海外旅行のお土産なのに密輸で逮捕? 名古屋の弁護士が対処法を解説
- その他
- 密輸
- 逮捕
法律で禁止・規制されている物をひそかに輸出入することなどを「密輸」といいます。発覚すれば逮捕されてしまう可能性があります。平成30年には、名古屋税関の管内で押収された覚せい剤の量が過去最多を記録しており、名古屋を入り口とした、違法薬物の密輸の警戒が強まっています。
何気なく購入したお土産や、預かった手荷物でも検挙対象になる可能性が十分にあります。
今回は、「密輸と逮捕」をテーマに、密輸に関する法律や罰則、疑われた時の対処法について名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、どのような物を持ち込むと密輸になる?
密輸は、さまざまな法律で規制されています。まずは基本をチェックしましょう。
-
(1)関税法で禁止されている物
まずは、関税法で密輸が禁止されている物について確かめておきましょう。
関税法第69条の11には、以下のとおり輸入禁止品が定められています。- 違法薬物(麻薬、大麻、覚せい剤など)
- 指定薬物
- 拳銃、拳銃部品など
- 爆発物
- 火薬類
- 化学兵器
- 病原体
- 偽札、有価証券の偽造品など
これらについては、明らかに輸入できない物品だと認識できるでしょう。
第69条の11第1項第7号~10号にあたる以下の物も、輸入してはらない貨物にあたるため、注意が必要です。- 公序良俗に反する書籍、図画、彫刻品など(例:わいせつ雑誌やビデオ)
- 児童ポルノ
- 特許権、商標権、著作権などを侵害する物品(例:偽ブランド品や海賊版の作品)
- 不正競争防止法に掲げる行為を形成する物(例:マジコン(※)、模造品)
-
(2)そのほか条約や法令で輸入が規制されている物
関税法以外でも、密輸は多くの条約・法令で規制されています。主に動植物や医薬品が規制の対象です。
●ワシントン条約
絶滅の危機にある野生動植物を守るための条約です。生きている動植物のほか、毛皮やはく製、漢方薬など加工製品も規制の対象となります。特に動物の密輸事件は相次いで起きており、平成29年9月にはレッサースローリスを密輸入しようとした男が、平成30年9月にはサルやカメ、トカゲなどを密輸しようとした男がそれぞれ摘発されニュースになりました。
●植物防疫法
土や土つきの植物などは、試験研究の目的などで許可を受けた場合以外は輸入が禁止されており、いねわらは、朝鮮半島及び台湾を除く諸外国からの輸入が禁止されています。このほかにも、様々な野菜や果実などが、持ち込み自体を禁止されたり、検査を経ない持ち込みが禁止されるなどしています。
●医薬品医療機器等法
個人消費用に化粧品や医薬品などを持ち込む場合、数や量に制限があります。たとえば口紅は24個以内、家庭用電気マッサージ器は1セットなどと決められています。
●家畜伝染病予防法
ソーセージやジャーキーなどの肉製品、乳製品などは輸入検査を受けずに持ち込むことはできません。お土産や個人消費用の場合、検査証明書の取得が難しいため、肉類や動物由来製品の多くは持ち込み不可となります。
2、密輸するとどのような罰を受けるのか
以下のとおりの罰則を受ける可能性があります。
-
(1)関税法に違反した場合
関税法で禁止されている物品を持ち込むと、同法第109条によって次の罰が科せられます。
- 第1号~6号まで……10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金または併科
- 第7号~10号まで……10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科
-
(2)違法薬物を密輸した場合
また違法薬物を密輸すると、薬物の種類や用途によって、次のような罰も受ける可能性があります。
●覚せい剤取締法違反
覚せい剤について、輸入の禁止に違反すると1年以上の有期懲役(第41条)
●大麻取締法違反
大麻について、7年以下の懲役(第24条)
●麻薬取締法違反
ジアセチルモルヒネなどを輸入すると1年以上の有期懲役、これ以外の麻薬を輸入すると1年以上10年以下の懲役(第64条、65条)など。
実際にどの罰則が適用されるのかはケース・バイ・ケースですが、少なくとも密輸が重い罪であることはおわかりいただけるでしょう。
なお、実際に麻薬を所持していなくても、麻薬を売っていると広告すれば、麻薬取締法という法律で罰せられることもあります。
3、海外旅行のお土産のつもりが密輸?
気をつけていないと、海外旅行のお土産でも罪に問われてしまうことがあります。たとえばバスソルトやアロマオイルなど、現地では「違法ではない」物として売られていた商品でも、注意が必要です。法律上では違法薬物にあたり、密輸となる場合があるためです。
また、現地で会った方から「日本にいる友人へお土産を渡したい」などと頼まれ、運んだ結果、薬物の「運び屋」となってしまった……といったケースもあります。まるで、ドラマや映画のなかの出来事のように感じるかもしれませんが、このような事件は多発しています。広く注意喚起もされているため、「知らなかった」と主張しても、簡単には通らないかもしれません。
4、密輸の疑いで逮捕された後はどうなる?
もし密輸を疑われて逮捕された場合、どのようなことが待っているのでしょう。
ここでは逮捕された後の手続を簡単に説明します。
●警察からの取り調べを受ける
密輸で逮捕されると、まずは、警察官からの取り調べを受けます。
●検察庁へ身柄が送られ勾留されるかどうかが判断される
警察官の取り調べが終わると、逮捕から48時間以内に被疑者の身柄と事件の内容が検察官に送られ検察官による取り調べが行われます。
検察官は原則として、被疑者の身柄を受け取ってから48時間以内、かつ、逮捕から合計72時間以内に起訴するかどうかを判断しますが、さらに捜査をする必要がある場合には、裁判官に追加の身柄拘束を求めます。これを勾留請求といいます。
勾留請求が認められると、検察官が勾留を請求した日から原則10日、延長すると最長でさらに10日(合計で最長20日間)、身柄を拘束されます。
●起訴・不起訴の判断
検察官は、勾留をしない場合には逮捕から72時間以内に、勾留をする場合には勾留期間内に、被疑者を起訴するかどうかを決めます。不起訴ならば身柄は釈放されますが、起訴される場合には、身柄拘束が続く場合があります。
5、密輸の疑いをかけられたら速やかに弁護士へ相談を
密輸の容疑がかかってしまった場合は、速やかに弁護士に依頼すべきでしょう。その理由を説明します。
-
(1)逮捕・勾留中にアドバイスを受けられる
事前のアドバイスや知識がない状況で取り調べを受けてしまうと、不安や早く解放されたい一心から、罪を認めるような受け答えをしてしまうおそれがあります。弁護士から適切なアドバイスを受けることは非常に重要です。
たとえば、持ち込んだ物が薬物であれば、薬物を運んでいる認識があったのか、なかったのか等が重要なポイントとなることがあります。そのような認識の有無について、弁護士が具体的な事情を聞き取り、弁護方針などを検討します。 -
(2)早めの相談で、逮捕のリスクを回避・軽減できる可能性も
取るべき対応が明確にはなるだけではなく、捜査機関に働きかけることによって、不要な逮捕・勾留を回避できます。これにより、社会生活への影響は最小限に抑えられるでしょう。万が一起訴されてしまった場合でも、弁護士が依頼人のために最後まで力を尽くすことで、執行猶予がついたり、刑が軽くなったりするなどの結果が得られる可能性があります。
6、まとめ
今回は密輸による逮捕について、適用される法律や罰則、対処法をお伝えしました。
密輸は国内へのさまざまな悪影響が懸念される重罪です。疑いをかけられた時点で、弁護士へ相談されることが賢明な選択でしょう。
ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスでは、刑事事件のご相談をお受けしております。実績豊富な弁護士が全力でバックアップしますので、できるだけお早めにご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています