サービス業に多い残業未払い。残業代請求に必要な証拠と集め方とは
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「ひつまぶし」や「ういろう」などで有名な愛知県名古屋市は、美食の町としても知られていますが、都心部に人が集まりやすいということもあり、名古屋市内には飲食店のほかにも、ヘアサロンやエステサロンなどのサロンなども多くあります。
また、飲食チェーン店やサロンなどのサービス業は、残業代の未払いについてしばしばニュースでも取り上げられることが多く、社会問題となっていますが、実際に未払いの残業代を請求するには、どういった証拠が必要なのでしょうか。
残業代請求に必要な証拠について、弁護士が詳しく解説いたします。
1、証拠を集めるにあたって
残業代請求において、重要となるのは証拠の収集です。まずは、証拠の重要性などについて説明いたします。
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(1)証拠の重要性について
残業代をさかのぼって請求したい場合、重要なのは「証拠」です。
これは、どんな交渉や裁判でも同じことが言えますが、まずは証拠がなければ、相手側と交渉することができません。
もし、あなたが長時間に及び残業を行っていたとしても、客観的な証拠が何一つなければ、企業側も裁判所もあなたの主張を受け入れることはありません。
「証拠を集めているけど、これ以外に集めた方がいいものは?」「この証拠は有効なの?」などの疑問があれば、弁護士に相談したうえで、証拠集めをするとよりスムーズに残業代を請求できる可能性があります。 -
(2)会社や裁判所に対して何を証明すればよい?
①雇用内容について
相手側の企業と請求者側である労働者が、どういった雇用契約を締結しているのかを証明する必要があります。その雇用内容を証明するのが「労働条件通知書」と呼ばれるものです。
労働条件通知書とは、企業と労働者が労働契約を締結する際に交付する、基本的な勤務条件(時間、場所や内容)や給与などについて記載した文書のことを指し、個別に労働者に関する労働条件を記載する文書です。
一方で、就業規則については、全労働者が守るべき規則についての記載と、給与計算の方法や基本的な労働時間について記載するものを指します。就業規則は、場合によっては雇用契約書の代わりとなることもありますので、必ず内容を確認する必要があります。
②残業の事実
残業をしていることを証明するもののことです。一般的に「タイムカード、出勤簿」などが該当します。その他、現在では有効とされているのがパソコンの利用時間などです。
これは、パソコンの仕組みやシステム的な事が絡んでしまいますので、簡単に取得することが難しいのが実情です。
③残業代が支払われていないこと
こちらは給料明細などで証明することができます。忘れずに手元に保管しておくと良いでしょう。 -
(3)証拠の価値を決めるのは裁判所
自分が会社にいた事を証明できるものはすべて証拠として集めておきましょう。
集めたものがすべて有効とは言い切れませんが、最終的に裁判所が有効と判断するための材料のひとつになるということです。有効、無効の判断はせず、集められる物は集めるということが大事です。
2、残業代請求の証拠として有効なものは?
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(1)集めておくと良い6つの証拠
先程も少しご紹介していますが、改めて残業代請求をする際に有効となる証拠について整理していきましょう。
- ①就業規則
- ②タイムカードや出勤簿
- ③労働契約(書)
- ④給料明細
- ⑤シフト表
- ⑥記録内容から残業をしていた時間数が推測・確認できる物
●業務上のパソコン(PC)に残っているログイン・ログオフの記録
●残業時間中に送信した電子メールの記録(記録)
●残業時間中に使用した携帯電話のメールの記録
(仕事の内容である事が証明できると良い。ただし、推測できる物でも可)
●入退館記録
これらは、その時間に勤務していた事を証明または推測できるものとして有効になります。 -
(2)自分のメモは証拠として有効となる?
なかなか有効な証拠が集められそうにない場合には、自ら出勤状況を書き記したメモなどを証拠として提出したいと考える方もいらっしゃると思います。
メモ自体は、証拠として提出できますが、メモだけでは証拠能力としては低いと判断される場合が多いです。しかし、さまざまな証拠のうちのひとつとして提出するのは有効ですので、できる限りコツコツと集めていきましょう。
メモに書く内容は、「出勤時間」「退勤時間」を基本として、メモの信頼性を高めるために、「業務内容」も記載しておくとよいでしょう。サロンなどであれば、「〇〇様のご予約 △△時間から、□□の施術」、アパレルであれば「退勤処理後、〇時~〇時まで閉店作業」など、具体的に記載することで信頼性が高まります。
大きく「事務処理」などとしてくくらず、何をしていたのか具体的に書くことを意識すると良いでしょう。
3、こんなケースは残業代請求できる?時効や名ばかり店長など
退職後、時間が経ってしまっているケースや、いわゆる名ばかり店長というケースでは、残業代請求が認められるのかどうか気になる方もいらっしゃると思います。
ケース別にそれぞれ残業代請求が可能かどうか見ていきます。
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(1)残業代請求の時効について
未払いの残業代請求には時効が存在します。
- 労働基準法第115条
- この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
と規定されており、残業代請求に関する請求権も2年と定められています。
ただし、残業代を支払わない企業側が悪質であるケースや、不法行為に該当すると判断される場合には、本来時効消滅している期間の未払い残業代等相当部分につき、不法行為を理由として事実上残業代請求を認めたケースもあります。(杉本商事事件・広島高裁平成19年9月4日)。
残業代請求権の時効が差し迫っている場合には、相手に内容証明郵便を送り、提訴などの時効中断措置をとれば、時効を中断することが可能です。詳しくは、弁護士までご相談ください。 -
(2)名ばかり店長について
そもそも名ばかり店長(管理職)とは、独自の権限や決定権がないにも関わらず、会社の判断で管理職と決められ、労働基準法41条2号の「管理監督者には残業代を支払わない」という解釈をもとに、会社から残業代を支払われないことを指します。
労働基準法において規定されている、「管理監督者」とは、下記のような点に当てはまっている必要があります。
- チームや部署を管理・統括する立場にある
- 会社の経営方針などに関わっている
- 自身の労働時間や業務量を裁量的に操作できる
- 他の従業員と比較して、賃金などでしっかりとした待遇を受けている
こういったケースから外れている場合には、名ばかり店長(管理職)である可能性が高く、違法に残業代が支払われていない可能性があります。
4、まとめ
未払いの残業代請求については、最近ニュースでも注目されている通り、会社に対して残業代請求を行うということは、それほど珍しいことではありません。
もし、会社から残業代を支払って貰えない環境にいる場合には、未払いの残業代を請求する時に備えて、日頃から証拠を集めておくと良いでしょう。
「証拠の収集方法について相談したい」「これまで自分が集めた証拠に加えて、もっと別の証拠が必要であれば知りたい」というご相談なども受け付けておりますので、未払いの残業代でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご相談ください。
名古屋オフィスの弁護士があなたの残業代請求をサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています