チケット転売の罰則やチケット不正転売禁止法を逮捕事例を交えて解説
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人気のあるミュージシャンや歌手のコンサートチケットは入手の倍率が高く、なかなか購入できないものです。その倍率を利用して、購入したチケットを定価よりも高い金額で転売する行為で利益を出している人がいます。
令和元年に施行した「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(略称 チケット不正転売禁止法)」によって、転売行為への取り締まりが厳しくなりました。今回の記事では、チケットの転売行為により罰せられるケースを紹介し、万が一家族が転売行為で逮捕されてしまった際に、取るべき手段について弁護士が解説します
1、チケット不正転売禁止法とは?
入手したチケットを法外な価格によって転売する行為が、アイドル事務所やミュージシャンを悩ませてきました。通常は数千円で入手できるチケットが、転売され数万円~数十万円の価格で取引されてしまうことが多発し、適正価格でファンにチケットが届かず転売業者だけが利益を得る、といった問題が多発していたからです。
そこで、興行主等による販売価格を超える価格での、チケット転売を取り締まるために、「チケット不正転売禁止法」(正式名称:「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」)が令和元年に施行されました。
この法律では、興行主等による販売価格を超える価格での、ライブやコンサートなどのチケットの転売取引を禁止しています。今までは、会場から近い場所でチケットの現物を取引すること、いわゆる「ダフ屋行為」が法律や条例で禁止されてきました。
しかし、インターネットの発達により、その規制だけでは不十分となり、この法律が作られました。現在では、インターネットを介しての転売取引も規制の対象になっています。なお、この法律に違反した場合「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又は併科」が科せられることになります。
2、チケット転売はどこから違法になる?
法外な価格設定をしたチケットの転売は違法になりますが、全てのチケットの売買取引が違法になるかというと必ずしもそうではありません。
それでは実際のところ、チケットの売買において違法取引と適法取引の違いは具体的にどこからなのでしょうか。
ここでは違法行為に該当する行為と、しない行為に分けて解説していきます。
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(1)違法行為に該当する行為
まず、チケット転売規制法の対象になるイベントとは、「日本国内において、映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能またはスポーツを不特定または多数の者に見せ、または聴かせること。」です。外国での興行は規制の対象にならず、日本国内での開催と限定しています。
次に、興行主等による販売価格を超える価格で転売する行為が取り締まりの対象となっています。
なお、転売が禁止されるチケットは、「特定興行入場券」です。
特定興業入場券とは、興行入場券(「それを提示することにより興行を行う場所に入場することができる証票」)であって、「不特定又は多数の者に販売され、かつ、次のいずれにも該当するもの」をいいます。① 興行主等が、「販売時に、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を券面に表示し」又は「通信端末機器の映像面に入場券に係る情報と併せて表示させたものであること」
② 「興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者又は座席が指定されたものであること」
③ 「興行主等が、販売時に、入場資格者又は購入者の氏名及び連絡先などを確認する措置を講じ、かつ、その旨を当該入場券の券面などに表示」させたものであること
上記のチケットを、本来の販売価格を超える値段で有償譲渡することが違法になります。また、不正な転売を目的としてチケットを譲り受ける行為も違法となります。
(※①・②「」はチケット転売防止法より引用、③「」内は文化庁ウェブサイト、特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(概要)より引用) -
(2)違法行為に該当しない行為
チケットの転売行為は取り締まりが厳しくなりましたが、全ての転売が違法行為となるわけではありません。全て禁止にしてしまうと、急用でコンサートに行けなくなった人がチケットを売却できなくなり、その席分が確実に空席になってしまうことも問題です。
そういった場合は、興行側が提供している公式のリセールサイトを利用するのがよいでしょう。公式のサイトにて売買されるチケットは定価のため、売却側にはチケット代が手元に戻り、購入者側も定価で購入でき、安心でしょう。
3、チケット転売により逮捕されたケース
インターネットやオークションサイトを使えば、さまざまなものを取引することが可能です。そのため個人が、身近なものを簡単に売却することができるようになってきました。チケットに関しても「大丈夫だろう」という気持ちで売却し罰せられた例もあります。
ここでは、チケットの不正転売により逮捕され罰せられたケースを罪名ごとに紹介します。
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(1)詐欺罪で逮捕された事例
平成29年9月、ロックバンドのライブコンサートのチケット転売を目的に購入した男が、「詐欺罪」に問われ懲役2年6か月、執行猶予4年を言い渡されたという報道がありました。
チケットの購入行為が詐欺罪に該当した理由は、男が転売目的でチケットを購入したのにもかかわらず、その目的を隠してチケット販売会社を欺き購入してチケットを送付させたからです。その後実際に転売行為をしたことで詐欺罪にあたると認定されました。
本件で注目すべきポイントは、実際のチケットの転売行為が詐欺罪に問われたのではなく、前段階の購入(仕入れ)の行為自体が詐欺罪に該当するとされたことです。
このように、販売をしなくても転売目的でチケットを購入する行為自体が詐欺罪に該当し罰せられることがあります。 -
(2)古物営業法違反で逮捕された事例
平成28年に、アイドルのコンサートチケットを許可なくインターネット上で転売したとして、「古物営業法違反」の容疑で逮捕されたという事例もあります。逮捕された人は、反復継続してアイドルグループのチケットを、転売目的で購入・転売していました。
この時、逮捕の根拠になったのは「古物営業法」です。古物商の免許を持たず、無免許で転売行為をしていたのは、この法律に違反する行為です。
ここでいう、「古物」とはいわゆる中古品のことです。実は未開催のコンサートのチケットも「中古」に該当し、反復継続して販売するためには古物商の免許が必要になってくるのです。
4、家族がチケット転売で逮捕されたら、弁護士に依頼するべきか?
もし家族がチケット転売により逮捕されてしまったら、まずは弁護士に相談しましょう。
逮捕された場合、まず最大で48時間は警察から取り調べを受けます。次に、長くて24時間、検察官からの取り調べを受けることになります。この72時間は家族であっても、原則として面会することができません。しかし、弁護士ならば面会可能であるため、取り調べの受け方などについて適切なアドバイスをすることが可能です、
また、72時間が過ぎた場合であっても、検察官が必要だと考えれば、身柄拘束を最大で20日間受ける可能性があります(勾留といいます)。この場合、弁護士は勾留が不当に長引かないよう検察官に働きかけ、裁判となった場合も執行猶予や不起訴を目指した活動を行います
5、まとめ
軽い気持ちでチケットを転売して逮捕された時、重要になるのは逮捕された人の家族や周囲の人のサポートです。逮捕により動揺するのは当然ですが、大切なのは逮捕後の対応をしっかり行うことです。
とはいえ、警察や検察に対して、堂々と落ち着き本人が自己の弁護をすることは非常に難しいことでしょう。早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
チケットの転売による家族の逮捕でお困りなら、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスにご相談ください。弁護士が全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています