軽犯罪法違反とは? 違反行為の類型・罰則・前科を弁護士がご紹介
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殺人などは刑法でも禁止され、やってはいけない重大な犯罪だと誰でもわかります。しかし、刑法で規定されないような軽微な行為の場合、他人に迷惑をかけても罰せられることはないのでしょうか? もちろんそのようなことはなく、そのような行為は「軽犯罪法」で規制されています。
全国では軽犯罪法違反となるさまざまな事件が起きており、人口230万人を超す大都市、名古屋を擁する愛知県も例外ではありません。では、何をすると軽犯罪法違反になるのでしょうか。罰則はどのくらいで、前科はつくのでしょうか。
本コラムでは軽犯罪法違反をテーマに、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、軽犯罪法違反に問われる行為とは
軽犯罪法で規制される行為は第1条第1号から第34号まであり、第21号は削除されていますので、全部で33の行為に分類されます。
ちょっとしたいたずらのつもりでした行為だとしても犯罪にあたるため、罰を受け前科がついてしまうことがあるので注意が必要です。以下では、一部の代表的な行為を紹介します。
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(1)正当な理由なく危険な器具などを携帯する行為(第2号、3号)
第2号では、他人の身体や生命に危険を与える器具を正当な理由なく携帯することを禁止しています。たとえば、刃物、鉄パイプ、スタンガンなどのほか、木製バットやゴルフクラブといったスポーツ用品も該当します。
第3号では、他人の建物への侵入に使用される器具を携帯することを禁止しています。たとえば、のみやガラス切りなどが該当しますが、懐中電灯やペンライトを所持して逮捕された事例もあります。
これらは「正当な理由なく」携帯すると問われる罪ですので、業務で使用するなど、携帯している理由をしっかりと説明できる状態であれば問題ありません。 -
(2)警察官や消防士などのコスプレをする行為(第15号)
第15号では、警察の服装など、法令によって定められた制服や標章がある場合に、それを模して作った衣装を着用する行為を禁止しています。つまり、警察官や消防士などの精巧なコスプレ衣装を作って着てはいけないということです。
このような職業の制服は外見上の信頼がともなうため、見間違えた場合、人々の信頼を損なう結果になります。明らかに本物ではないとわかる衣装だった場合や、ドラマ撮影などで着用する場合は見間違う余地がないため、15号違反にはあたりません。 -
(3)ウソの犯罪や災害の事実を公務員に申告する行為(第16号)
警察官などに対して、「殺人事件を目撃した」「○○宅から火災が発生している」など、起きてもいない犯罪や災害があったと通報する行為は、第16号で禁止されています。実際、ナイフを突きつけてきた男に現金を奪われたとウソの通報をした者が、軽犯罪法違反で逮捕された事例もあります。
なお、ウソの情報をいいふらす行為は、他の犯罪に該当する場合があります。熊本地震が起きた際には、ツイッターを利用して動物園からライオンが逃げ出したとウソの情報を流した男が、偽計業務妨害罪で逮捕されています。 -
(4)公衆が集まる場所で立ち小便をする、たんつばを吐くなどの行為(第26号)
第26号では、街路や公園など公衆が集まる場所でたんつばを吐く、大小便をする、あるいはこれらをさせる行為が禁止されています。これらの経験がある方は少なくないようですが、実は犯罪なのです。
なお、「させる」行為も禁止されています。親が幼い子どもに道端で小便をさせた場合も罪に問われる可能性があります。
2、軽犯罪法違反の罰則と前科
軽犯罪法が定める行為は、原則として同じ罰を受けることになります。罰則は「拘留または科料」です。
「拘留(こうりゅう)」とは、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置される罰です。「科料(かりょう)」とは、1000円以上1万円未満の金銭を徴収される罰です。
罰則だけ見ると、軽犯罪法に違反しても、罰は非常に軽いものだと感じる方もいるかもしれません。しかし、拘留や科料でも「前科」がつきます。
前科がつくことで、一定の職業に就けなくなるなどの制限が生じ、勤務先から懲戒処分を受けるおそれがあったり、次に罪を犯したときに量刑が重くなりやすくなったりするデメリットがあります。
昨今は、犯罪の事実がインターネットに掲載されると拡散され、記録が残ってしまうケースもあります。そうなってしまうと、今後の人生におけるあらゆる不利益が想定されます。
また、行為の内容によっては、軽犯罪法違反のみならず、刑法や他の法令に抵触する場合があるため、拘留や科料では済まない可能性もありますので、気をつけて行動しましょう。
3、軽犯罪法違反による逮捕の可能性と逮捕後の流れ
最後に、軽犯罪法違反による逮捕の要件や逮捕後の流れを確認しておきましょう。
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(1)逮捕される可能性
刑事訴訟法第199条では、30万円以下の罰金、拘留または科料にあたる罪については、被疑者が住居不定の場合や正当な理由なく出頭の求めに応じない場合に限って、逮捕状による逮捕(通常逮捕)ができるとしています。
つまり軽犯罪法違反にあたる行為をしても、逃げたり出頭を拒否したりしなければ、逮捕される可能性は低いでしょう。 -
(2)逮捕後の流れ
通常、逮捕されると警察で48時間、検察で24時間の合計72時間以内の取り調べを受けます。さらに捜査の必要があれば、勾留と呼ばれる原則10日間、延長が許可された場合は最長20日間の身柄拘束をされる場合があります。
しかし、軽犯罪法違反の場合には逮捕されても、被疑者が住居不定の場合にのみ勾留されますので、住居が明らかで、容疑が軽犯罪法違反のみであるのなら、数日以内で身柄を解放される可能性が高いでしょう。
なお、軽犯罪法違反では逮捕・勾留はされないと思っている方もいますが、絶対ではありませんので、注意しましょう。また、逮捕されてしまった場合はもちろん、検挙されたときは予期せぬ事態に備えて、弁護士に相談することも検討してください。
4、まとめ
軽犯罪法は、一般的な道徳規範に反する比較的軽微な犯罪行為を規制する法律です。しかし、条例などによって、他の犯罪にあたると判断される場合もあります。また、罰則が軽いからこそ不起訴処分とされず、すぐに前科がついてしまうおそれもあります。これらの危険を回避するためには、軽微な行動と考えず、速やかに弁護士へ相談されることをおすすめします。
弁護活動によって早期釈放が叶う可能性を高めることができるでしょう。もし他の犯罪が疑われるようなことになっても、被疑者に有利な情報を集めて捜査機関へ意見書を提出する、被害者との示談や贖罪(しょくざい)寄付をするなどの具体的な活動をすることで、不起訴処分となり、前科がつかないことが期待できます。
ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスでは、刑事事件の経験が豊富な弁護士が尽力します。軽犯罪法違反によって捜査対象になりそうなときは、少しでも早くご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています