サイバー犯罪に加担!? 詐欺サイト制作はどのような罪に問われるか?

2020年12月07日
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サイバー犯罪に加担!? 詐欺サイト制作はどのような罪に問われるか?

愛知県警察が2019年中に受理したサイバー犯罪に関する相談件数は6923件でした。
このうち、詐欺・悪徳商法被害関係の相談が3332件と、全体の半数近くを占めています。

インターネット技術が発展した現代では、サイバー犯罪が大きな社会問題となっており、企業などがセキュリティー対策に苦慮しています。
万が一サイバー犯罪に加担してしまった場合には、弁護士に相談して適切に対応することが必要です。

この記事では、サイバー犯罪の類型や、問われる可能性のある罪などについて、ベリーベスト法律事務所  名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、どんな行為がサイバー犯罪にあたり、刑罰法規でどのような罪に問われるのか

サイバー犯罪とは、「高度情報通信ネットワークを利用した犯罪やコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪等の情報技術を利用した犯罪」(平成28年度版 警察白書)と定義されています。本章では、どんな行為がサイバー犯罪にあたり、刑法などでどのような罪に問われるのかを解説します。

  1. (1)電子計算機損壊等業務妨害罪・電子計算機使用詐欺罪

    他人のホームページのデータを無断で書き換えてその業務を妨害した場合には、「電子計算機損壊等業務妨害罪」が成立します(刑法第234条の2第1項)。電子計算機損壊等業務妨害罪の法定刑は、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。

    また、金融機関のオンライン端末を不正に操作して預金記録などの財産上のデータを書き換え、他人の口座から自分の口座に勝手に預金を移した場合には、「電子計算機使用詐欺罪」が成立します(刑法第246条の2)。

    電子計算機使用詐欺罪の法定刑は、通常の詐欺罪と同じ「10年以下の懲役」です。

  2. (2)不正指令電磁的記録作成等罪

    他人のコンピュータに送り込む目的でコンピュータ・ウイルスを作成したり、ウイルスだと知っている人に提供したり、実際にそれを他人のコンピュータに送り込んだりした場合には、「不正指令電磁的記録作成等罪」が成立します(刑法第168条の2)。

    不正指令電磁的記録作成等罪の法定刑は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

    また、正当な理由がないのに、ウイルスを他人のコンピュータに送り込む目的で取得、保管しただけでも不正指令電磁的記録取得・保管罪が成立しうるので注意が必要です(刑法168条の3)。
    法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

  3. (3)不正アクセス禁止法違反

    他人のIDやパスワードを盗用したり、コンピュータのセキュリティーホールを攻撃したりして、アクセス制御機能を破り、不正に他人のコンピュータなどへアクセスした場合、不正アクセス禁止法違反に問われます(不正アクセス禁止法第3条)。

    この場合、法定刑は「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」となります(同法第11条)。

    また、不正にアクセスする目的で単にIDやパスワードを取得する行為(同法第4条)や、勝手に他人のIDやパスワードを第三者に教えるなどして不正アクセスを助長する行為(同法第5条)などについても、不正アクセス禁止法違反に該当します。

    これらの場合については、法定刑は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」です(同法第12条)。

  4. (4)そのほかのサイバー犯罪行為と成立しうる罪

    サイバー犯罪にはさまざまな類型が含まれます。

    たとえば、詐欺的な手段を用いてサイト閲覧者に商品を購入させようとする詐欺サイトを制作・運営した場合は、「詐欺罪」に問われる可能性が高いでしょう(刑法第246条第1項)。
    この場合の法定刑は「10年以下の懲役」となります。


    他にもいくつか例を挙げますと、以下のような犯罪が成立する可能性があります。

    • web上で他人を誹謗中傷する行為・・・・・・・・・・・名誉棄損(きそん)罪
    • 掲示板などで殺人予告をする行為・・・・・・・・・・・脅迫罪、業務妨害罪等
    • インターネットを通じて違法薬物を販売する行為・・・・覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反等
    • インターネットを通じて海賊版などを頒布する行為・・・・・・著作権法違反等
    • 掲示板などにわいせつな画像を掲載する行為・・・・・・・わいせつ物頒布等罪
    • 掲示板に児童ポルノを掲載する、出会い系サイトで児童買春をもちかける行為
                       ・・・・児童買春・児童ポルノ禁止法違反
    • など

2、サイバー犯罪で逮捕されるとどうなるのか?

サイバー犯罪で逮捕された場合、被疑者の処分は刑事手続きの中で決定されることになります。

以下では、実際の刑事手続きがどのように進行するかを、時系列に沿って解説します。

  1. (1)逮捕・起訴前勾留で最大23日間の身柄拘束が続く

    被疑者として逮捕されると、まずは最大72時間、身柄拘束がなされます。

    その後、被疑者に罪証隠滅や逃亡のおそれがあると検察官が判断した場合には「勾留請求」が行われます。

    勾留請求を裁判所が認めると、10日間の「起訴前勾留」へと移行します。

    起訴前勾留は1回、最大10日間まで延長できるため、逮捕・起訴前勾留を併せると、最大で23日間の身柄拘束をされることになります。

    被疑者に対しては、警察官や検察官からの取り調べがたびたび行われますが、被疑者は黙秘することもできます。

    なお、被疑者には常に弁護人を選任する権利が認められています。

  2. (2)検察官により起訴・不起訴の判断が行われる

    起訴前勾留の期間中に、検察官が被疑者を起訴するか、それとも不起訴にするかの判断を行います。

    起訴するかどうかについては、犯罪の重さや悪質性のほか、被疑者の反省や示談の成否などの情状も考慮されます。(刑事訴訟法第284条)。

  3. (3)起訴された場合は起訴後勾留が続くが、保釈も可能に

    もし、起訴された場合には、被告人と呼ばれる立場となり、「起訴後勾留」に移行し、引き続き身柄拘束が行われます。

    起訴後勾留の期間は2か月ですが、1か月ごとに何度でも更新が可能です。

    ただし、一定の要件を満たす場合には保釈が認められ、保釈保証金を支払うことにより、身柄拘束から解放されます(刑事訴訟法第89条、第90条)。

    起訴後勾留または保釈の期間においては、被告人は来るべき公判期日に備えて、弁護士とともに準備を整えることになります。

  4. (4)公判手続きで有罪・無罪と量刑の判断が行われる

    公判の場では、被告人が本当に罪を犯したのかどうか、犯したのであればどの程度の刑に処すべきかの審理が行われます。

    被告人としては、身に覚えがなければ犯罪事実を否認すべきですが、有罪であることが疑いない場合は、情状酌量の可能性を考慮して、犯罪事実を認めるのが良いでしょう。

  5. (5)有罪の場合は刑の執行or執行猶予

    公判で有罪判決を受け、その刑が確定した場合には、原則として刑の執行が開始されます。

    ただし、量刑が「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」である場合には、情状によって執行猶予が付与されます(刑法第25条第1項)。

    執行猶予が付された場合には、すぐには刑が執行されず、執行猶予期間中に犯罪を繰り返さなければ、刑を受けなくて済みます。

3、サイバー犯罪で逮捕される前・逮捕後にできること

もしサイバー犯罪に加担してしまったら、逮捕前に自首することをおすすめします。
その際は、弁護士に同行してもらうと良いでしょう。

また、逮捕後にも弁護士によるサポートが重要になりますので、早い段階から弁護士とコミュニケーションが取れる状態にしておくことが大切です。

  1. (1)自首すると刑が減軽される場合がある

    自首とは、犯罪事実または犯人が捜査機関に判明していない段階で、自ら罪を犯したことを捜査機関に申告することです。

    被疑者が自首をした場合、刑が減軽される可能性があるほか(刑法第42条第1項)、情状面でも有利に働きます。

  2. (2)自首する場合には、弁護士に自首同行を依頼することもご検討ください

    捜査機関に対して自首する場合には、弁護士に同行を依頼することもご検討ください。

    弁護士は、被疑者が捜査機関の取り調べなどに対して、どのように臨むべきかなどのアドバイスをあらかじめ行います。

    そのため、被疑者が捜査機関の取り調べにおいて、捜査機関側の誘導に引っかかってしまったりする危険を回避できる可能性が高まります。

  3. (3)逮捕後は弁護士とともに不起訴などに向けた活動を

    また、早めに弁護士に相談しておくことにより、逮捕後の不起訴や寛大な判決に向けた弁護活動へとスムーズに移行することが可能です。

    特に被害者が特定できる犯罪では、弁護士が介入することで、早期に謝罪の意思を伝え、被害弁償の提示などができるため、示談の成立や、被害者が被疑者を許すという意思を示してもらえる可能性が高まります。

    示談の成立や被害者の許しが得られたことは、検察官の起訴・不起訴の判断に有利に働きます。不起訴とまではならなくても、罰金刑が定められている軽微な犯罪では、「略式手続」(刑事訴訟法461条~)という簡単な手続で済ませられる可能性も広がります。

    起訴前勾留の期間は限られていることから、不起訴を得るための弁護活動のスケジュールは非常にタイトになります。

    そのため、サイバー犯罪に加担してしまったのではないかと思い至った段階で、早めの準備を進めるために、すぐにベリーベスト法律事務所にご相談ください。

4、まとめ

サイバー犯罪にはさまざまな類型があることから、成立する犯罪も多種多様です。

もしサイバー犯罪に加担してしまった場合には、不当に重い刑事処分を受けることを回避するためにも、弁護士に相談のうえで、自首などの早めの対応が肝心です。

サイバー犯罪に手を染めてしまい悩んでいるという方は、人生の再出発を切るためにも、一刻も早くベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています