残業代請求したくてもタイムカードがない! 請求できない? (サービス業:美容・アパレル・スーパー編)
- 残業代請求
- 残業代
- 請求
- タイムカード
中日ドラゴンズや名古屋グランパスなど、プロスポーツ球団も本拠地を置く大都市である名古屋には、試合の応援や観光に訪れる人も多く、日々賑わっています。人の動きが多いことに加え、名産や名物が多いことから多数の飲食店がしのぎを削っています。ライバル店との差別化を図るために新商品の開発に精を出したり、隅々まで掃除をしたりと、営業時間外に働くことも多いのではないでしょうか。
本来であれば、営業後の掃除や会議、営業前の仕込みなどの時間にも時間外給与が発生するのですが、サービス残業として残業代が支払われないことに悩んでいる労働者も多いはずです。
そこで今回は、残業代の請求に関して、タイムカードがなく、出勤や退勤の時間が数字として残っていない場合について解説していきます。
1、タイムカードがないお店や会社の残業代請求は?
-
(1)タイムカードでの勤怠管理は義務?
タイムカードというのは、労働者の出勤時間と退勤時間を記録して、これをもとに勤務時間を明確にさせる仕組みです。このデータは「仕事をした証拠」になるので、適正な給料が支払われるために役立ちます。それではタイムカードは会社の義務なのでしょうか。
実は、法律上はタイムカードの導入については言及されていません。つまり、違法ではないのです。
ただし、労働基準法で労働者の働く時間は原則1日8時間以下、1週間で40時間以下と定められています。法律上定められた残業代を適正に支払うために、会社はタイムカードではなくても、その他の何らかの方法で勤怠管理を行う責務があります。
タイムカードのない会社で働いている人は就業規則を確認してみると良いでしょう。もともとの募集要項には労働時間はどのように書かれていたでしょうか。
勤怠管理が行われていない企業はいわゆる「ブラック企業」に該当する可能性が高いです。 -
(2)タイムカードがなくても残業代の請求は可能?
結論から言うと、タイムカードがなくても残業代の請求は可能です。
タイムカードも勤怠管理をするツールのひとつにすぎないので、タイムカードが絶対ではありません。請求する際に必要になるのは、タイムカードに代わる「仕事をした証拠」です。
会社によっては直接交渉したら支払ってもらえることもあります。実際に働いた時間を計算すると、どれくらいの金額になっているかもわかりますので、「残業代チェッカー」でおおよその金額を計算してみるとよいでしょう。
残業代チェッカーはこちら
実際に働いた時間を計算すると、どれくらいの金額になっているかもわかるでしょう。
※本チェッカーは、あくまでおおよその目安金額を示すものです。具体的な残業代の金額は、勤務形態、雇用契約の内容、残業時間の証拠などに基づき、算出する必要があります。具体的に知りたい場合には、弁護士にご相談をいただくことを進めします。
2、残業代請求に有効な証拠の作り方
タイムカードがない職場において、会社に残業代を請求するにはどのような準備が必要なのでしょうか。労働時間を示すための有効な証拠を残す手段について紹介していきます。
-
(1)日記をつける
もっとも簡単な方法は、労働時間を記録するための日記をつけることです。
何時に出勤し、何時に退社したのかがわかると良いでしょう。ポイントは毎日欠かさずに日記をつけることです。証拠としての効力を高めるために面倒でも毎日続けましょう。
内容は、具体的に書けば書くほど証拠としての有効性が高まります。ボールペンを使い、手書きで、詳細かつ具体的に記録に残しておきましょう。
最近ではスマホなどでも記録できますが、デジタルデータは後からデータの改ざんができてしまうため、場合によっては証拠として認められない可能性があります。
アナログ的な方法ですが、後から修正ができない「手書き・ボールペン」での記録のほうが証拠として認められやすいため、お勧めです。 -
(2)家族とのメールやLINEのやりとり
メールやLINEの記録のメリットは送信した時間が記録されることです。
手書きの日記ではいつ記入したものか判断しにくいですが、メールなどの場合は時間が明確なので証明力が高くなります。退社直後に「これから帰る」などと連絡すると労働時間がわかりやすくなります。毎日続ければ証明力はさらに高まります。 -
(3)業務日報をコピーする
業務日報を提出する会社の場合は、提出前に自分用にコピーを記録しておくと良いでしょう。印刷でもスマホで写真を撮っておくでもかまいません。
悪い会社の場合は後で記録を書き換えられる可能性もあるので、提出前というのがポイントです。 -
(4)上司とのメールを保存しておく
家族との連絡よりもさらに効力の高い証拠が、上司とのメールです。
仕事終了時に連絡しておくと、有力な証拠になります。これに関しても毎日続けることが大切です。 -
(5)上司の発言を記録する
残業代が支払われていないことを示す証拠として、上司やあるいは社長の発言を日時や場所とともに記録しておくと有力な証拠になります。
-
(6)パソコンのログイン履歴を示す
事務作業などのパソコンを用いる仕事では、メール履歴がなくてもパソコンのログイン履歴が労働時間を証明するものになります。
特に1日中パソコンを使用している人なら有力な証拠になるでしょう。ときどきしかパソコンを使わない仕事の場合はいつ使用したのか日時が分かると証明力が高まります。 -
(7)位置情報の記録
最近ではスマホがあれば使用者の位置情報がわかるようになっています。
GPSの履歴や防犯カメラの記録は会社内にいたことを示す証拠になります。位置情報だけでは証拠としての効力はあまり期待できませんが、他の証拠を補強することが可能です。 -
(8)レシートなど
仕事上で受け取ったレシートから日時がわかります。
他にも取引先の帳簿など、仕事をしていた時間が記録されているものは証拠として考えられます。 -
(9)周囲の証言
「いつも○時まで仕事をしている」という同僚の証言、取引先の「いつも○時頃に商品を受け渡ししています」といった周囲の証言も証拠になります。
このように証拠になるものはたくさんあります。
これらと合わせて給与明細書で残業代が未払いであることを主張しましょう。
ただし、もっとも大切なことは、自分の働く会社がおかしいと感じたら労働基準監督署や労働組合、弁護士などの専門家に相談することです。
3、弁護士に相談すれば証拠がなくても残業代を請求できる?
仕事内容や状況によっては残業の証拠を用意できないこともあるでしょう。その場合は自分の記憶や推定から残業時間をある程度計算して残業代を請求することになります。
ただし、裁判では証拠で勝負することになるので、証拠がないと請求は認められにくいです。
やはり、可能な限り証拠を集める必要があると言えます。証拠が乏しいと感じても諦めずに弁護士に依頼してください。
法律で会社は勤務記録を3年間保存することを定められています。
弁護士を通じて会社に勤務記録などを開示させることによって残業代を計算することができます。会社が開示に応じないときは裁判を起こして、裁判所から開示するように命令を出してもらうことが可能です。
ですが、中には法律を無視し勤務記録を保存していない会社や、勤務記録自体を改ざんしているような悪質な会社も存在します。
やはり、労働時間の証拠はご自身でしっかりと残しておくに越したことはありません。
4、まとめ
労働に見合った給料をもらうのは当然の権利ですから、残業代請求を遠慮する必要はありません。ただし、事前に働いた証拠を用意しておくことが重要です。
会社に直接交渉する場合でも、裁判を起こす場合でも自分の残業を証明できるかがポイントになります。どうしても自力では証拠を準備できないという場合でも、諦めずに弁護士に相談してください。
タイムカードのない会社ではトラブルも起こりやすいです。残業代請求に関するトラブルは、ベリーベスト法律事務所名古屋オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています