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遺産相続で年金の使い込みが発覚! 刑事事件になる? 穴埋め方法は?

2021年09月21日
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遺産相続で年金の使い込みが発覚! 刑事事件になる? 穴埋め方法は?

最高裁判所が公表した資料によれば、認知症などの影響で判断能力が低下している方の財産管理を行う成年後見人等による横領などの不正事例が急増し、ピークの平成26年には被害額が約56億円に上ることが判明しました。

名古屋市でも名古屋市成年後見あんしんセンターにおいて、成年後見制度をはじめとする、高齢者支援のための相談窓口を設けていますが、高齢者の財産管理は課題として在り続けています。

認知症などで財産管理に支障がある場合、親族の方が代わって管理をするのが一般的です。
しかし、その管理が適正になされていなかったり、使い込みをしたりしていたことが遺産分割の段階で判明した場合、遺産分割協議が進まなくなる可能性があります。

そこで、本コラムでは、亡くなった方の年金が使い込まれていたケースを想定して、
● 刑事責任を問うことはできるのか?
● 遺産分割や使い込まれた年金の回収はどのように行うのか?
についてベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、年金の使い込みを刑事罰に問うことはできる?

亡くなった方が受給していた各種の年金(国民年金、厚生年金、障害年金、年金保険など)の使い込みにより生じる刑事責任について解説します。

  1. (1)年金使い込みにより成立する罪

    使い込まれた年金を誰が管理していたかにより成立する罪は異なります。

    • 受給者本人が通帳やキャッシュカードなどを自分で保管して管理していた場合は窃盗罪(刑法235条-10年以下の懲役または50万円以下の罰金)
    • 受給者本人の依頼により使い込みをした人が通帳などを管理していた場合は横領罪(刑法252条-5年以下の懲役)
  2. (2)親族間の窃盗、横領は特例がある

    窃盗罪や横領罪など他人の財産を侵害する罪は、行為者と本人との間に一定の親族関係がある場合には刑が免除されるなど「親族相盗例」という特例があります。

    刑の免除とは、刑事裁判で有罪と判断されても刑が科せられないということです。
    親族相盗例により刑が免除される事案では、警察に被害を申告しても捜査されないことがほとんどです。

    ①刑が免除される親族は、配偶者・直系血族又は同居の親族
    「直系血族」とは、親子関係でつながる親族のことです。本人からみて親や祖父母、子どもや孫のことです。養子縁組した養親子も含まれます。

    「同居が条件となる親族」とは、「6親等以内の血族」「配偶者」「3親等以内の姻族」です(民法725条)。

    「6親等以内の血族」とは、いとこや祖父母の兄弟姉妹、さらにその子どもや孫までを指します

    「3親等以内の姻族」とは、配偶者のおじやおば、おいやめいまで含んでいます

    ②同居していない親族(直系血族・配偶者を除く)は、親告罪となるため、罪に問われる可能性がある
    親告罪とは、告訴がなければ刑事裁判にすることができない罪です。

    同居していない兄弟姉妹などが、年金を使い込んだ場合、家族が警察に訴えれば、親告罪となり、捜査の対象となるでしょう。

  3. (3)成年後見制度により財産管理をする親族は刑が重くなる可能性も

    成年後見制度により選任された後見人等は、家庭裁判所の監督を受けながら財産管理を行います。

    後見人等として選任されると、自分の財産を管理するよりもさらに高度の注意を払って財産管理をしなければならず(これを善管注意義務といいます)、かなり重い職責を負うことになります。

    そのようなことから、後見人等が管理すべき財産を使い込んだ場合は、横領罪よりも重い業務上横領罪(刑法253条-10年以下の懲役)に該当します。

    業務上横領罪も親族相盗例が適用されますが、裁判所は未成年者の後見人(祖母やおば)が貯金を引き出して横領したケースで、親族相盗例の適用を否定しました。

    この判決で示された判断のポイントは、

    • 親族相盗例は「国家が刑罰権の行使を差し控え、親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づく」
    • 親族相盗例は「未成年後見人の後見の事務は公的性格を有する」ことから親族相盗例を適用する余地はない


    というものです。

    成年後見も未成年後見と同じく法律上の義務により本人の財産を管理する立場であり、親族相盗例は適用されないと考えるべきでしょう。

    つまり、同居していた親族が年金を使い込んだ場合は刑が免除されますが、親族であっても家庭裁判所から選任された後見人等が使い込んだ場合は一転して重く処罰される可能性があるということになります。

2、年金使い込みの補填方法その1|遺産分割で調整

年金の使い込みが発覚した場合、民事裁判により回収を図ることもできますが、使い込みをしたのが相続人であれば、遺産分割の中で解決することも可能です。

  1. (1)全相続人の合意があれば遺産分割協議も可能

    使い込みをした相続人も含めて全相続人が合意すれば、使い込み分を精算する形で遺産分割協議を成立させることも可能です。

    遺産分割は、全相続人の合意があれば法定相続分に関わらず自由に分割方法を定めることが可能であり、円満に話し合いができる状況であれば、遺産分割協議(民法907条1項)により解決するのが最も簡便な方法といえます。

  2. (2)特別受益として遺産分割調停をする

    使い込みをした相続人が、被相続人の許可を得ていたなどと主張して遺産分割協議が難航する場合、「特別受益」という考え方を用いて、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることも考えられます

    特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前贈与などを受けた場合、それを相続財産に含めた上で公平な遺産分割をしようという考え方です(民法903条)。

    たとえば、800万円の相続財産を相続人A・Bが2分の1ずつ相続する場合、AとBはそれぞれ400万円ずつ相続することになります。

    しかし、相続人Aが200万円を使い込んでいた場合は、それを相続財産に持ち戻して1000万円とみなした上で、各自の相続分を500万円ずつとし、相続人Aの相続分から200万円を差し引くというものです(Aが300万円・Bが500万円)。

    特別受益に該当する贈与は、住居購入費、事業資金の援助などが当たります。

    生活費の援助も特別受益に当たる場合もありますが、直系血族や兄弟姉妹は相互に扶養義務があり(民法877条1項)、扶養の範囲といえる贈与は特別受益とはなりません

    特別受益と認められるか否かは、被相続人や受贈者の経済力など個別の事情によって判断されるため、同じ金額の贈与でも判断が異なるケースもありえます。

  3. (3)相続開始後の使い込みは、遺産分割での解決が可能に

    令和元年7月から施行された民法の新規定により、相続開始後に遺産が使い込まれた場合、相続財産として存在するものとみなして遺産分割を行うことが可能になりました(民法906条の2)

    使い込みをした相続人以外の共同相続人全員の同意があれば、相続財産とみなすことについて使い込みをした相続人の同意は必要ありません。かつては、相続開始後に遺産が使い込まれた場合は遺産分割外の手続きで回収するほかありませんでしたが、遺産分割の手続きだけで解決を図ることも可能になりました。

3、年金使い込みの補填方法その2|損害賠償請求などにより回収

遺産分割により解決できない場合や使い込みをしたのが相続人ではない場合は、使い込まれた財産を回収する手続きをとらなければなりません。

年金の使い込みは、不当に他人の権利を侵害する行為なので、被相続人には以下の権利が発生します。

  • 法律上の原因がなく得た利益の返還請求権(民法703条-不当利得返還請求権)
  • 使い込みにより生じた損害の賠償請求権(民法709条-不法行為による損害賠償請求権)


これらの権利は、相続人が相続分に応じて権利を取得しますが、使い込みをしたのが相続人ではない場合、遺産分割協議により特定の相続人に相続させることも可能です。

相続人は不当利得返還請求権か不法行為による損害賠償請求権のいずれかを行使することが可能ですが、時効が成立する年数に違いがあります。

  • 不当利得返還請求権の時効
    使い込みが発覚してから5年/使い込みから10年
  • 不法行為による損害賠償請求権の時効
    使い込みが発覚してから3年/使い込みから20年


使い込みをした人物が任意に支払いをしない場合は、民事訴訟により最終的な解決を図る必要があります

4、弁護士に遺産相続のサポートを依頼するメリット

相続で問題が発生したら、弁護士に相談することをおすすめします。ここでは、弁護士に依頼することのメリットをご説明いたします。

  1. (1)相続問題のサポートは法律の専門家である弁護士が適任

    遺産分割は法律に基づく手続きであり、問題が生じた場合は法律に従い解決しなければならず、法律の専門家である弁護士は最適のサポート役といえます。

    また、遺産整理や書類の取り寄せ、家庭裁判所で行う手続き、使い込まれた財産の回収手続きは、すべて弁護士が代理人として行うことが可能です。

  2. (2)使い込みに関する資料の収集は、個人の方では限界がある

    年金など相続財産の使い込みが疑われる状況を発見した場合、資料を収集して、事実関係を確認する必要があります。

    年金の使い込みが疑われる場合、まずは年金が振り込まれていた口座の入出金明細表や預貯金払戻請求書、委任状などの帳票を確認します。

    入出金明細表は金融機関に相続人が請求すれば開示されるのが一般的ですが、預貯金払戻請求書、委任状などの帳票は裁判所からの照会でなければ開示されないことが多いようです。

    弁護士の要請に基づく弁護士会の照会(弁護士法23条の2)に応じる金融機関もありますが、応じない場合は別途法的な措置を講じる必要があります。

    預貯金払戻請求書の筆跡などを確認しなければ、実際に誰が預貯金を引き出したのかわからないことが多く、その調査もかなりハードルが高い作業といえます。

    そのハードルの高い作業をおひとりでするとなると、非常に大変です法律の専門家である弁護士のサポートが欠かせない、といえるでしょう。

5、まとめ

年金が使い込まれていた場合の刑事責任は

  • 受給者と同居していた親族には問えない
  • 受給者と同居していない親族(直系親族と配偶者を除く)は告訴をする必要がある
  • 後見人等に選任されている場合は業務上横領罪に問われる


ことになります

使い込まれていた年金を取り戻す手段は、使い込みをした人物が相続人である場合は遺産分割により精算することも可能な場合がありますが、最終的には民事訴訟によるほかありません。

ベリーベストグループには、税理士・司法書士も在籍しており、連携してお客さまの相談に対応するワンストップ・サービスを提供しております。

また、相続に関するご相談は、原則として初回は無料で受け付けております。

相続の問題に時間を割けない、何から手をつければいいのかわからないという場合は、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスにお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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