クロスボウ(ボーガン)に対する法規制が施行│不法所持への罰則は?

2022年07月21日
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クロスボウ(ボーガン)に対する法規制が施行│不法所持への罰則は?

令和4年3月15日に施行された改正銃砲刀剣類所持等取締法によって、クロスボウの所持が原則として禁止されることになりました。

法改正に先立って、全国の警察署では、クロスボウの無料回収を進めてきましたが、令和3年9月15日までに回収したクロスボウの本数は、950本で、そのうち愛知県が115本であり、全国で最も多い数字となっています。

このように愛知県内ではクロスボウを所持していた方が多く、無料回収に応じなかった方も一定数いるものと思われます。手元のクロスボウは、今後、改正銃刀法に従って許可を受けるなどの手続きをとらなければ、銃刀法違反として処罰の対象になる可能性があります。

今回は、銃刀法改正によって所持が禁止されたクロスボウの規制について、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、クロスボウの法規制が令和4年3月に施行

クロスボウの所持に対する規制が令和4年3月15日に施行されました。以下では、クロスボウ規制の背景と改正銃砲刀剣類所持等取締法の概要について説明します。

  1. (1)クロスボウ規制の背景

    令和2年6月4日、兵庫県でボーガンを使用した殺人事件が起きました。容疑者の男性は、クロスボウ(ボーガン)を使用して、自分の祖母、弟、母、伯母を撃ち、祖母、弟、母を死亡させ、伯母に重傷を負わせました。

    その後、神戸市内や長野市内においてもクロスボウを撃って怪我をさせたという事件が相次いで起きました。

    当時の法規制では、クロスボウについては銃砲刀剣類所持等取締法の規制対象にはなっておらず、インターネットなどを利用して誰でも簡単に入手することができるものでした。それにもかかわらず、販売されているクロスボウの中には、殺傷能力が高いものもあり、事件をきっかけにクロスボウの規制が検討されるようになりました。

    全国の都道府県では、青少年健全育成条例の改正によって、18歳未満の人に対してクロスボウを所持させる行為や販売することを禁止するようになりました。

    そして、令和3年6月8日、銃砲刀剣類所持等取締法が改正され、クロスボウの所持が原則として禁止される法律が成立しました。

  2. (2)改正された銃砲刀剣類所持等取締法の概要

    改正銃砲刀剣類所持等取締法では、銃砲、刀剣と並んで、クロスボウの所持についても原則として禁止されることになります(銃刀法3条)。

    ① 規制対象となるクロスボウとは?
    改正銃砲刀剣類所持等取締法によって規制対象となるクロスボウとは、弦を引いた状態で矢を固定することができる装置を有しており、引き金を引くことによって銃のように矢を発射させることができ、矢の運動エネルギーが6.0ジュール以上になるものをいいます。

    一般的に市販されているクロスボウについては、基本的にこの定義にあてはまりますので、規制対象になると考えてよいでしょう

    ② どのような行為が禁止されるのか?
    改正銃砲刀剣類所持等取締法によって原則として禁止される行為としては、以下のものが挙げられます。

    【改正銃砲刀剣類所持等取締法によって原則として禁止される行為】
    • クロスボウの所持
    • クロスボウの発射
    • クロスボウへの矢の装填(そうてん)
    • 正当な理由のないクロスボウの携帯・運搬
    • クロスボウの不適切な管理
    (銃刀法10条2項、5項、1項、同条の4)
  3. (3)すでにクロスボウを所持している場合の経過措置

    改正銃砲刀剣類所持等取締法は、令和4年3月15日に施行されました。同日以降は、クロスボウの所持が原則として禁止されますので、新たにクロスボウを取得しようとする場合には、必ず許可を受けなければなりません。

    改正銃砲刀剣類所持等取締法の施行日以前からクロスボウを所持している方については、経過措置として、6か月間が経過するまでに以下の措置をとることによって、銃砲刀剣類所持等取締法違反とはなりません。

    【クロスボウを所持している場合の経過措置】
    • クロスボウの所持の許可申請をする
    • クロスボウを廃棄する
    • 適法に所持することができる人にクロスボウを譲渡する
    期限:令和4年9月14日迄

2、クロスボウを不法に所持していた場合の罰則

改正銃砲刀剣類所持等取締法によって、許可制が導入されますので新たにクロスボウを所持する場合には、あらかじめ所持のための許可申請を行い、許可を得る必要があります。

また、改正銃砲刀剣類所持等取締法施行日以前からクロスボウを所持している方が引き続き所持するには、令和4年9月14日までにクロスボウ所持の許可を得る必要があります。

これらの許可を得ることなく、クロスボウを所持していた場合の罰則は以下の通りです。

【不許可でクロスボウを所持していた場合の罰則】
3年以下の懲役または50万円以下の罰金(改正銃刀法31条の16第1項1号)


改正銃砲刀剣類所持等取締法施行日以降にクロスボウを取得する場合には、許可がなければ取得することができませんので、そこまで問題になることはありません。

しかし、改正銃砲刀剣類所持等取締法施行日前からクロスボウを所持している方は、改正法施行から6か月以内に適切な対応をとらなければ、不法所持になってしまいますので注意が必要です。物置や倉庫にしまい込んでいるという方は、この機会に適切な対応をとるようにしましょう。

3、クロスボウを持っている方がすぐにすべきこと

改正銃砲刀剣類所持等取締法施行日以前からクロスボウを所持している方は、以下のような対応が必要になります。

  1. (1)クロスボウ所持の許可申請

    改正銃砲刀剣類所持等取締法施行日以前からクロスボウを所持している方が引き続きクロスボウを所持するためには、クロスボウ所持の許可を受ける必要があります。

    クロスボウ所持の許可を受けるためには、以下の欠格事由に該当しないことが条件です。

    【クロスボウ所持の欠格事由】
    • 18歳に満たない
    • 禁錮以上の刑の執行を終了してから5年を経過していない
    • クロスボウの構造や機能が一定の基準を満たしていない
    など
    (銃刀法5条)


    また、クロスボウを所持することができる用途についても限定されており、標的射撃や産業目的などの用途に限られ、収集や鑑賞目的での所持は認められません。

    クロスボウ所持の許可申請をする場合には、住所地を管轄する最寄りの警察署に、以下の書類を提出して行います。

    【クロスボウ所持の許可申請の必要書類】
    • 申請人の写真
    • 診断書
    • 譲渡等承諾書
    • 改正銃刀法施行日以前からクロスボウを所持していることを明らかにする資料
    • 住民票の写し
    • 本籍地の市区町村長発行の身分証明書
    • 同居親族書
    • 経歴書
    • 射撃場所の資料(標的射撃用途の場合)
    • 鳥獣捕獲許可証または従事者証(狩猟・有害鳥獣駆除用途の場合)
  2. (2)所持するクロスボウの廃棄

    改正銃砲刀剣類所持等取締法施行日以前からクロスボウを所持している方がクロスボウを廃棄する場合には、最寄りの警察署に持参をすれば無料で処分をしてもらうことができます。

    警察署で所持するクロスボウの無償廃棄をしてもらう場合には、以下のものを持参します。

    【クロスボウの無償廃棄に必要な持ち物】
    • 廃棄するクロスボウ
    • クロスボウ等処分依頼書
    • 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)


    警察署での無償廃棄は、令和4年9月14日までですので、対象となるクロスボウの処分を検討している方は、早めに手続きを行うようにしましょう

  3. (3)所持するクロスボウの譲渡

    所持するクロスボウを処分する方法としては、上記の廃棄以外にもクロスボウを譲渡するという方法も認められています。

    ただし、譲渡する相手がクロスボウを適法に所持できることが必須条件となるため、譲渡相手のクロスボウ所持許可証の原本を確認するなどの必要があります。

    クロスボウを適法に所持することができない人に対してクロスボウを譲渡した場合には、6か月以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられるだけでなく、クロスボウの不法所持幇助(ほうじょ)の罪に問われる可能性もあります。

4、罪に問われそうになったら弁護士へ相談を

クロスボウの所持について不安がある方は、早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)規制対象となるクロスボウであるかを判断してもらえる

    改正銃砲刀剣類所持等取締法は、令和4年3月15日から施行されています。これまでは銃刀法の規制対象ではなかったクロスボウが規制対象に含まれることになりますので、クロスボウを所持している方は、早めに許可申請や廃棄などの対応が必要になってきます。

    しかし、すべてのクロスボウが規制の対象であるというわけではなく、一定以上の威力を有するものが対象になります。また、今回の法改正では、洋弓、和弓、スリングショットなどについては、規制対象には含まれていません。

    そのため、クロスボウを所持している方は、改正銃砲刀剣類所持等取締法による規制対象になるものかどうかを弁護士に確認してみるとよいでしょう。

  2. (2)不法所持を疑われた場合にはすぐに対応が必要

    改正銃砲刀剣類所持等取締法施行日以前からクロスボウを所持していた方は、改正法施行後に直ちに不法所持になるというわけではなく、経過措置によって令和4年9月14日までに適切な対応をとることによって改正銃砲刀剣類所持等取締法による処罰対象から除外されます。

    しかし、これ以降も適切な対応をとることなくクロスボウの所持を継続すると銃砲刀剣類所持等取締法違反となり、罪に問われる可能性があります。

    うっかり許可申請の期間を経過してしまったという場合には、その状態のまま放置をするのではなく、すぐに適切な対応をとることによって、罪に問われる可能性を低くすることが可能です。どのような対応が適切であるかは、個別具体的な状況に応じて異なってきますので、まずは、弁護士に相談をすることをおすすめします

5、まとめ

これまでは適法に所持することができたクロスボウですが、令和4年3月15日以降は、許可なくクロスボウを所持することは禁止されています。

クロスボウを所持していた方は、令和4年9月14日までに、許可申請または廃棄などの対応をする必要がありますので、対象となる方は、早めに手続きをとるようにしましょう

クロスボウの不法所持の疑いをかけられてしまったという方は、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています