パチンコ店で置き引きをして家族が逮捕? 弁護士が刑罰と対策を解説!
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スリや置き引きのような犯罪は、どこにでも起こりうるというイメージを持っている方も多いでしょう。名古屋の百貨店でも、被害に遭わないよう注意喚起しています。
しかし、ある日突然警察から連絡があり、自分の家族がパチンコ店で置き引きをして逮捕されたと知ったら、あなたはどうしますか?
被害者になることは想定して注意をしていても、まさか罪を犯したとして夫が逮捕されるなど、想像もしないことでしょう。
何かの間違いでは? と信じられない気持ちを抱きつつ、どうしたらよいか、これからどうなるのかと不安も大きいはずです。しかし、動揺している場合ではありません。刑事事件は時間との勝負なのです。
この記事では、置き引きで問われる罪やその罰則、逮捕後の流れや家族にできることについて解説していきます。
1、置き引きは、どんな罪になるのか
置き引きとは、他人の荷物などを持ち主の目が離れたすきに、持ち逃げする行為です。カバンはもちろんのこと、机の上に置いておいたパソコンやスマートフォンなども含まれます。
しかしどのような罪に該当するのかは、持ち去った荷物と持ち主の状態で判断が分かれます。まずはそこから解説していきましょう。
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(1)窃盗罪に該当する場合
他人の管理・支配している持ち物を盗む行為は「窃盗罪」にあたります。たとえば、持ち主のすぐ近くに荷物がある場合や、一時的に目を離した場合は、持ち主が「荷物を管理・支配している状況である」といえるため、これを持ち逃げすると窃盗罪が成立する可能性があります。
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(2)占有離脱物横領罪に該当する場合
一方、持ち主の管理・支配下にないものを持ち逃げする行為は、「占有離脱物横領罪」になります。「持ち主の管理・支配下にない」状態とは、たとえば、持ち主が荷物をうっかり置き忘れて遠くに離れた状況や、持ち物を落としすっかり忘れて所有する意思がなくなってしまっているような状況を指します。
このような忘れ物や落とし物を持ち逃げすると、占有離脱物横領罪となる可能性があります。 -
(3)窃盗罪と占有離脱物横領罪、どちらが適用されるかの基準
なお、窃盗罪か占有離脱物横領罪、どちらにあたるかについて、判断がつかないと思われる方も多いと思います。
両者の判断基準は、その物に対する「占有」が失われたといえるかどうかです。
この点については、①支配意思と②支配の事実、2つの考慮要素により判断されます。
①支配意思とは、物を事実上支配・管理しようとする意思のことをいいます。
たとえば、自宅や倉庫内に存在する物については、その場所を離れたとしても、その物を支配・管理しようとする意思がうかがわれることから、支配意思が肯定されることになります。
また、②支配の事実については、その物の特性、占有者の支配の意思の強弱、距離等による客観的・物理的な支配関係の強弱が、実質的基準として導かれます。
最高裁では、公園のベンチにポシェットを置いて、27メートル離れた状況で発生した置き引きについて、窃盗罪が成立すると判断しました。27メートルという距離は、まだ持ち主が荷物を「管理している状況である」ということが理由として挙げられています。
パチンコ店での置き引きについても、被害者がすでに遊び終えて帰宅していたか、トイレに行っていただけなのか等の事情により、成立する犯罪が変わってくる可能性があります。
2、置き引きで受ける刑罰とは
置いてあるものを持ち帰るという行為は、一見するとそれほど重い罪にならないのではと思うかもしれませんが、間違いなく犯罪です。前述したように、状況に応じて窃盗罪や、占有離脱物横領罪が成立します。ここでは窃盗罪と占有離脱物横領罪の刑罰について解説します。
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(1)窃盗罪の刑罰
「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられます。
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(2)占有離脱物横領罪の刑罰
「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金もしくは科料」が科せられます。
こうして見ると、決して軽い罪でないことがわかります。
窃盗罪のほうが被害者に対する権利侵害の程度が大きいため、罰則も厳しくなっています。
また、前科がある場合は刑事処分も重くなりますし、執行猶予期間中だった場合には執行猶予が取り消され、重い実刑判決を受ける可能性もありますので、注意が必要です。
3、逮捕後の流れを解説
置き引き行為は現行犯で逮捕される場合もありますが、盗んだキャッシュカードで現金を引き出そうとして、防犯カメラで特定され後日、逮捕されることもあります。
ここでは、もし逮捕されてしまった場合の手続きの流れについて見ていきましょう。
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(1)取り調べ
逮捕されると、被疑者は警察によって最長48時間の取り調べを受けます。その後、身柄は検察官の元へと移され、引き続き取り調べを受けることになります。検察官は、これ以上身体拘束(勾留と言います)を伴う取り調べを続ける必要があるか、24時間以内に判断します。
逮捕から検察官の取り調べまでの最長72時間は、たとえ家族であっても被疑者との面会はできません。この状況で被疑者と会うことができるのは、弁護士だけです。 -
(2)勾留
検察官による取り調べが24時間では終了せず、逃亡や証拠隠滅をする可能性があると判断された場合は、検察官の請求に基づき、裁判官が令状を発付して、刑事施設における身体拘束が続くことがあります。これを勾留と言います。期間は原則10日間です。しかし、状況によってはさらに最大10日間延長され、最大20日間となることもあります。もし20日間の勾留となった場合、逮捕から23日もの間身体拘束されることになりますので、逮捕された事実を勤務先に知られてしまい、懲戒免職など社会的に厳しい処分を受ける可能性があります。
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(3)起訴
検察官による取り調べが終了すると、被疑者に対して起訴か不起訴が決定されます。不起訴になれば即釈放されますが、起訴された場合には刑事裁判に移り、判決を受けることになります。
置き引きで初犯の場合は、示談が成立すれば不起訴処分になる可能性もあり、仮に起訴されても略式裁判で終了することもあります。
略式裁判とは、簡単に説明しますと、検察官の提出する書類に基づいて審理が行われ、最終的に略式命令が発せられ、罰金などを支払い終了する刑事手続きです。ただし、略式であっても有罪は有罪であり、前科がつくことは免れません。
4、置き引きで捕まったら弁護士に相談を!
家族が置き引きで逮捕された場合、残された家族にできる最大の援助は、できるだけ早く弁護士に相談することです。以下、その理由を述べていきます。
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(1)弁護士ならば、面会NGの期間でも被疑者と会える
前述したように、逮捕直後の72時間は家族でも面会ができません。しかし、弁護士ならば取り調べに対する適切なアドバイスをするために、面会することができます。また、アドバイスを受けることで、警察の取り調べに対しても落ち着いた対応ができれば、早期釈放の可能性も期待できるでしょう。
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(2)早期釈放の働きかけができる
勾留は最大で20日間にもおよぶため、心身への影響が大きいものです。また、勤める会社などにも逮捕の事実が知られる可能性が高くなりますので、できるかぎり避けたいところです。そこで、証拠隠滅や逃亡の可能性がないことを警察や検察官に働きかけ、早期釈放を促すことも弁護士の役割のひとつです。
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(3)示談交渉
不起訴処分を求めるには、「被害者との示談成立」が不可欠な要素となってきます。検察官は、示談が成立していれば反省の意と被害の回復が図られたとみなし、不起訴処分の判断材料とする傾向があるためです。
被害者は、加害者から直接示談交渉の連絡があった場合、拒否する可能性が高いでしょう。しかし、法律の専門家で第三者である弁護士が介入することで、示談交渉に応じてもらえる可能性もあります。
ただし、示談が成立したから必ず不起訴になるわけではありません。たとえば、前科がある・反省が見られない・常習犯であることから、起訴される場合もありますし、量刑が考慮されない可能性もあります。
弁護士と相談の上で、どのように示談交渉を進めるべきなのか、判断することが大切です。
5、まとめ
置き引きは、実は持ち主と持ち去った物との関係で罪状が変わり、刑の重さも変わってくる犯罪です。置き引きで家族が逮捕されたとなったら、どうしたらよいかわからず慌ててしまうことでしょうが、まずは、勾留や起訴を回避できるように弁護士に相談することがベストな支援方法といえるでしょう。
家族が置き引きで逮捕されてお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご連絡ください。刑事弁護の経験豊富な弁護士が、早期釈放を目指して最善を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています