残業代請求は退職後でも可能? 弁護士が解説 (サービス業:美容・アパレル・スーパー編)
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愛知県は東京や大阪に続く大都市であり、食べ物や歴史的建造物など有名な物も多くあります。
そのため飲食店などサービス業も盛んとなっておりますが、それに伴いサービス業で働く人達から残業に関するお悩みも数多く寄せられているのが現状です。
今回は、「退職してしまった後でも残業代は請求できるのか」というお悩みを解決していきたいと思います。美容業界や小売業界などのサービス業全般で、残業代請求をどのタイミングで行うのがよいのかについて見ていきましょう。
1、退職後に残業代の請求は可能?
残業代をもらうことが出来ずに悩んでいる人は、特にサービス業で多く見られます。
退職してから「やっぱり残業代を請求しておけば良かった」と後悔する人も少なくありません。
未払いの残業代請求は、退職後でも可能なのでしょうか?
また、退職届を出す前と後で残業代請求の方法やもらえる金額に差があるのかについても、詳しく見ていきましょう。
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(1)退職後に残業代の請求はできる?
退職後に「残業代を請求したい」と思っても、「請求なんて出来ないもの」と諦めている人も多いでしょう。
しかし、退職後でも残業代を請求することは可能です。
在職中であれば上司や会社に言いにくいかもしれませんが、退職後であれば気にすることなく交渉もしやすくなるでしょう。
ただし、未払い残業代は退職後いつでも請求できるわけではありません。
労働基準法第115条には「賃金や災害補償その他の請求権は2年間」と定められています。
残業代はここでいう「賃金」に含まれるため、2年間が時効ということになるため、過去の残業代を請求しようとした場合、2年前までの請求しか出来ないということになります。
つまり、残業代請求をためらう期間が長ければ長いほど、請求できる未払い残業代は時効によって少なくなってしまうのです。 -
(2)残業代の請求は退職前と退職後ではどちらが多い?
それでは、実際に残業代の請求は退職前と退職後のどちらで多く行われているのでしょうか?
退職してから時間が経つほど請求できる残業代は減ってしまうので、長年残業代が支払われずに時間外労働を続けていた場合は、在職中に請求すれば2年分の残業代は得られる可能性があります。
逆に、残業代請求を退職後もためらい続けた場合、もし退職から半年経っていれば1年半の残業代請求しか出来ないという結果になりますので、2年分丸々残業代を受け取れる方が必然的に金額は大きくなる可能性があります。
しかし、「未払い残業代を請求しよう」と考えても、実際にはなかなか言い出しにくいものです。特に在職中の場合は、請求した翌日からの会社での自分の立場や周りの対応などを考えると、なかなか請求へと踏み出すことができない人が大半ではないでしょうか。
そのため、退職して会社での立場や周囲の目を気にする必要がなくなってから請求する人の方が多い傾向にあります。
2、退職前と退職後、残業を請求するのに違いはある?
退職前と退職後で、残業代請求のしやすさには違いがあるのでしょうか?
それぞれのメリットとデメリットを比べてみましょう。
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(1)退職前に請求するメリット・デメリット
メリット
- 証拠を集めやすい
- 残業代請求に何よりも大切なものは、就業時間外に仕事をしていたことを示す客観的な証拠です。タイムカードや勤怠管理ソフトで記録している労働時間のデータのほか、就業規則、雇用証明書であれば、客観的な証拠として採用されやすい傾向があります。
こういった証拠はやはり在職中の方が集めやすいでしょう。
しかし、退勤を打刻した後も働いていたケースなど、勤怠データが正しい記録ではないケースもあります。
そういった場合には、所定労働時間外にどういった仕事をしていたのかという内容がわかる業務日誌などの記録が証拠となります。
また、締め切りや与えられた仕事量などが分かるメールなどがあれば、就業時間内に仕事を終えることが出来ずに残業していたということを立証できる可能性があります。
- 残業代請求の消滅時効は給与支払い日から起算
- 前述の通り、残業代は2年間請求しなければ権利が消滅してしまいますので、金額のことだけを考えると、退職して数ヶ月経ってから請求するよりも、在職中に請求した方が、より多くの残業代を受け取れる可能性があります。
デメリット
- 会社や上司から不当な扱いを受ける可能性がある
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もちろん残業代請求は法的には正しいことであり、残業代を支払われずに働いている誰もが行うことができます。
しかし、残業代をまともに支払わない会社にとっては、「残業代を請求されるのは嫌なこと」と考えられることが多いでしょう。
そのため、在職中に残業代請求を行って会社や管理監督者から冷遇されたり、不当な扱いを受ける可能性もあります。
そういった時は、不当な扱いを受けたことを示すボイスレコーダーでの録音などの証拠を集めておくと、訴訟を起こしたり会社と交渉したりすることもしやすくなります。
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(2)退職後に請求するメリットとデメリット
メリット
- 気兼ねなく請求しやすい
- 退職後に請求すれば、もうその会社にはいないので、会社や管理監督者などの目を気にすることなく、未払いの残業代請求を行えます。在職中の場合は請求後の待遇も気になりますし、残業代を請求したことにより、パワハラや職場いじめに遭う可能性がないとは言い切れません。
そのため、精神的に強気な気持ちで請求できることが、退職後に残業代を請求するメリットであると言えるでしょう。
- 遅延損害金が退職前より多く請求出来る
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未払いの残業代には「遅延損害金」という、遅れて支払うことに対する損害金を請求することが出来ます。この遅延損害金は、在職期間の場合は利率が6%となりますが、退職後は利率が14.6%となります。
つまり、退職後に請求したほうが遅延損害金は多く請求出来るのです。
デメリット
- 過去の残業代が消滅時効により請求できなくなる
- 退職後は時間が経つほど、消滅時効により、請求できる残業代が減ってしまいます。
月給制の場合は退職から毎月消滅時効によって請求できる残業代が減っていくと考えると、退職してすぐに残業代請求することをお勧めします。
- 証拠が手に入りにくい
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退職してしまうと社内にある証拠を集めることが難しくなります。
タイムカードや就業規則、雇用契約書など以外にも社内のメールやパソコンのログイン時間なども証拠となり得ますが、在職中でないと手に入れることが出来ません。
出来る限り退職前に証拠を集めておくようにしましょう。
3、退職後の残業代請求はスピードが命!なるべく早く弁護士へ相談を
残業代請求は時効があるため、なるべく早く行動へ移す必要があります。
しかし自力で請求を行うと、証拠の収集や残業代や損害金の計算などに時間がかかりますし、会社がまともに取り合ってくれない可能性もあります。
そのため、弁護士に依頼をして一刻も早く請求を出来るように準備をしましょう。
残業代請求の手続きを弁護士に依頼することでスムーズに手続きが進められるだけでなく、ご依頼者様にとって有利な状況となるようにサポートいたします。
退職してから未払いの残業代を請求したいと考えている場合も、在職中ではあるものの将来的に退職して残業代を請求したいと考えている場合も、なるべく早く弁護士へご相談されることをおすすめします。
退職前からご相談頂いていた場合には、退職前に証拠収集等行える可能性があり、退職後に、その証拠をもって気兼ねなく、残業代を請求できることが多いです。
4、まとめ
愛知県名古屋市では、多くのサービス業で働く人達が退職後の残業代請求について悩んでいます。しかし、時間が経つほど請求できる金額は減ってしまうため、退職後の残業代請求は、早ければ早い方がよいのです。
ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスでは、未払い残業代でお悩みの方のご相談を数多く受け付けております。「未払いの残業代を請求したい」「自分だけ残業代請求できるか不安」などのお悩みを抱えている方は、ぜひご相談ください。
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