エサをあげないと動物虐待? 改正動物愛護管理法違反とは?

2021年01月25日
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エサをあげないと動物虐待? 改正動物愛護管理法違反とは?

名古屋市には動物愛護センターが設けられており、動物愛護と適正飼養を普及・啓発するための教室やイベントを開催したり、犬や猫などによる危害・迷惑を防止したりするための業務が行われています。

一度動物を飼い始めたら、動物といえども家族同然と考えて、しっかりと世話をしなければなりません。
もし動物の世話が面倒くさくなったり、手間がかかることにイライラしたりして、動物を虐待してしまった場合、動物愛護管理法違反として罪に問われてしまう可能性があります。

この記事では、動物虐待が罪に問われる具体的なケースや、動物愛護管理法違反で逮捕された場合の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、動物虐待をした場合に問われる罪とは?行為類型ごとに解説

動物愛護管理法(正式名称:動物の愛護及び管理に関する法律)では、動物虐待に関するさまざまな犯罪類型が規定されています。

まずは、どのような行為が動物虐待として罪に問われるのか、またその法定刑はどの程度なのかについて、行為類型ごとに見ていきましょう。

なお、動物愛護管理法において動物虐待の客体になり得るのは、同法第44条第4項で「愛護動物」として定義される、以下の動物とされています。

第44条
4 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの


  1. (1)動物をみだりに殺害・傷害・暴行する行為

    動物をみだりに殺し、または傷つける行為は、動物虐待の中でも、もっとも卑劣といえるでしょう。

    その法定刑は極めて重く、「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」とされています(動物愛護管理法第44条第1項)。

    また、動物にケガをさせるおそれがあるような暴行を加え、またはケガのおそれがある行為を強制することは、たとえ実際にケガが発生しなかったとしても、卑劣な行為に違いありません。

    この場合にも、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(同条第2項)。

  2. (2)動物に対してエサや水をあげるのをやめる行為

    飼っている動物に対してエサや水をきちんとあげることは、飼い主としての責務です。

    それにもかかわらず、エサや水をあげることをやめてしまい、動物を衰弱させた場合には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(動物愛護管理法第44条第2項)。

  3. (3)動物を酷使する行為

    人間が動物を酷使する行為は、動物愛護の理念に大きく反します。

    そのため、動物を酷使した結果、動物を衰弱させた場合には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(動物愛護管理法第44条第2項)。

  4. (4)動物を健康・安全の保持が困難な場所に拘束する行為

    動物を鎖につないだまま、雨風が吹きさらす屋外に放置するなど、健康・安全の保持が困難な場所に拘束する行為は、飼い主の責務である、動物の心身のケアを放棄する問題行動といえます。

    動物をこのような危険な場所に拘束した結果、動物を衰弱させた場合には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(動物愛護管理法第44条第2項)。

  5. (5)一部屋にたくさん動物を飼い過ぎる行為

    動物を飼うには、飼育場所の広さに応じて適切な飼育数(頭数)が存在します。

    しかし、飼い主によっては、狭い空間にあまりにも多くの動物を飼っている不適切なケースも見受けられます。

    飼い主の許容範囲を超えた多頭飼育になると、餌や水やりが不十分になったり、不衛生による病気が発生したりする危険性が高まります。

    このように、飼育場所においてたくさんの動物を飼い過ぎた結果、動物を衰弱させた場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(動物愛護管理法第44条第2項)。

  6. (6)病気やけがをした動物を適切に保護しない行為

    飼っている動物が病気やけがをした場合、応急処置をしたり、病院に連れて行ったりするなど、適切な保護を行うことが飼い主の責務といえます。

    それにもかかわらず、病気やけがをした動物の保護を怠った場合には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(動物愛護管理法第44条第2項)。

  7. (7)排せつ物や死体が放置された施設で動物を飼う行為

    排せつ物や他の動物の死体が放置された施設は、動物の生活環境としては極めて劣悪と言わざるをえず、動物の尊厳や健康に対して大きな悪影響を生じさせてしまいます。

    このような環境で動物を飼育した場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(動物愛護管理法第44条第2項)。

  8. (8)動物を遺棄する行為

    飼っている動物の世話を放棄し、飼育場所から離れた場所に置き去りにするなどしてその動物の生命・身体を危険にさらす遺棄行為は、飼い主としての責任を完全に放棄する悪質な行為といえます。

    「遺棄」にあたるかどうかは、置き去りにされた場所の状況やその動物の状態、目的などによって判断されます。その場所自体が危険でなくとも、ペットとして飼っていた動物が自活できないと思われる場所に捨てたりすることは「遺棄」したと判断される可能性があります。

    このように動物を遺棄する行為については、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(動物愛護管理法第44条第3項)。

2、2020年6月施行・改正動物愛護管理法により飼い主の責任が拡大

飼育動物に対する飼い主の責任放棄は、近年大きな社会問題のひとつとなっています。
これを受けて、2020年6月1日に施行された改正動物愛護管理法では、以下の点で動物の飼い主の責任範囲が拡大されました。

  1. (1)環境大臣が定める基準の遵守を義務化

    環境大臣は、動物の飼養および保管に関する基準を定めることができるところ(動物愛護管理法第7条第7項)、飼い主がその基準を遵守する義務を負うことが明文化されました。

  2. (2)不適切な飼養・保管に対する指導権限が拡大

    都道府県知事には、これまで多数の動物が不適切な形で飼養・保管されている場合に、勧告や任意の立ち入り検査を求める権限が認められていました。

    改正法では、たとえ動物が1頭であっても、これらの勧告等の権限を行使できるようになり、また立ち入り検査が強制処分へと強化されました(同法第25条)。

  3. (3)繁殖防止の義務化

    これまで犬または猫の所有者には、繁殖により動物が増えすぎて、適正な飼養ができなくなるおそれがある場合には、繁殖防止(去勢手術など)の措置を講ずる努力義務が課されていました

    改正法では、繁殖防止は飼い主の単なる努力義務ではなく、きちんと措置を講じなければならない義務規定へと強化されました(同法第37条第1項)。

  4. (4)動物虐待などの厳罰化

    すでに解説した、動物虐待に関して成立する罪について、以下のとおり厳罰化が行われました。

    • ①動物を殺傷した場合
    • <改正前>
      2年以下の懲役または200万円以下の罰金
    • <改正後>
      5年以下の懲役または500万円以下の罰金

    • ②動物を虐待・遺棄した場合
    • <改正前>
      100万円以下の罰金
    • <改正後>
      1年以下の懲役または100万円以下の罰金

3、動物愛護管理法違反で逮捕されたらどうなる?前科はつく?

動物殺傷・動物虐待・動物遺棄を行った場合、悪質なケースでは、逮捕・起訴のうえで刑事罰が科されることもあります。

以下では、動物愛護管理法違反で逮捕された場合の流れを解説します。

  1. (1)最大23日間の身柄拘束・起訴されればさらに継続も

    動物愛護管理法違反で逮捕されると、身柄拘束を受けながら、捜査機関による取り調べを受けることになります

    その後、捜査の結果を踏まえて、検察官が被疑者を裁判にかけるかどうか(起訴・不起訴)の判断を行いますが、それまで最大で23日間の身柄拘束が行われます。

    もし検察官によって被疑者が起訴されると、その後被疑者は「被告人」と呼ばれるようになり、その後も身柄拘束が続いてしまいます。

  2. (2)悪質な動物虐待に対しては実刑判決もあり得る

    起訴された被告人は、保釈が認められない限りは身柄拘束を続けられ、そのまま裁判へと臨むことになります。

    特に複数の動物を残酷な方法で殺害したような悪質なケースでは、法定刑の上限が2年以下の懲役から5年以下の懲役に改正された点も踏まえると、裁判で実刑判決を受け、刑務所に入ることになってしまう可能性もあるため、十分注意が必要です

  3. (3)刑事罰が科されれば前科がつく

    懲役刑に限らず、裁判で有罪の判決を受けた場合、被告人には前科が付いてしまいます

    前科は履歴書などに記載欄が設けられていることもありますので、社会的なイメージなどの面で悪影響が生じてしまうでしょう。

    なお、刑に執行猶予が付され、執行猶予期間が経過した場合には、刑の言い渡しは効力を失うため(刑法第27条)、履歴書への記載は不要となる場合が多いと考えられます。

4、動物愛護管理法違反で刑事事件になった場合は弁護士に相談を

動物虐待は、動物を飼っている人であれば、誰もが当事者になってしまう可能性のある犯罪です。

もし動物愛護管理法違反で逮捕されたり、警察の取り調べを受けてしまったりした場合には、一刻も早くベリーベスト法律事務所の弁護士にご相談ください。

ベリーベスト法律事務所では、身柄拘束を解くための活動、取り調べに臨むに当たってのアドバイス、裁判で寛大な処分を得るための弁護活動など、さまざまな観点から依頼者をサポートいたします。

刑事事件になってしまった場合、弁護士への早めのご相談が肝心です。

5、まとめ

動物虐待は、動物愛護管理法に違反する犯罪行為です。

もし動物を飼っていて、世話をするのにストレスを感じるようになってしまったら、公的サービスを利用して次の飼い主を探す、自治体の窓口やブリーダーにしつけのやり方について相談するなど、ご自身で責任のある対応を取るよう心がけましょう。

万が一、動物虐待などを理由として、動物愛護管理法違反で逮捕されてしまったら、一刻も早くベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています