空き家に侵入して金品を盗んだら窃盗罪? 逮捕の可能性や今後の対応を解説

2018年10月09日
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空き家に侵入して金品を盗んだら窃盗罪? 逮捕の可能性や今後の対応を解説

平成29年8月、名古屋市内の空き家に男女3人が侵入して金品を盗もうとし、見回りに来ていた空き家所有者の男性と鉢合わせて逃走する事件が起こりました。男女らは翌年逮捕されましたが、男のひとりは別の窃盗罪を起こして刑事裁判で争っている中、保釈中の身分で犯行に及んでいた……という事例があります。

管理者が住んでいない空き家であっても、金品を奪えば窃盗罪になります。たとえ何も盗んでいなくても窃盗未遂や住居侵入罪に問われる可能性があるでしょう。

この記事では名古屋オフィスの弁護士が、窃盗罪の概要を解説します。さらには、空き家で窃盗をした場合の逮捕の可能性や今後の対応についても触れていきます。

1、窃盗罪とは?

窃盗罪とは、刑法第235条に定められている罪のひとつで、他人の財物を窃取することで問われる罪です。本来の占有者の意志に反し、自分や第三者のモノとして「財物(ざいぶつ)」を移転させることを指します。財物とは、刑法における法律用語で、形ある金品をはじめとした財産上の利益がある所有物すべてが該当します。なお、形はありませんが、刑法第245条によって「電気も財物とみなす」とされます。

また、窃盗罪の成立には、「故意」と「不法領得の意思」があることが必要とされています。具体的には、以下のような状況があれば窃盗とみなされるということです。

  • 他人のモノを窃取すると認識・認容していること
  • 窃取物を自分の所有物として扱い、経済的利益を得ようとする意思がある


簡単にいえば、わざと他人のモノを盗み、自分の自由に扱うことで成立する犯罪が「窃盗」となります。盗む際に暴行を働いた際は、さらに罪が重い「強盗」とみなされることもあります。

2、犯罪意識が薄くても罪になる

窃盗罪はさまざまな手口があります。万引きやひったくり、スリ、車上ねらいなど、すべてが呼び方を問わず、「窃盗」罪に当たります。対象物における経済的価値の大きさは関係ありません。

たとえば、次のような行為も窃盗罪に該当します。

  • 急に雨が降ったので店の出入り口にあった他人のビニール傘を無断で持ち去り使う
  • 管理者の許可なく携帯電話の充電する


個々の倫理観によって、「これぐらいは大丈夫」と判断してしまう行為も、当然のことながら「窃盗」の罪に問われます。また、電車の網棚や待合室のベンチなどに忘れ物が置いてあり、それを勝手に自分のモノにした場合は、「遺失物横領罪」が該当しますが、持ち主が離れていた時間や距離に応じて窃盗罪が認められることもあるでしょう。

冒頭で登場した空き家での窃盗についても、「現に使っている人がいないし、大丈夫だろう」と犯罪意識が低くなりがちですが、れっきとした窃盗罪になります。

3、窃盗罪の量刑

窃盗罪の罰則は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。窃盗罪で逮捕され有罪になると、この範囲内で罰が言い渡されます。量刑の重さは事件の様態によって異なりますが、初犯で悪質性が認められない、または被害額が少額であるなどのケースでは、不起訴処分や罰金刑となることもあるでしょう。

空き家での窃盗では、何も盗まずに未遂に終わったケースでも「窃盗未遂」罪に問われるほか、住居侵入罪として「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」の刑罰も受ける可能性があります。さらに罪が重くなると考えておいてよいでしょう。

なお、過去10年の間に窃盗罪の懲役(執行猶予を含む)の前科が3回以上ある場合は、常習累犯窃盗に該当するため「3年以上20年以下の懲役刑」に加重されます

4、空き家での窃盗で証拠となるもの

空き家には、通常、人がいません。だれかが住んでいれば空き家ではないためです。よって、空き家での窃盗においては、隣家の住民や通報を受けた警察官による現行犯逮捕を除けば、あとになって逮捕される可能性はやや低い傾向があります。空き家の管理者がモノを盗まれたことに気づきにくいことがあり、そもそも事件化されないこともあるでしょう。

しかし、「空き家だから見つからないだろう」と安易に考えて犯行に及んでしまうと、証拠によって後日、通常逮捕される可能性は十分にあると考えられます。

一般的に窃盗罪の証拠となりえるものは、以下のとおりです。

  • 防犯カメラの映像
  • 被害者や目撃者の証言
  • 別の場所で見つかった被害品に付着している被疑者の指紋、DNA
  • 被疑者の供述


空き家での窃盗の場合、たとえば冒頭の事例のように、空き家所有者自身が見回りにくるケースが考えられます。それ以外にも、自治会や民間の業者が所有者からの依頼で見回りを強化していることもあるでしょう。

所有者の防犯意識が高く、防犯カメラの映像があるなどすれば、空き家での窃盗の証拠となりえます。高齢化が進む日本では、空き家が社会的な問題となるとともに、犯罪の温床になりえるとしてリスク管理の重要性が叫ばれています。所有者の方針や周辺地域の取り組み次第では、証拠が出ないとは限らないのです。

過去、空き家での窃盗を行ったものの、そのあと特に何もないからといって、安心はできないといえるでしょう。

5、窃盗罪で逮捕されたあとの流れ

窃盗罪で逮捕されたときは、基本的に、ほかの刑事事件同様、以下の流れをたどることになります。

  • 逮捕から48時間以内…警察の取り調べと検察への送致
  • 送致から24時間以内…検察による勾留請求、裁判所の勾留決定
  • 勾留後…原則10日間、延長10日間の身柄拘束
  • 勾留期間満了まで…起訴・不起訴処分の決定
  • 起訴決定後…裁判、量刑決定


逮捕から起訴・不起訴処分の決定までには、ある程度の時間がかかります。最長23日もの間、身柄を拘束される可能性もあり、通勤や通学などの日常生活を送ることが困難になる恐れも生じるでしょう

しかし、身柄を拘束する必要がないと判断されれば、いずれかのタイミングで身柄を解放されることがあります。しかしそのためには、被害者への謝罪をはじめとしたさまざまな手だてが必要となります。

6、窃盗罪に時効はあるのか?

窃盗罪の時効は、刑事上の時効と民事上の時効に分けて考える必要があります。なぜなら、窃盗には、刑事事件となりうる罪を犯したことと、被害者の財産に損害を与えたことの、ふたつの側面があるためです。

刑事上の時効とは、通常、「公訴時効(こうそじこう)」を指します。公訴時効が成立すると、検察官は事件を起訴できなくなります。つまり、刑事事件として起きた罪が裁けなくなるということです。窃盗罪の公訴時効は、窃盗を犯した日から起算して、7年です。

民事上の時効は、窃盗罪に関していえば、「損害賠償請求権の消滅時効」を指します。被害者は、あなたが起こした窃盗によって受けた損害について、賠償請求を行えます。これは、刑事事件化していたとしても、していなくても関係がありません。あなたの行為によって、被害者が損害を受けたと認められれば、賠償金を請求できるというわけです。なお、損害賠償請求権の時効は、「被害者が損害および加害者を知ったときから起算して3年、もしくは事件から起算して20年」です。

空き家での窃盗では、事件が発覚されにくいことから複数の罪を犯している可能性があり、時効の起算日がいつになるのか、加害者本人が認識しにくいケースが多々あるでしょう。特に、空き家の窃盗被害では、被害者が被害の年月日を特定できないことも少なくありません。

そのため、被害届には「無事を確認した○月○日から被害に気がついた○月○日の間」という幅を取ることが多く、被疑者側の認識とのズレが生じる可能性が高くなります。ズレが起これば、「時効が完成したはずなのに逮捕された」、もしくは「賠償請求された」という事態が予想されるでしょう。

7、窃盗罪と示談

空き家での盗みを働き、逮捕されるのではないかと不安に感じている場合には、被害者と示談を成立させることによって、逮捕の回避を狙えます。

示談とは、被害者と直接話し合いを行い、合意することで、事件を解決させることを指します。多くのケースで、謝罪と賠償金の支払いが伴いますが、逮捕前の段階で「示談」が成立すれば、被害者が通報せず、逮捕自体を回避できる可能性も生じます

逮捕されたあとであっても、示談成立が考慮され、不起訴処分や刑罰の軽減につながることがあるでしょう。

なお、示談金の相場は事件によって異なります。
被害金額を弁済すれば被害者に納得してもらえるケースや、被害金額に加えて慰謝料を支払うケースなどがあります。ただし、空き家での窃盗の場合は、空き家の所有者が亡くなっていてその家族と連絡が取れない、所有者が施設に入っているなどの理由で、示談が難しいケースがあります。

示談がなければ、量刑が重くなるリスクを負うほか、あとに被害者が現れた際に損害賠償請求を受ける可能性が残ることになります。

8、まとめ

今回は、空き家での窃盗を例に挙げて、窃盗罪の概要や逮捕の可能性、示談などについて解説しました。窃盗事件を起こしてしまい、逮捕に不安を抱えているのであれば、早いタイミングで弁護士に相談することが重要です。

弁護士を選任していれば、被害者との示談交渉だけでなく、逮捕されたあとに、取り調べに対してのアドバイスや、早期釈放に向けた働きかけをしてもらうことができます。起訴されて裁判になった場合でも、早い時期から事件の詳細を知っている弁護士に弁護を依頼することで、量刑の軽減につながりやすいといえるでしょう。

ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士も、示談交渉をはじめ、逮捕回避、量刑を軽くするための弁護活動を行っています。窃盗罪での逮捕に不安をお持ちであれば、一度ご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています