ、逮捕された後どうなるのかについて、名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、AirDrop痴漢とは?

  1. (1)AirDropとは

    AirDropはiPhoneの機能のひとつです。ただし、すべての機種に搭載されているわけではなく、iOS7.0以降の機種だけに標準搭載されています。
    スマホを使ってデータファイルを送信する場合、メールや会員制交流サイト(SNS)などを利用する人が多いと思います。しかし、AirDropを使えば、ダイレクトに画像や動画、連絡先などデータを共有できるのです。たとえば、出掛けた先で撮影した写真や動画を、iPhoneユーザー同士ですぐに共有するといったことができます。

  2. (2)AirDrop痴漢とは

    この便利な機能を使って、痴漢行為をするのが「AirDrop痴漢」です。痴漢はわいせつな行為をすることですが、わいせつな写真や動画を見せることは、卑わいな言動にあたり、AirDropを使って、見ず知らずの相手にわいせつな写真や動画を送信して、無理やり見せる行為はAirDrop痴漢と呼ばれています。

    AirDropで画像を送信する画面を見れば分かりますが、周辺にいるiPhoneユーザーやiPadユーザーの端末名が表示されるようになっています。この表示名は個人が自由に設定でき、女性だとわかるような表示名にしている端末に向けて、画像を送るわけです。
    この機能でデータを共有できるのは約10m以内にいるユーザーだけなので、多くの人が集まる場所、たとえば繁華街や電車内などで、AirDrop痴漢は行われます。

2、AirDrop痴漢で問われるのはどんな罪か

AirDrop痴漢は、以下の2つの罪に問われる可能性があります。

  1. (1)わいせつ物頒布罪

    AirDrop痴漢は、刑法のわいせつ物頒布罪が成立する可能性があります。電車内などで不特定の人に対して、AirDropでわいせつな画像や動画を送信する行為は、わいせつ物頒布罪の成立する条件を満たしているからです。わいせつ物頒布罪が成立すると、2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料で処罰されます。

    刑法第175条
    わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
  2. (2)迷惑行為防止条例違反

    AirDrop痴漢は刑法以外にも、愛知県迷惑行為防止条例違反で逮捕される可能性があります。痴漢で逮捕されるのは、この迷惑行為防止条例違反というケースがほとんどです。AirDrop痴漢は被害者の身体に接触することはありませんが、わいせつな画像や動画を送信して被害者に羞恥心を感じさせたり不快な思いをさせたりします。迷惑行為防止条例第2条の2第1項第4号は、公共の場で、人に羞恥心を抱かせたり不快にさせたりする言動を規制しているので、処罰される可能性があるのです。迷惑防止条例違反が成立すると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金で処罰されます。

3、AirDrop痴漢は逮捕された事例をご紹介

AirDrop痴漢は知られないと思っていたら、それは大きな間違いです。実際に逮捕された事例がありますので、注意してください。以下では、逮捕された事例をいくつかご紹介します。

  1. (1)兵庫で逮捕された事例

    平成30年5月、電車内でAirDropを使って女性にわいせつな画像を送信した会社員の男が、迷惑防止条例違反の容疑で兵庫県警に逮捕されました。容疑者が不審な動きをしていたため、被害者の女性が写真を撮影して通報したことが逮捕のきっかけでした。

  2. (2)大阪で逮捕された事例

    平成30年8月、大阪の電車内で女性にわいせつな画像を送信したとして会社員の男が大阪府迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されました。加害者の男は、被害者の女性が恥ずかしそうにするのを見ることを目的に犯行に及んだと供述しました。乗客がiPhoneを操作する加害者を発見したことが、逮捕のきっかけとなりました。

4、AirDrop痴漢で逮捕! その後の流れは?

ここでは、逮捕された後の手続きについて解説します。

  1. (1)逮捕後の取り調べ

    警察に逮捕されると、逮捕に至るまでの状況や身上、経歴などについて取り調べを受けます。どんなことをしたのか、なぜ犯行に及んだのかなども聞かれ、すべて供述調書に記録されます。犯行に使用したiPhoneは証拠として押収されます。警察での身柄拘束は最長48時間に及び、その間に事件が検察庁へ送致されます。警察で取り調べを受けている期間は家族にも会えず、会えるのは弁護士だけです。

  2. (2)検察官からの取り調べ

    警察から検察庁へ送致されると、検察官による取り調べが行われます。検察官は、身柄の拘束が必要と判断すると最大10日間の留置所等にとどめ置く処置(これを勾留といいます)を裁判所に請求します。さらに、日数が必要と判断されれば、勾留はさらに最大10日間延長されます。つまり検察庁での身柄の拘束は、最長で20日間に及びます。この間に、起訴になるか不起訴処分になるかが判断されます。

    取り調べ段階から弁護士へ依頼すれば、被害者との示談交渉、検察官や裁判官との交渉を行い、弁護士は必要ないのに長期間勾留されないよう働きかけます。
    また、被害者との示談交渉、検察官や裁判官との交渉を行い、不起訴処分となるよう働きかけます。

  3. (3)刑事裁判

    検察官が起訴すると、刑事裁判の手続きへと進みます。裁判で裁判官が有罪と判断すると、判決を言い渡されて刑罰を受けることになります。なお、刑事裁判では、弁護士は刑の減軽や執行猶予を勝ち取るためにさまざまな弁護活動を行います。

5、まとめ

AirDrop痴漢は犯罪であり、逮捕されると厳しい刑罰を受ける可能性があります。被害者に自分の身元が分からないから大丈夫と思って続けていると、いつかは警察へ被害届が出されるでしょう。逮捕・勾留となれば、逮捕された事実が勤務先・知人などに知られて、今までの社会生活が送れなくなる、といったこと可能性も高まります。

「被害者との示談をする」といった対策を打つことができれば、起訴猶予になったり、執行猶予になったりすることもあります。しかし、被害者と示談は、加害者本人やその家族では困難なのが現状です。被害者の連絡先が分からないとか、被害者の怒りが大きく示談交渉が進められないといったことがあるからです。そのため、なるべく早い段階で弁護士に相談し、代理人の立場から示談交渉を進めてもらうことが大切です。

「AirDrop痴漢で逮捕されるのでは」と不安を感じている方は、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご連絡ください。名古屋オフィスの弁護士が問題を解消できるよう、尽力いたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています