旦那が痴漢容疑者に! 落ち着いて対応するために知っておきたい逮捕後の流れ

2019年10月25日
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旦那が痴漢容疑者に! 落ち着いて対応するために知っておきたい逮捕後の流れ

平成29年3月に国土交通省が公開した「第12回大都市交通センサス調査」によると、中京圏の路線別最大区間輸送量の上位5位は、市営地下鉄東山線(伏見→名古屋)16万人/日、名古屋本線(神宮前→金山)15.7万人/日、名城線(東別院→上前津)8.8万人/日、中央本線(大曽根→千種)8.2万人/日、東海道本線(熱田→金山)7.8万人/日となっています。

乗降人数の多いこれらの路線では、痴漢の被害もしばしば報告されています。朝晩の通勤ラッシュの混雑中、夫が痴漢容疑で逮捕されるという事態もありうるかもしれません。

万が一「旦那が痴漢で逮捕」という連絡を受けたら、家族としてどのように対応すればよいのでしょうか。名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、痴漢容疑で逮捕された場合の流れ

まずは痴漢容疑で逮捕された場合、どのような処遇を受けるのかをご説明します。

  1. (1)逮捕と取り調べ

    痴漢は、現行犯逮捕による検挙が多数を占めます。現行犯逮捕は警察官のみならず、一般人でも可能です。痴漢の被害者もしくは周囲の乗客、乗務員などによって取り押さえられ、鉄道警察隊や駆け付けた警察官に引き渡されます。

    また、防犯カメラなどの証拠により、後日に逮捕状を持った警察官が自宅などに来て、通常逮捕がなされるケースもあります。

    罪を犯した疑いがある者は「被疑者」と呼ばれ、刑事訴訟法に基づき手続が進んでいきます。まずは、警察署に身柄を移して、取り調べが行われます。被害者の証言や防犯カメラの確認などの捜査が行われるでしょう。

    警察は、逮捕後48時間以内に、被疑者の身柄を検察へ送致するか判断します。

  2. (2)送致

    逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合等、事件の調査書類のみを検察に送致し、身柄は釈放されるケースもあります。報道などで「書類送検」と呼ばれる措置です。この場合は「在宅事件扱い」となるため、身柄の拘束を解かれ自宅に帰ることができます。以降は任意の取り調べに応じながら捜査協力を続けます。

    逆に、身柄は解放できないと判断されると、被疑者の身柄ごと検察に送致されます。送致を受けた検察官は、身柄拘束を続けて取り調べが必要と判断したら、裁判所に対して「勾留(こうりゅう)請求」を行います。勾留請求は、送致後24時間以内に行う必要があります。

  3. (3)勾留(こうりゅう)

    裁判所が勾留請求を認めると、検察官の勾留請求日から最大10日間の身柄拘束が可能となります。さらに、延長請求がなされれば、最長で20日間もの間、身柄が拘束され自宅に帰ることができません。

    20日間も仕事を休むとなれば、勤務先に逮捕された事実が知られ、職を失ってしまうおそれもあるでしょう。そこで、このような事態を避けるために、まずは逮捕から72時間以内の釈放を目指すこととなります。

  4. (4)起訴か不起訴の判断

    検察官は、勾留期間内に、さまざまな証拠集めや検証を行います。そして、捜査の結果、痴漢が確かに行われたと立証できると検察官が判断した場合は、「起訴」ののちに、裁判で有罪か無罪かを問うこととなります。

    ひとたび起訴されると、日本では99.9%以上の事件で有罪判決が下されています。つまり、起訴されてしまうとほぼ前科がつくということです。たとえ罰金刑や執行猶予付き判決が下りて身柄の拘束が解放されたとしても、前科はつきます。そして、前科がついてしまうと、特定の資格や職業、海外渡航時などに制限を受けることがあります。

    したがって、このような社会生活上の制約を伴う前科を回避するためには、起訴自体を回避する必要があると言えるでしょう。

  5. (5)起訴から裁判まで

    起訴には、略式請求と公判請求(正式起訴)があります。略式請求は、100万円以下の罰金又は科料に相当する求刑が予定されている事件で、犯罪事実を認めている場合に本人の同意を得て行われます。公判請求の場合は、刑事裁判所で公開された裁判が行われます。

    正式起訴から裁判までの期間は一般的に1~2ヶ月程度です。勾留を受けたまま起訴をされたときは、起訴後に裁判所に対し保釈請求を行うことができます。裁判所が保釈を認めたら、提示された保釈金を納めたのちに身柄が解放されます。

    裁判が行われる回数によって、最終判決までの期間は変わることになります。

2、旦那が痴漢で逮捕! どのような罪に問われる?

万が一、旦那様が痴漢で逮捕された場合、どのような罪に問われるのでしょうか。

  1. (1)迷惑防止条例違反

    迷惑防止条例とは、市民生活の平穏を守るために各都道府県で制定している条令です。多くの場合、痴漢行為もこの条例において罰則が定められています。

    愛知県では、愛知県迷惑防止条例の第2条の2において「卑わいな行為の禁止」が示されています。

    (卑わいな行為の禁止)
    第2条の2
    何人も、公共の場所または公共の乗物において、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

    1. 1 人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という)の上から触れること。
    2. 2 衣服等で覆われている人の身体または下着をのぞき見し、または撮影すること。
    3. 3 前号に掲げる行為をする目的で、写真機、ビデオカメラその他の機器(以下「写真 機等」という)を設置し、または衣服等で覆われている人の身体若しくは下着に向けること。
    4. 4 前3号に掲げるもののほか、人に対し、卑わいな言動をすること。


    罰則は同条例の第15条に規定されています。有罪となれば、「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処されます。また常習として前項の違反行為をした者は、「2年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」が科せられることになるでしょう。

  2. (2)強制わいせつ罪

    直接肌に触れる痴漢行為等の場合、より罪の重い刑法第176条「強制わいせつ罪」が適用される可能性もあります。

    下着の中に手を入れて、直接執拗(しつよう)に性器を触り続けたような悪質なケースが該当する可能性があります。刑罰は、「6ヶ月以上10年以下の懲役」です。罰金刑がなく、執行猶予がつかなければ即収監されることとなります。

    (強制わいせつ)
    第176条 13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

3、前科を避けるために、家族ができること

「旦那が逮捕された」となれば、気が動転し、どうしたらよいか分からないことも多いことでしょう。家族として、どのような対応ができるか説明します。

  1. (1)弁護士への相談、依頼

    逮捕の事実を知ったら、すぐにでも弁護士に相談や依頼をすることをご検討ください。勾留などにより、事態が長期化すると、失職など大きなリスクにつながりかねません。弁護士を通じて、検察官、裁判官への意見書を提出することなどによって、早期の身柄解放が期待できます。

    また早期解決のためには、迅速に示談を成立させることが非常に有効です。もちろん、冤罪の場合もあります。そのときこそ、無罪の証明には弁護士によるサポートが欠かせません。無罪の証拠は、時間がたつほど集めにくくなります。弁護活動の早期着手が重要です。

  2. (2)弁護士を通じて示談を行う

    もしも罪を認めて示談を行う場合は、早期成立がカギとなります。

    示談とは、一般に、当事者同士による話し合いによる解決を指します。刑事事件においては、加害者が被害者に対して謝罪や賠償の約束をします。被害者がそれを受けて罪を許し、処罰を望まないという「宥恕(ゆうじょ)文言」を示談書の中で示すことなどを行います。

    検察の勾留請求に先立ち、逮捕後72時間以内に賠償金や支払い方法も含めて示談書を取りまとめることができれば、勾留されることもなく不起訴処分とされることも多いでしょう。

    しかしながら、痴漢は性犯罪です。捜査機関が、弁護士以外に被害者の連絡先を開示しないことも多く、また、被害者も加害者やその家族と直接話し合うことを拒むケースがほとんどです。それでも、弁護士に対しては、連絡先を開示してもらえたり、話し合いに応じてもらえたりできる可能性があります。

    弁護士は示談金の相場も理解しているため、加害者に言われるがまま不当な額を請求されることも回避できるでしょう。被害者との連絡や交渉は弁護士に一任するのが最善策といえます。

4、まとめ

たとえ冤罪であっても、痴漢容疑での身柄拘束が長期に及べば、会社に知られるリスクやうわさによる社会的制裁を受けるケースが考えられます。将来的に退職にまで追い込まれる可能性もゼロではないのです。

実際に罪を犯してしまった場合でも、重すぎる罪に問われることは避けなければなりません。被害者の許しを得て、早期に示談を成立させることができれば、被害者も家族も、必要以上に不安にさらしたり、傷ついたりすることを回避できるでしょう。

逮捕されてしまったら、ベリーベスト法律事務所・名古屋オフィスまでご相談ください。早急に弁護士に依頼することによって、逮捕された本人やあなたの家族が受ける可能性がある将来への影響を最小限にとどめることができます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています