車をパトカーにぶつけたら公務執行妨害罪! 逮捕後や他の犯罪との関係を解説
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平成30年4月、名古屋市内の駐車場で、乗っていた車を発進させてパトカーにぶつけた男が、公務執行妨害罪の現行犯で逮捕されました。男は、他人の駐車場に無断駐車しており、通報を受けて臨場した警察官が職務質問をしようとしたところ、車を急発進させたと報道されています。
あなたの子どもが公務執行妨害罪で逮捕されたと聞いたら、驚くとともにどうしたらよいのか悩んでしまうのではないでしょうか。逮捕後にどうなるのか、家族として何をすべきなのかなどを、的確に知っている方は少ないだろうと考えられます。
今回は、警察官への車を使った公務執行妨害罪を例に挙げて、公務執行妨害罪の概要や逮捕後にどうなるのかについて、他の罪との関係も含めて解説します。
1、公務執行妨害罪の概要
公務執行妨害罪は、刑法第95条第1項に定められた、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加える」犯罪です。
ここで示す「公務員」は、警察官はもちろん、市役所職員、税務署員、消防署員、公立学校の教員など、多岐にわたります。また、立場上「公務員」ではなくても、公務員の職務をサポートする立場の人や、公務を委託される民間業者の職務を妨害する行為も、公務執行妨害罪に問われることになります。
条文に「職務を執行するに当たり」とあるように、職務中の公務員に対する妨害行為が対象となります。たとえば非番中の警察官を殴っても、公務執行妨害罪にはなりません。もっともこの場合には、警察官個人への暴行罪や傷害罪などに問われるでしょう。
なお、公務執行妨害罪の被害者は、「公務員個人」ではなく「公務」そのものです。国として必要とする業務を妨害したという行為について罪に問われることになるため、示談すべき相手が存在しません。
そのほかの被害者がいる犯罪では、示談が成立すると、被害者が許しているとして、長期の身柄拘束や起訴を回避できる可能性があります。しかし、公務執行妨害では、示談すべき相手が国となるため、示談はできません。他の刑事事件と大きく異なる特徴です。
2、車をパトカーにぶつけるとなぜ公務執行妨害なのか
公務執行妨害罪は、職務を遂行中の公務員に「暴行や脅迫」を加えると成立します。
これを聞くと、「車をパトカーにぶつけただけでは暴行や脅迫にあたらない」「少しぶつけただけだから職務を妨害していない」などと主張したくなるかもしれません。
一般的に「暴行」といえば、殴る蹴るなど、相手の身体に直接触れた暴力行為をイメージするものです。しかし、公務執行妨害における「暴行」は、さらに幅広く解釈されています。公務員の身体に直接向けられたものに限らず、間接的な暴行でも、公務執行妨害に該当することがあるのです。
たとえば、白バイを蹴る、警察官の足元に物を投げつけるなどの行為も暴行とみなされます。職務質問中に自身の車をパトカーにぶつける行為も、車同士の接触とはいえ、公務執行妨害罪における暴行にあたるのです。
さらに、犯罪が成立するには職務を現実に妨害していることまで求められていません。つまり、「職務を妨害されるおそれがある」と判断されたら、逮捕される可能性があるということです。
なお、単純に交通事故を起こしてしまった相手がたまたまパトカーだった場合には、公務執行妨害の罪を問われることはありません。万が一、実際に職務の妨害が発生してしまったとしても、故意でなければ単なる交通事故として処理され、違反があれば道路交通法違反などで処理されることになります。
冒頭の事件のように、職務質問中に車をあてたケースとは状況が異なります。
3、公務執行妨害で逮捕された後はどうなる?
公務執行妨害罪で逮捕されると、48時間を限度に警察の取り調べを受け、必要に応じて検察へ送致されます。送致から24時間以内に、引き続き身柄拘束をして取り調べを行う「勾留(こうりゅう)」を行うかが判断され、検察が必要と判断したときは裁判所へ「勾留請求」を行います。裁判所に勾留が認められれば、身柄の拘束が続きます。勾留は原則10日間、延長10日間です。
検察は、勾留期間中に捜査を進め起訴するか、不起訴とするかを決定します。起訴となれば、99%が有罪と言われており、前科がつく可能性が高いです。不起訴のときは、身柄が解放され、前科がつくことはありません。
つまり、逮捕から起訴・不起訴の決定まで、最長で23日間、身柄を拘束される可能性があるわけです。この間、本人が通勤・通学することはできませんので、家族が対応に追われるほか、会社や学校から何らかの厳しい処分を受けることも考えられます。
なお、公務執行妨害で逮捕され有罪になると、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」の範囲内で処罰を受けます。
警察官への公務執行妨害は、相手が警察官であることで証拠隠滅や逃走のおそれが少ないことから、身元引受人がいる軽微な事件であれば、早いタイミングで身柄は釈放され「在宅事件扱い」となることもあります。その際も、身柄を釈放された後も捜査が続くため、捜査機関からの呼び出しに応じる必要はありますが、釈放されれば日常生活を送ることは可能です。
4、公務執行妨害罪では済まないことも
そもそも公務執行妨害は、「暴行や脅迫」を伴う犯罪であることから、複数の罪を問われるケースが多い犯罪です。たとえば警察官を殴って怪我をさせたケースであれば、公務執行妨害のほかに、傷害罪に問われることになります。ただし、公務執行妨害罪が成立するときは、その手段としてなされた暴行・脅迫は、別に暴行罪や脅迫罪は成立しません。
さらに、車を使って公務執行妨害を行ったケースでは、職務妨害にとどまらず、公務員の命を脅かす危険があることから、より重い罪に問われることもあるでしょう。たとえば、殺意をもって警察官の元へ車を発進させれば、殺人未遂罪に問われる可能性があります。実際に、平成27年5月、職務質問中の警察官へ車をあてた男が、殺人未遂の容疑で逮捕されています。
ひとつの行為でふたつの罪に問われるケースでは、より重い法定刑が設定されている罪を中心に問われることになります。つまり、公務執行妨害と殺人未遂罪で有罪になれば、殺人罪の法定刑が適用され、「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」となります。
また、冒頭の事件のように、パトカーに車をあてて逃走すれば、器物破損罪やひき逃げにも該当する可能性があります。「ひき逃げ」という罪名はありませんが、自動車運転処罰法違反や道路交通法違反として罪に問われることもあり、以下のような処罰が下される可能性があります。
- 危険運転致死傷罪……相手が負傷した場合15年以下の懲役、死亡した場合1年以上の懲役
- 救護義務違反……10年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 報告義務違反……3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金
5、公務執行妨害罪で逮捕されたときの対処法
公務執行妨害罪では、前科がない、反省しているなどの事情があれば、不起訴処分で済むこともあります。不起訴になれば前科がつきません。
家族としては、本人に反省を促し、再犯の可能性が低いとアピールすることがひとつの対処法となります。また、ご家族が身元引受人になることで本人の身元が明らかになりますので、逃亡のおそれがないとされ、早期の身柄釈放につながりやすくなるでしょう。
ただし、逮捕後72時間は、家族であっても原則本人との面会が制限されます。たとえ家族でも、直接、反省を促すように伝えたり、説得したりすることができません。法的知識を持たない本人がむやみに否認することで、身柄拘束の期間が長引いてしまうおそれがあります。それに伴い、会社や学校への悪影響も懸念されます。
これを避けるためには、逮捕後速やかに弁護士に相談し、対策を講じる必要があるでしょう。弁護士であれば、家族が面会できない期間でも、自由な接見が許可されています。逮捕された本人に取り調べに臨む際の注意点をアドバイスできるほか、反省を促す、本人の反省の気持ちを形にする方法を伝えるなど、早期の身柄釈放に向けた具体的な働きかけを行えます。
また、公務執行妨害罪の成立は、公務が適法に行われていることが大前提であると考えられています。仮に、警察官による違法な捜査から抵抗した結果、公務執行を妨害したとみなされたとしても、本来、違法捜査を原因として公務執行妨害罪は成立しません。適切な公務をなされていなかった点を主張することによって、無罪となることもあるでしょう。
捜査の違法性を立証することは難しい面が大きく、家族だけで対応することは非常に困難であると考えられます。しかし、刑事事件の対応経験が豊富な弁護士であれば、無罪を勝ち取る可能性も期待できるでしょう。
いずれの場合も、できるだけ早いタイミングで、弁護士を依頼することをおすすめします。
6、まとめ
家族が公務執行妨害罪で逮捕されたケースを想定し、公務執行妨害罪の概要や逮捕後の流れ、他の犯罪との関係性などを紹介しました。
前述のとおり、公務執行妨害罪では示談ができませんし、逮捕後すぐに本人と面会できるわけでもありません。逮捕された本人のために、ご家族だけでできることは、非常に限られているといえるでしょう。
少しでも早く弁護士に相談し、今後の対応を講じることによって、事態の悪化を防ぐ結果を導きます。ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士も全力でサポートいたします。公務執行妨害で家族が逮捕されてお困りであれば、まずはお気軽にご連絡ください。
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