投資詐欺で逮捕!? そのとき家族がとるべき対応とは
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老後の資金などを目当てに、117億円という大金を外国為替証拠金取引(FX)への投資目的と偽りだまし取ったとして逮捕・起訴された事件では、2017年3月、名古屋地方裁判所にて、懲役14年の判決が下りました。そのほかにも、保管金の没収と追徴金が言い渡されています。
投資が身近になると同時に、「投資詐欺」に遭う危険性もぐっと増しているといえます。投資詐欺は多額の出資を集めるために、「もうけ話」を広めて仲間を増やします。本人も自覚しないうちに、加害者側として投資詐欺に巻き込まれ、逮捕される事態もありうるのです。
こつこつとためてきた他人の資産を詐取する投資詐欺は、懲役刑に処されうる重大な犯罪です。今回は、投資詐欺について、また逮捕された場合にとるべき対処を名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、投資詐欺とは
まず、投資詐欺は具体的にどのような罪に問われるのでしょうか。投資詐欺は、端的にいえば「うまい投資話を持ち掛けて出資をさせ、金銭を授受する」というものです。これは刑法において詐欺罪に該当します。
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(1)投資詐欺で問われる罪
詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と規定されています(刑法第246条)。詐欺罪として犯罪が成立するのは、人をだますことによって、だまされた人が、お金や金銭的な価値があるものを提供してしまった場合などです。振り込め詐欺などがイメージしやすいでしょう。
刑法で定められた詐欺罪の刑罰は、10年以下の懲役です。同時に、詐欺行為によって得た利益は没収、もしくは追徴されることがあります。罰金刑がないため、初犯であっても執行猶予がつかなければ、即刑務所に収監される可能性があるのです。 -
(2)投資詐欺の主な手口
では、具体的にはどのような手口が横行しているのでしょうか。
代表的なケースに「未公開株の販売」があります。未公開株とは、非上場会社の株式のことをいい、証券取引所では取引されません。創業者やその家族など、ごく一部の人間が所有していることが多いものです。その株を、実際にはその予定がないにもかかわらず「将来上場し、必ず値上がりする」とか、「関係者にコネがあり、特別に販売する」などと虚偽の説明をし、販売する手口です。
そして自転車操業による出資金詐欺があります。最初にこの手法を行った詐欺師の名前をとり、ポンジスキームとも呼ばれます。出資者を募り、出資金を集め、出資金をそのまま配当に回すことで、投資運用をしていないにもかかわらずあたかも投資がうまくいっているように見せかける手法です。しばらくは実際に配当が支払われ、相手を信じさせてさらに出資を増やしたり、出資者が口コミで増えたりしますが、数年で破綻します。
投資詐欺は、人から人へもうけ話が拡散することで大規模化します。首謀者でなくとも、もうけ話に誘った人物も、取り調べの対象となる可能性は大いにありえるでしょう。
2、投資詐欺で逮捕! 逮捕後の流れと家族がとるべき行動とは
では、家族が投資詐欺で逮捕されてしまったらどうすればいいのでしょうか。
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(1)すぐに弁護士に相談し、勾留を阻止する
逮捕された場合は、逮捕後72時間以内の行動が非常に重要です。迷わず、すぐに弁護士に相談してください。
犯罪をおかした疑いがあり、捜査の対象とされたものは「被疑者(ひぎしゃ)」と呼ばれます。逮捕後、被疑者は警察に拘束されて取り調べを受けます。そこで疑いが晴れなければ、48時間以内に検察に送致され、さらに24時間以内、取り調べを受けることになります。
引き続き、身柄拘束を続けての捜査を行う「勾留(こうりゅう)」が必要だと検察官が判断した場合、裁判官に対し「勾留請求」を行います。裁判所に勾留が認められると、最長でさらに20日間もの期間、身柄が拘束され仕事にも学校にも行くことができなくなります。仕事や人間関係への影響も避けられないかもしれません。
まずは、この勾留を阻止し、いち早く釈放されるよう、逮捕直後から弁護活動を開始することが肝要です。
検察官がこれ以上身柄を拘束する必要がないと判断すれば、逮捕期間である72時間内で釈放され「在宅事件扱い」として自宅に帰り、以降は要請に応じて出頭し捜査に協力することになります。 -
(2)勾留された場合、準抗告を行う
しかし、投資詐欺は組織的な犯罪であることも多いものです。全容解明のために相応の時間がかかる場合、証拠隠滅や口裏あわせを防ぐために、勾留請求が認められてしまうケースもあるでしょう。
勾留が決定した場合も、弁護士に依頼することで、準抗告という不服申し立てをすることができます。準抗告によって、その勾留決定の判断が正しかったのかどうかを、3人の裁判官の合議体でもう一度判断してもらうことができます。 -
(3)不起訴獲得のための活動を行う
準抗告が棄却された場合は、勾留満期での不起訴獲得・釈放を目指します。
不起訴処分になれば、前科がつきません。もちろん、無罪判決の場合にも前科はつきませんが、刑事裁判では、起訴された場合、99%以上が有罪になると言われています。そのため、まずは不起訴を目指して、証拠集めなどの弁護活動を行います。
不起訴処分には、被疑者が犯罪を行ったことの立証が困難である場合の「嫌疑不十分」、被疑者が犯罪を行ったと認められない「嫌疑なし」、犯罪を行ったが事情を考慮して起訴する必要がないとする「起訴猶予」があります。 -
(4)保釈の準備を行う
起訴されたのちは、被疑者は「被告人」と呼ばれる立場となり、刑事裁判によって裁かれることになります。刑事裁判は公開されているため、誰でも傍聴が可能です。起訴が決まると、原則、刑事裁判が終わるまで引き続き身柄を勾留されることになります。
そこで、起訴が決まったときは、速やかに「保釈請求」をして裁判が解決するまでの間自宅で過ごすことができるように働きかけます。詐欺容疑を認めていて、起訴を逃れられない状況のときは、あらかじめ「保釈(ほしゃく)」を認められたときのために必要な材料と保釈金を準備する必要があるでしょう。保釈とは、裁判所の許可を得て保釈金を預け、身柄の拘束を解いてもらうことを指します。もちろん裁判への出席は必須です。
3、投資詐欺事件を弁護士に依頼するメリット
依頼を受けた弁護士は、どのような弁護活動を行うのかについて、解説します。
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(1)逮捕後の接見
逮捕されたあとの最大72時間は、家族であっても面会することができないケースがほとんどです。一方、弁護士であれば、自由に、何回でも、警察官などの立ち合いなしの接見が認められています。
被疑者には黙秘権が与えられますが、全てを黙秘すると捜査が行き詰まり、身柄拘束が長引く可能性があります。弁護士と相談することで、取り調べに対して不利にならない供述範囲などのアドバイスを受けることができます。
今後、どのような方針で自分の意見を主張していくか被疑者と決定したり、弁護士を通じて被疑者の状況を家族にいち早くお知らせしたりすることが可能です。 -
(2)捜査機関への対応
警察など捜査機関との連絡も弁護士が間に立ち、代わりに行います。仕事をされている方は即時の対応が難しいこともあるでしょう。警察からいつ連絡が来るかわからないという精神的負担を軽減することもできます。
また、刑事事件や投資詐欺の捜査に関して経験のある弁護士であれば、捜査機関の使う専門用語もすぐに理解できます。応対を弁護士に依頼したほうが事態の進展がスムーズに進むでしょう。 -
(3)示談交渉
示談の成否は、起訴・不起訴の判断に大きな影響を及ぼすため、非常に重要です。起訴を免れるためには、示談交渉も弁護士に依頼するとよいでしょう。
示談交渉では、謝罪と賠償を行い、被害者からは、罪を許すという意味を持つ「宥恕(ゆうじょ)の意思」を示談書にて示してもらうよう働きかけます。
投資詐欺の示談においては、被害総額相応ないしそれ以上の返還を迫られることになります。もっとも、現状の資産を勘案すると難しいこともあるはずです。示談交渉の経験が豊富な弁護士であれば、相場に応じた減額の提案や、無理のない返済方法にできるよう、被害者と交渉します。 -
(4)不起訴獲得のための活動・裁判時の弁護
「だますつもりではなかった」と被疑者がやみくもに主張するだけでは、検察を説得することは難しいでしょう。
弁護士は、被疑者が被害者に伝えた情報が、だますための情報ではない根拠や、行動記録などの客観的な証拠を集め、事件の内容と照らし合わせた意見書を作成します。主張が合理的であることを検察官に伝えて、不起訴処分になるよう効果的に働きかけます。
起訴された場合には、引き続きこのような主張を裁判において行います。身の潔白を示すための証拠は、時間がたつほど集めることが難しくなるため、逮捕直後からの証拠収集が重要です。将来に影響を残さないためにも、刑事事件の経験豊富な弁護士にいち早く相談することを強くおすすめします。
4、まとめ
投資詐欺は思っているよりもずっと私たちの身近に潜んでいます。そして、仮に家族や身近な方が投資詐欺で逮捕されてしまったとしたら、初動を誤ると、今後の人生に大きな影響を残しかねません。
刑事事件の経験と投資詐欺に関する知見が深い弁護士に依頼することで、最悪の事態を回避できる可能性が高まります。家族が投資詐欺で逮捕された、または逮捕されるおそれがある場合は、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスへご相談ください。状況に応じた最善策を提案します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています