車上荒らしはどんな罪? 量刑や逮捕後の流れを弁護士が解説
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平成30年度の都道府県別・車種別保有台数によると、愛知県は全国でもっとも車の保有台数の多い県です。名古屋市内でも、車を見る機会は多いでしょう。
もし、友人とともに車上荒らしをし、現金を盗んでしまった場合、犯行を実行に移した加害者は、どのような罪に問われるのでしょうか。
捜査機関から犯罪の疑いを受け捜査の対象となった加害者は「被疑者」と呼ばれ、基本的には、どの刑事事件であっても同じプロセスをたどることになります。
今回は、車上荒らしについて、逮捕されるまでの流れやどのような刑罰を受けるのかについて、弁護士が具体的に解説します。
1、車上荒らしは窃盗罪?
車上荒らし(車上ねらい)とは、自動車等の積み荷や、車両内から現金や物品を盗むことをいいます。
駐車している車両内や積み荷などから現金や物品などを盗んでしまった場合、窃盗罪に問われます。窃盗罪とは、人の財物を窃取することで成立する犯罪をいいます。
刑法235条に規定されており、他人の財物を窃取した場合、10年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます。量刑は、車上荒らしによって与えた被害額や計画性によって異なります。
たとえば、車から高額な宝石や車内パーツを盗んだ場合は被害額が大きいといえますし、用意周到に車上荒らしのために道具などを準備したうえで車上荒らしを実行した場合には、犯行が計画的であるとして、刑罰が重くなる可能性が高いです。
ちなみに、窃盗罪は未遂であっても罪に問われます。たとえば、車上荒らしをしようと駐車している車の鍵をこじ開け、車両内から物を盗ろうとしたタイミングで車の持ち主に見つかり、何も盗らずに逃げ去った、という場合です。このような場合であっても、自動車から他人の財物を盗もうとしたことは明らかであるため、窃盗未遂罪が成立するとした判例もあります。
2、逮捕されるパターン:後日逮捕される可能性はある?
逮捕されるパターンとして、現行犯逮捕と後日逮捕(通常逮捕)が有名です。具体的には、どのような違いがあるのでしょうか。
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(1)現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、車上荒らしの犯行その場で逮捕されることです。車上荒らしの犯行現場を警察官に目撃され、その場で取り押さえられた場合などが現行犯逮捕にあたります。車上荒らしによる被害が多発している場所では、警察官の張り込みによって現行犯逮捕されることもあります。
現行犯逮捕の要件が備わっている限り、警察官は逮捕状を用意しなくても、犯人を逮捕できます。逮捕後は警察署に連行され、目撃者の証言などから加害状況を整理していくことになります。 -
(2)後日逮捕(通常逮捕)
車上荒らしをしたその場では見つからずに済んだとしても、逮捕されないわけではありません。監視カメラによる映像や、現場に残された証拠などによって、後日に逮捕される可能性があります。
後日逮捕(通常逮捕)は、警察が逮捕状を用意し犯人を逮捕します。逮捕されるまでの期間については、監視カメラや周辺の目撃者情報などによる捜査の進み具合によって変わってくるでしょう。
3、逮捕された後の流れ
車上荒らしによって逮捕された場合、その後の手続きはどのように進むのでしょうか。
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(1)取り調べ
逮捕され警察署に連行されると、担当刑事から犯行内容について取り調べを受けます。取り調べでは、犯行に至るまでの状況や動機について質問されます。担当刑事に話した内容は、供述調書に記録されます。
取り調べ中に曖昧な伝え方やその場を取り繕うようなうその発言をしてしまうと、事実と異なる供述調書となってしまう可能性があります。
事実と異なる供述調書に署名や捺印してしまうと、後日「事実とは違います」と伝えても、その供述調書をなかったことにするのは難しいでしょう。取り調べの際は、注意してください。供述調書に誤りがあった場合は、内容の訂正を要求することや署名、押印を拒否することができます。
警察は、逮捕から48時間以内に、事件内容と被疑者を検察に送る(送致)かを決定します。 -
(2)勾留
検察に送られると、検察官は送致から24時間以内に、勾留するかを判断します。勾留とは、被疑者を刑事施設に留置し拘束することです。
勾留が認められるための要件は、①被疑者が定まった住居を有しないとき、②被疑者が、厳罰を逃れるために車上荒らしに使用した工具やこれまでに盗んできた物品(証拠)を隠すなど罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由があるとき、③被疑者が実際に逃亡しまたは逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときです。
勾留が決定すると、最大10日間、勾留が延長されると、合計で最大20日間(逮捕からの時間を含めると最大23日間)もの間、留置施設で過ごすことになります。そうならないためには、逮捕直後から行動を起こすことが重要です。
弁護士に依頼することで、身柄の拘束を解いてもらえるよう、検察や裁判所に働きかけたり、取り調べにどのように答えるべきかなどのアドバイスを受けたりすることが可能です。 -
(3)起訴
検察官が罪を立証するだけの証拠があり、かつ、刑事裁判により刑罰を下す必要があると判断した場合は、起訴されることになります。起訴されると、被疑者から被告人となり、略式手続きによる罰金でなかった場合には、引き続き身柄拘束が継続されますが、この場合にも、保釈手続きを申請できるようになります。保釈申請が認められた場合は身柄の拘束が解かれますが、認められなければ、身体拘束は判決を受けるまで継続されます。
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(4)裁判
検察官により起訴されると裁判が開かれます。裁判では、弁護人が証人として取り調べ請求をすれば、身元引受人となる家族がこれまでの家庭環境や今後の監督の仕方について証言することがあります。
日本の検察は、証拠がそろっているなど、確実に有罪であると判断できる事件のみを起訴する傾向にあるため、起訴された場合、有罪率は99%と言われています。
まずは起訴されないように行動することが、刑事事件では重要と言えるでしょう。たとえ起訴されたとしても、弁護士がついていれば、より刑罰を軽くできるように弁護活動を行うことが可能です。
4、示談の重要性
示談とは、車上荒らしによって生じた被害について、示談金を用意し当事者同士で和解することです。窃盗事件において示談により被害が回復されているか否かは重要であり、もし車上荒らしをしてしまったのであれば、被害者と示談交渉をすることをおすすめします。
車上荒らしをしてしまっても、起訴されるよりも前に示談により被害者との和解が成立していれば、被疑者が十分に反省していると判断され、不起訴になることがあります。不起訴になれば、当然有罪にもなりませんので、前科をつけずに釈放されることになります。
刑事事件の示談交渉は、弁護士に交渉を代行依頼した方がスムーズに進むでしょう。依頼するには弁護士費用が必要となりますが、特に車上荒らしでは、加害者が被害者の連絡先を知らない場合が多いと考えられます。弁護士であれば、被害者の連絡先がわからない状況でも、交渉できる可能性が高くなります。
そして、示談交渉を進めるには、被害者と法的な契約を交わすことになるため、示談書の作成が必要となります。弁護士に相談すれば、法的に誤りのない示談書を作成することができます。
もうすでに起訴されてしまっている場合においても、示談が成立していることによって、有罪となったとしても執行猶予や罰金刑など、比較的軽度な刑罰を下される可能性が高くなります。
5、まとめ
今回は、車上荒らしをしてしまった場合、どのような罪となってしまうのか、量刑や逮捕後の流れについて解説しました。車上荒らしをしてしまい相手に損害を与えてしまったのであれば、弁護士に相談することをおすすめします。
刑事事件の解決経験が豊富な弁護士に、示談交渉について相談してみませんか。
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1日でも早く被害者と示談交渉を進め、謝罪の思いを伝えられるよう、お手伝いさせていただきます。
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