女性に無理矢理キスしたら?強制わいせつの加害者となってしまった際の対処方法
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職場の飲み会や、その場で知り合った女性に、その場のノリや勢いで強制的にキスをしてしまったり、女性の身体をむやみに触ってしまったりすると、強制わいせつ罪となる可能性があります。
相手が不快に感じる性的な行動や発言は軽微なものでも刑事事件として扱われることがあります。また、本人に覚えが無くても、後日相手側から警察に通報されて、強制わいせつ罪の疑いとして事件化するケースもありえます。
もし、女性から強制わいせつや脅迫などと言われてしまったら、どのようなことになってしまうのでしょうか?
今回は、強制わいせつ行為の加害者になってしまったときの対処方法について、弁護士が詳しく解説いたします。
1、強制わいせつ罪とは
強制わいせつ罪とは、「暴行や脅迫の手段を用いて、相手にわいせつな行為をすること」です(刑法176条)。
ナンパした知らない女性に抱きついたり、調子に乗って知り合いの女性に強制キスをしたり、痴漢で衣服の中に手を入れて、女性の身体に直接触ったりすると、「強制わいせつ罪」の加害者になってしまうことがあります。
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(1)暴行脅迫について
暴行とは、相手に暴行を振るったり威力を示して力で抑え込んだりすることです。
脅迫は、言葉や態度などで威圧して脅すことです。
こうした方法を用いて相手の意思に反してわいせつ行為をすると、強制わいせつ罪が成立します。強制わいせつの「暴行または脅迫」は、わいせつ行為と一体であっても良いと考えられています。
すなわち、わいせつ行為そのものによって相手が畏怖した場合にも、強制わいせつが成立します。加害者自身は意図的に暴行を振るったり脅したりしていないつもりでも、触られた相手が畏怖していたら、強制わいせつ罪が成立する可能性があります。 -
(2)わいせつな行為
「わいせつな行為」とは、性欲を満足させたり、刺激して興奮させたりする行為で、一般的に性的な羞恥心を害する行為と言います。
つまり、抱きついたりキスをしたり、胸やお尻を触ったり服を脱がせたりすると、わいせつ行為となります。 -
(3)わいせつ意図について
強制わいせつ行為が成立するには、わいせつな意図が必要と考えられています。
すなわち、復讐や嫌がらせ、虐待などの意図しかなかった場合には、強制わいせつ罪は成立しません。
ただし、これに対しては反対の意見や裁判例もあります。
従来、強制わいせつ罪が成立するには、わいせつ意図が必要だと考えられていました。
しかし、最大判平成29年11月29日で、わいせつ意図は必ずしも必要ではないとされています。 -
(4)同意がないこと
強制わいせつ罪が成立するのは、相手の意思に反してわいせつ行為をした場合ですから、相手が同意していた場合には、犯罪にはなりません。
ただし、相手が13歳未満の女児の場合には、たとえ了承があっても強制わいせつ罪が成立します。
そこで、街中で出会った女児にわいせつ行為をして、被害女児が実は13歳未満だったと判明すると、強制わいせつ罪になってしまう可能性があります。
2、準強制わいせつ罪について
相手に暴行や脅迫をしていなくても、強制わいせつ罪の加害者になってしまうケースがあります。
相手が酩酊状態になっていて心神喪失状態のときや、相手が知的障害で判断能力が無い場合などに、そういった状態に乗じてわいせつ行為をした場合です。
このような場合「準強制わいせつ罪」が成立し、強制わいせつ罪と同等の刑罰が適用されます(刑法178条1項)。
3、強制わいせつ罪は、非親告罪
強制わいせつ罪は、「非親告罪」です。
「親告罪」とは、被害者が刑事告訴をしない限り、処罰されないというタイプの犯罪です。
以前は、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪は「親告罪」でしたが、平成29年改正で強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪にあった「親告罪」の規定が削除されました。
つまり、被害者の告訴が無くても処罰される可能性が出てきました。
もっとも、従前と同様に被害者の被害届などは重要な要素であることは変わらないと思われます。
4、強制わいせつ罪が成立する具体的なケースとは
強制わいせつ罪が成立するのは、実際にはどのようなケースなのでしょうか?
例を挙げて見てみましょう。
- ナンパした女性に無理矢理キスをした
- ナンパした女性の家に行き、相手が嫌がっているのに服を脱がせて身体を触った
- 知り合いの女性に抱きついて押し倒し、身体を触った
- 痴漢行為で、下着の下に手を入れて、直接胸や性器などをしつように触り続けた
- 相手を脅して無理矢理服を脱がせて写真を撮影した
- 一緒に飲んでいた女性が飲酒して寝てしまったので、服を脱がせて身体を触った、キスをした
飲み会などで調子に乗って過ぎた行為をしてしまうと、強制わいせつ罪の加害者になってしまう可能性が十分にあります。
そのときには特に問題にならなくても、被害女性が後日になって、被害届を提出するなどすると、警察が被疑者宅にやってきて、事情聴取されたり通常逮捕されたりしてしまいます。
5、強制わいせつ罪の刑罰
強制わいせつ罪になった場合の刑罰は、以下の通りです。
強制わいせつ罪には懲役刑しかないので、略式起訴が選択されることがなく、通常裁判となります。
懲役刑しかないので、いったん起訴されると、有罪判決を受けた場合に必ず懲役刑を適用されます。執行猶予がつかなければ、実刑となって刑務所に行かなければなりません。
刑期は最低6ヶ月以上となっており、最高刑期は10年なので、非常に重い処罰です。
強制わいせつ罪の悪質なケースでは、初犯でも実刑になる可能性が十分にあります。
サラリーマンの方などが実刑判決を受けると、ほとんどの場合、勤め先の会社から懲戒解雇処分を受けることになるでしょう。
6、強制わいせつ罪の未遂罪は罰せられる
女性にわいせつな行為をしようとしても、相手が抵抗するなどして失敗することもあります。このように、強制わいせつが未遂に終わった場合、強制わいせつ罪の未遂罪が成立して、やはり処罰されることとなります。
7、強制わいせつ致傷罪とは
暴行または脅迫を用いて相手にわいせつな行為をしたとき、相手をケガさせてしまうことがあります。その場合「強制わいせつ致傷罪」が成立してしまうので、注意が必要です(刑法181条1項)。
強制わいせつ致傷罪は、非常に重い犯罪です。
刑罰は、無期または3年以上の懲役刑となっています。
刑法上、懲役刑で執行猶予をつけられるのは3年以下の懲役または禁固のケースに限られますから、強制わいせつ致傷罪が成立すると、原則、実刑になってしまうということです。
しかも、強制わいせつ致死傷罪は親告罪ではありませんから、相手が刑事告訴しなくても、逮捕・起訴されてしまうことがあります。
わいせつ行為をしようとして、ふとしたきっかけで相手がケガをしてしまうと、思ってもみなかったような重罪が適用されてしまいます。
8、強制わいせつ罪で逮捕された場合の手続きの流れ
ナンパした女性や知り合いの女性などにわいせつ行為をして、強制わいせつ罪によって逮捕されてしまったら、その後、どのような流れになるのでしょうか?
加害者が逮捕されると、警察官から48時間以内に検察官のもとに身柄を送られます。
その後、検察官は24時間以内に裁判所に勾留請求をして、24時間以内に裁判所で勾留決定が行われます。
勾留期間は原則10日間ですが、10日間で捜査が終わらなかったときには、さらに10日間、勾留期間を延長することができます。そこで、起訴前の勾留期間は、最大で20日間となります。
逮捕期間を合わせると、起訴前の身柄拘束期間は最大で23日間です。
勾留満期になると、検察官が起訴処分にするか不起訴処分にするかを決定します。
強制わいせつ罪には略式裁判はないので、起訴されたら通常の刑事裁判となります。
身柄拘束を受けていた場合、裁判になると、保釈金を納めることにより、保釈を受けて身柄を解放してもらうことができます。
そして公開法廷において刑事裁判の手続が進められ、最終的に裁判官が有罪か無罪かを判断します。
有罪判決を受けたら懲役刑を適用されますが、執行猶予となれば、そのまま釈放されます。無罪となれば自由の身となり、前科がつくこともありません(前歴は残ります)。
9、強制わいせつ罪で逮捕されたときの対処方法
強制わいせつ罪の加害者が逮捕されてしまったら、とにかく早めに身柄を釈放してもらうことが重要です。
身柄拘束期間が長びくと会社に行くこともできず解雇される可能性がありますし、その間に不利な自白調書を取られてしまうおそれなどもあるからです。
そして、身柄を解放されるためには、被害者と示談交渉をして、示談を成立させることが重要です。
刑事事件では、被害者の被害感情が非常に重視されるからです。
被害者と示談が成立して被害者が被疑者や被告人を宥恕(ゆうじょ:被害者が加害者の行為を許容する感情を表すこと)していたら、処分を軽くしてもらうことができます。
また、強制わいせつ罪は、本人個人の性的自由を保護法益とするものです。
なので、強制わいせつ罪が、非親告罪となった現在でも、相手と示談が成立し、宥恕を得ることは、検察官の起訴不起訴の判断の大きな要素になっていると考えられます。
強制わいせつ罪が刑事事件になってしまったら、とにかく早く被害者に連絡を入れて、示談の話し合いをすすめることが重要です。
10、強制わいせつ罪で加害者と示談するには
前述の通り、強制わいせつ罪で前科をつけないためには、被害者と一刻も早く示談して被害届を取り下げる・宥恕(ゆうじょ)した旨の書面をもらう必要がありますが、逮捕された時、被害者の連絡先を知らないケースもあるでしょう。
被害者と連絡がつかなければ、示談交渉すらできません。
そのため、どうにかして被害者との連絡手段を手に入れなければなりません。
では、どうしたら被害者と連絡が取れるでしょうか?
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(1)被害者と直接連絡を取るのは難しい
逮捕された本人(またはその家族)が直接連絡先を聞いても、ほとんどの被害者は被疑者に自分の住所や連絡先などの身元を明かそうとはしません。
被害者の女性からすれば、わいせつ行為を行ってきた相手を警戒し、自分の連絡先を知られたくないと思うのは当然の心理です。
また、逮捕中に検察官に被害者の連絡先を聞いても、通常は教えてくれません。
そのため被疑者本人(またはその家族)が、直接被害者と示談を進めることは非常に困難です。示談交渉をしようとしても、「連絡先すら分からず示談のしようがない」というケースが多いのです。 -
(2)弁護士なら被害者と連絡が取れ、示談金が下がる可能性も
強制わいせつ罪で加害者が被害者と示談を進めるためには、弁護士に対応を依頼するのが最も効果的です。
弁護人であれば、被疑者やその他の関係者などに一切秘匿するという条件で、被害者の連絡先を聞き、被害者に連絡を入れて示談を進めることができます。
弁護士が間に入っていると、示談金の金額の交渉もしやすくなり、示談金額が下がる可能性もあります。
加害者本人が示談金を値切ると、被害者から「反省していない」と思われ、逆に交渉が難航してしまいがちですが、弁護士が適正な示談金額の相場を示したり、被疑者側の事情を説明したりすることにより、現実的な金額の示談金を設定することが可能となります。
示談が成立したとき、弁護士であれば、きちんと示談書や嘆願書を作成することができます。こうしたことで、不起訴処分を獲得しやすくなります。
万一、強制わいせつ致傷罪などで起訴されてしまったときにも、効果的に弁護活動を展開することにより、刑の減軽処分や執行猶予獲得を目指すことができます。
11、強制わいせつ罪で逮捕されたら、弁護士へすぐ相談を!
加害者側にとっては「少し度が過ぎてしまった」と思っている程度でも、被害女性にとっては重大な行為ということはあります。ナンパや飲み会などの席でわいせつ行為をしたことが、大きなトラブルになることが非常に多いものです。
そんなとき、被疑者の方をお手伝いできるのは弁護士です。
ベリーベスト法律事務所名古屋オフィスは、強制わいせつ罪や痴漢の迷惑防止条例違反、強姦罪(改正刑法においては強制性交等罪)などの性犯罪に積極的に対応している法律事務所です。各種の事件で刑事弁護人をつとめ、被害者と示談を成立させて不起訴処分を獲得してきた実績も数多くあります。
刑事事件は、事件発生からの対応スピードが勝負です。
どれだけ早く対応できるかで、前科がつくかどうかが大きく変わります。
ご自身やご家族が強制わいせつ罪で逮捕されたり、事情聴取されたりしてお困りの場合、一刻も早く当事務所までご相談ください。
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