残業代請求に必要な内容証明とは? 書き方のルールと注意点を解説

2018年08月24日
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残業代請求に必要な内容証明とは? 書き方のルールと注意点を解説

愛知県名古屋市は、手羽先や味噌カツなどグルメな街としても有名です。
そのため飲食業は盛んとなっており、愛知県の飲食店数は全国3位となります。(経済産業省の商業統計調査のデータに基づく)
※出典:経済産業省「業種別の企業数」

最近では、大手飲食チェーン店でサービス残業が当たり前のように行われていたことが明るみに出るなど、未払いの残業代問題については世間でも注目を浴びる話題でありますが、飲食店の多い名古屋市内でも残業代などについてお悩みを抱えている方は少なくありません。

会社に対して残業代を請求する方法のひとつとして、内容証明郵便を送るという方法がありますが、相手側に送る場合に知っておきたい基本的な知識について、詳しく解説いたします。

1、残業代の請求における内容証明とは?

飲食、美容、アパレル、ホテル、スポーツジムなどサービス業において、長時間の時間外労働が行われることは珍しいことではありません。しかし、時間外労働をしているにも関わらず、正当な手当をもらうことが出来ずに泣き寝入りしている方も中にはいます。
そういった時間外労働を残業手当として請求するには、内容証明を雇用主へ送ることが有効となります。
内容証明とはどういった郵便物であり、相手側に送るとどういった効果があるのかについて見ていきます。

  1. (1)内容証明と配達証明

    未払いの残業代を請求する場合、配達証明付きの内容証明郵便で会社側へ送ります。
    内容証明と配達証明は異なるものであり、残業代請求ではどちらも利用する必要があります。

    内容証明は、誰宛にどんな内容でいつ発送したのかを証明することが出来る郵便です。
    内容証明郵便を使用することで、後から請求をしたかどうかという争いになった場合に、郵便局が内容を証明してくれるため証拠として使うことが出来ます。

    一方で、なぜ配達証明も必要になるのかというと、内容証明は「いつ配達されたか」ということが証明できない郵便だからです。
    配達証明は配達日を証明することができるため、会社側から督促を受け取っていないと言われないようにするためにも必要となります。
    つまり、内容証明と配達証明をセットで利用することによって、「いつ誰宛に督促を発送し、いつ相手に配達された」という相手の手に渡る最後までを証明することが出来るようになるのです。

  2. (2)内容証明を送る目的

    時間外の労働を行った場合、労働者は時間外手当として賃金を受け取ることが出来ます。

    労働基準法37条には「時間外労働、休日に労働した場合は割増賃金を支払わなくてはならない」と法律で定められており、違反した場合には「懲役6ヶ月又は30万円以下の罰金」に科されます。そのため、労働者が会社に対し未払いの残業代を請求することは、正当な権利といえます。

    残業代請求の方法はいくつかありますが、そのうちのひとつが、内容証明郵便による請求です。会社との話し合いが上手くいかなかった場合に、書面にて請求を行う方法です。

    内容証明を送ることは単なる意思表示だけでなく、時効を中断させるという効果もあります。
    残業代の請求権は2年で時効により消滅してしまうため、時効が差し迫っている場合には、内容証明郵便を送ることにより、請求できる残業代の金額が減ることを防ぐことができます。

    ただし、内容証明郵便を送るだけでは時効を止めることはできません。催告から6ヶ月以内に訴訟を起こすことにより、時効が中断されるので注意が必要です。

    また未払い残業代には、遅延損害金として利息を付けることも出来ます。
    遅延損害金は正当な金額でなければいけませんので、計算が難しい場合は弁護士に相談して適切な額を提示して、未払い残業代と共に請求します。

2、内容証明の書き方

それでは、実際に残業代を請求するにあたって、内容証明をどのように書けばいいのか解説していきます。
書き方を間違えたり、準備が不足したりすると、何度も郵便局へ足を運ばないといけなくなるため、あらかじめ書き方を確認しておくと安心です。

  1. (1)内容証明のルール

    請求を送る際に準備する請求書ですが、自由に好きなように書いてもいいわけではありません。
    内容証明には決められたルールがあるので、ルールに沿って書く必要があります。

    • 横書きの場合
    • 1行20文字以内、1枚につき26行以内、または1行26文字以内で1枚20行以内、または1行13文字以内で1枚40行以内

    • 縦書きの場合
    • 1行20文字以内、1枚につき26行以内


    この書き方のルールを守っていれば用紙の枚数は自由ですし、何字までという制限もありません。しかし、書き方を守れていない場合は受け付けてもらうことが出来ないので、再度書き直しが必要となります。

    また、請求書の書き方以外にもいくつか守らなければならないルールがあります。
    以下の内容を確認しながら準備してください。

    • ホチキスの留める位置について
    • 請求書が1通あたり2枚以上になる場合、左側2ヶ所にホッチキスを留めます。
    • 封筒に入れる際に3つ折りにするので、ホッチキスの位置も考えて留めなくてはいけません。

    • 契印について
    • 請求書が1通あたり2枚以上になる場合、契印を押す必要があります。
    • 請求書が1枚の場合は必要ありませんが、2枚以上の場合はページの抜き取りやねつ造を防ぐために契印を押します。
    • ページを開いて折れ曲がりの付く部分に印鑑を押します。

    • 用意する部数について
    • 請求書は1部だけではなく、3部必要になります。
    • 相手に送付する用だけでなく、郵便局が証明するための保存用と自分の手元に保管しておく用の3部です。

  2. (2)送付の際の注意点

    内容証明のルールに従い請求書を準備した後、郵便局で送付する際に注意したい点がいくつかあります。
    送付の際の注意点は以下となります。

    ①持ち込み郵便局を確認しておく
    全国どの郵便局でも内容証明郵便を取り扱っているわけではありません。
    事前にホームページや電話で取り扱いのある郵便局を確認しておく必要があります。

    ②宛名書きは請求書表記と一緒にする
    受取人と差出人の宛名書きですが、請求書に記載した表記と同様の表記でなければ受理されません。そのため、番地の書き方や数字を英数字にするのか漢数字にするのか統一する必要があります。

    ③封は閉じずに郵便局へ持ちこむ
    郵便局に持ち込む際は封をしていない状態で持ちこみます。
    郵便局の窓口で受理された後に封入するので、請求書も封へ入れずに持っていきましょう。

    ④内容証明には期限がある
    内容証明にも期限があり、発送日から5年となります。
    5年以内であれば再度証明を受けることもでき、請求書の閲覧も可能です。

    ⑤金額明記について
    残業代や遅延損害金の金額を明記するには、タイムカードなど証拠集めを確実に行わなければいけません。
    しかし、サービス業の場合は、残業代の金額計算に時間がかかります。
    特に美容師は、練習の時間なども残業に当たるため漏れることなく証拠を集める必要があり時間がかかりますが、消滅時効もあるので早めの段階から行動に移す必要があります。

3、内容証明を送るのはどんなとき?

まずは、請求する残業代や遅延損害金について会社側と話し合います。
この時点では内容証明は必要ありません。任意で支払ってもらうことが出来れば問題ありませんが、話し合いではまともに取り合ってもらえないというケースは少なくありません。そういった場合に内容証明を送付します。

内容証明は、未払いの残業代を受け取るために会社と交渉したいという意思表示であり、訴訟の意志もあるという通知書です。
労働基準監督署に残業代に関する相談に行ったとしても、まずは内容証明の送付を勧められます。内容証明の送付によって労働者側の本気度を会社側が知ることとなるため、和解が進むこともあります。

しかし、内容証明を送る段階で円満な解決は難しいと考えて、なるべく早い段階で弁護士に依頼することをおすすめします。
和解が見込めない場合や、期限内に回答書が届かない場合には裁判所に労働審判を申したてることとなります。

4、まとめ

サービス業では、違法に残業代が支払われないということが、しばしば問題として取り上げられることが多いですが、残業代は労働者が受け取ることのできる当然の賃金です。

ベリーベスト法律事務所では、未払いの残業代における案件の実績も多いので、全国にいるベリーベストの弁護士と知識やノウハウを共有しています。
様々なケースにも対応が可能となっておりますので、残業代に関するお悩みのある名古屋市周辺で勤務されている方は、お気軽にご相談ください。

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