逮捕されたらどうする? わいせつ物頒布罪を徹底解説!

2019年03月05日
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逮捕されたらどうする? わいせつ物頒布罪を徹底解説!

平成29年8月、愛知県警半田署は、わいせつなDVDを販売目的で所持していた男を逮捕したという情報が流れました。あなたは、わいせつ物頒布罪について詳しくご存じでしょうか。

近年、携帯やインターネットを通じて、個人が簡単に画像を投稿したり、オークションサイトで売買したりできるようになりました。自分でも意図せずわいせつ物頒布罪に該当する行動をしてしまっていることもありえます。

どのような行為がわいせつ物頒布罪にあてはまるのか、逮捕されてしまった場合の対処について、名古屋オフィスの弁護士が解説いたします。

1、わいせつ物頒布罪の罰則や定義とは?

わいせつ物を頒布、つまり不特定多数の人に配ることは、罪に問われる行為です。しかし、そもそもわいせつ物頒布罪に問われる条件などについてはあまり知られていないかもしれません。具体的には、どのような罪なのでしょうか。

  1. (1)刑法上の「わいせつ物頒布罪」

    わいせつ物頒布罪は、刑法175条において以下のように定められています。

    (わいせつ物頒布等)
    第175条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
    2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とす る。

    つまり、「わいせつな文書、図面、画像、電磁的記録などを頒布または公然と陳列」した場合、わいせつ物頒布罪の対象となります。

    刑法に記されている「電磁的記録」とは、主にコンピューターによる情報処理に用いられる記録媒体です。具体的には、メモリやDVD、ハードディスク内などの「人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録」のことです。こちらでわいせつな記録が頒布または公然と陳列された場合も、わいせつ物頒布罪の対象となります。

    「頒布(はんぷ)」とは、有償無償を問わず不特定または多数の人に対して交付・譲渡することを指します。

    「公然と陳列」している状態とは、不特定または多数の人がその内容を確認できる状況を指します。ホームページやSNS上にわいせつな文書や画像を載せることも、これに該当することになるわけです。

    なお、わいせつ物頒布罪で有罪になれば、条文どおり2年以下の懲役、もしくは250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役と罰金の両方の範囲で刑罰が科せられることになります。

  2. (2)「わいせつ」の判断は難しい

    判例上は、わいせつとは「徒(いたずら)に性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」ものとされています(最高裁判所 昭和26年5月10日)。

    わいせつかどうかの判断は、事実認定の問題ではなく、解釈の問題であり、明確な線引きを行うことは非常に難しいものです。その判断は、常に固定化されたものではなく、その時代の一般社会の良識・社会通念を基準として決められるものであると考えられています。

    世の中には官能小説なども多数販売されています。他方で、冒頭の事例のように、無修正のアダルト画像や動画などが、わいせつ物として規制の対象になるのは理解できるはずです。その区別のためにはさまざまな点を総合的に考慮した上で、裁判例も参照しつつ慎重な検討を要する場合もあり、専門的な深い知識と判断が必要となります。

    よって、あなたの行為や頒布・陳列したものが「わいせつ物」にあたるのではないかと不安な方は、これら判例などの知識と経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

2、わいせつ物頒布罪で逮捕! その後の対応はどうする?

わいせつ物頒布罪で逮捕されてしまった場合は、どのように行動したらいいのでしょうか。以下に解説いたします。

  1. (1)早期釈放されるために、迅速に弁護士に相談を

    わいせつ物頒布罪で逮捕されてしまった場合、身柄の拘束期間が長ければ長いほど事件のことが会社や学校などに伝わりやすく、社会復帰が難しくなる傾向があります。逮捕後72時間以内の釈放を目指し、できるだけ迅速に弁護士に相談することをおすすめします。

    まず、逮捕されると、警察で最大48時間の取り調べを受け、その後検察に送致された場合さらに最大24時間の取り調べを受けます。引き続き、身柄を拘束して捜査が必要と判断されると10日間の「勾留(こうりゅう)」が請求されます。勾留が裁判官により決定されると、10日間ものあいだ身柄を拘束されます。勾留が延長されると最長で20日間身柄を拘束され、仕事にも家庭にも戻ることができません。

    前科がつくことを回避したり、勾留期間を短くしたりできる可能性を高めるためにも、早急に弁護士に相談したほうがよいでしょう。

  2. (2)示談で解決できる場合もある

    わいせつ物頒布罪の場合、原則として特定の被害者は存在しないと考えられます。しかし、被写体の人物が被害者となるケースもあるでしょう。その際は、示談を行うことができます。

    被害者より警察に被害届が提出されていなければ、示談によって「微罪処分」となり自宅に帰ることができる可能性があります。警察に被害届が出された後であっても、示談が成立していれば、被害者が加害者に対して処罰することを望まないと判断されることもあるため、不起訴を獲得しやすくなります。

    わいせつ物頒布罪では、示談の有無や被害者の処罰感情が被疑者の処分に大きな影響を及ぼします。弁護士を介して、迅速に示談を行うことが重要です。

3、わいせつ物頒布罪で逮捕された場合、どのような弁護活動がなされる?

わいせつ物頒布罪で逮捕された被疑者に対し、弁護士が行うことができる弁護活動について解説します。

  1. (1)被疑者本人に反省を促す

    まずは、被疑者本人に十分に反省を促し、どうしてこの事件が起こってしまったか考えてもらいます。弁護士は、反省文を書かせるなど、反省を深める助言や指導を行います。

    わいせつ物頒布罪の場合は、特定の被害者がおらず示談ができない場合もあります。その際は特に、被疑者が反省し、再犯しないと誓約することが重要になります。

  2. (2)再犯防止の更生プログラムを提案

    再発防止に向けて、本質的な改善が実施されるよう、さまざまなサポートを行います。たとえば、二度と同じ罪を犯さないという更生の意欲を示すためにも、医療機関や専門機関において適切なカウンセリングや治療を受けるなどの更生プログラムを提案することもあります。

  3. (3)贖罪(しょくざい)寄付を行う

    被害者が存在しない事件の場合、「贖罪寄付(しょくざいきふ)」することで被疑者の反省を示すことができます。わいせつ物頒布等により不当に利益を得ていた場合、その利益分を寄付することで、裁判所から罪の償いをしたと認められ減刑される可能性もあるでしょう。

4、まとめ

インターネットが発達している現代、わいせつな画像の頒布、公然に陳列する行為は、容易に行えるようになりました。法律に反しているとは知らずに、わいせつ物頒布罪を犯してしまっていたかもしれないと気づいた方もいるかもしれません。

わいせつ物頒布罪に該当するのかどうかは、個人では判断が難しいものです。ひとりで悩むよりも、まずは早急に弁護士に相談することをおすすめします。また、逮捕されてしまったときは、将来にわたる影響を及ぼさないためにも、何よりも迅速な対応が重要です。

ベリーベスト法律事務所名古屋オフィスでは、刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、現状に適した弁護活動を行います。まずは気軽に相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています