サービス業(アパレル)の残業代計算方法とは? 弁護士が詳細を解説

2018年08月06日
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サービス業(アパレル)の残業代計算方法とは? 弁護士が詳細を解説

和菓子やういろうが有名な愛知県名古屋市。名古屋の都心部には、旅行や出張などで訪れる方も多く、飲食店やホテルなども多くあります。一方、名古屋市ではパートが集まりにくいという実態があり、飲食店や宿泊業などのサービス業をはじめとした、幅広い業種においての人材不足問題を外国人労働者が支えています。

しかし、サービス業は長時間労働を強いられるケースも多く、飲食店やエステサロンの従業員が未払いの残業代を請求するため訴訟を起こすケースも多く、社会問題となっています。

「もしかしたら未払いの残業代があるかも」「未払いの残業代を請求したい」というサービス業の方に向けて、残業代の計算方法について弁護士が解説いたします。

1、一般的な残業代の計算方法

まずは、基本的な計算方法を整理していきましょう。

  1. (1)残業代の計算式

    時間外労働の計算式

    • 時間外労働の時間数(時間)×1時間あたりの賃金(円)×1.25(※)
    • 1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合は、その超える部分については、1.5
    • (ただし、中小企業については、当面の間、1.25)


    「(法定)時間外労働」とは、労働基準法で定められた労働時間(原則は1日8時間、1週40時間)を超えて行われた時間のことです。

    ※中小企業の定義
    小売業=資本金が5000万円以下又は常時使用する労働者が50人以下
    サービス業=資本金が5000万円以下又は常時使用する労働者が100人以下
    卸売業=資本金が1億円以下又は常時使用する労働者が100人以下
    その他資本金が3億円以下又は常時使用する労働者が300人以下

    法内残業の場合
    • 法内残業の時間数(時間)×就業規則等で定める1時間あたりの単価(円)


    「法内残業」とは、会社が定めた所定労働時間を超え、労働基準法で定められた労働時間以内の範囲で行われた残業になります。

  2. (2)残業時間を出す

    法定労働時間について
    前提となるのは、1日8時間という考え方です。この8時間を法定労働時間と呼びます。
    法定労働時間を過ぎて業務を行う為には、一定の休憩時間を取り業務を行うことになります。

    時間外労働について
    ただし、法定労働時間を超えた時間がすべて違法な時間外残業になるわけではありません。企業と従業員の代表との間で「36協定」を定めている場合がこれに当たります。
    36協定とは、労働基準法の第36条に規定されている内容を基にしていることから、「サブロク協定(36協定)」と呼ばれています。

    具体的には、36協定を締結して労働基準監督署に届け出ることによって、法定労働時間を超えて労働した場合にも、法定休日に労働した場合も違法(労働基準法違反)にはなりません。仕事の繁忙期が季節的にある事業などを営む場合に締結することになります。

  3. (3)基礎賃金の計算

    残業代を計算する元となるのが「基礎賃金」と呼ばれる賃金です。この基礎賃金にもルールがあります。

    以下は、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されているなどの理由により、基礎となる賃金から除外することができます。
    基礎賃金から除外できるもの

    1. ①家族手当
    2. ②通勤手当
    3. ③別居手当
    4. ④子女教育手当
    5. ⑤住宅手当
    6. ⑥臨時に支払われた賃金
    7. ⑦1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
    8. 参考:厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金は?」(PDF;1.65MB)


    大まかな自分の残業時間を知りたい場合には、ベリーベスト法律事務所の残業代請求サイトに計算式が掲載されています。ぜひご活用ください。

    残業代チェッカーはこちら

    ※残業代チェッカーは、あくまでおおよその目安を示す計算ツールです。具体的な残業代の金額は、雇用形態など個別のご事情を考慮して計算をする必要がありますので、弁護士へご相談ください。

2、変形労働時間制の残業代の計算方法

  1. (1)変形労働時間制とは

    サービス業の多くは夜勤などのシフトが含まれる業種のため、この変形労働時間制を取り入れています。

    変形労働時間制とは、一定の単位期間について、労働基準法上の労働時間の規制を、1週および1日単位ではなく、単位期間における週あたりの平均労働時間によって考える制度のことです。
    つまり、1ヶ月単位などで労働時間を定め、その中で勤務をする場合などがこれにあたります。たとえば、交代制勤務の場合には、2日勤務をして1日休むなどです。

    1ヶ月という単位で変形労働時間制を採用する場合には、その労働時間は下記の図の様に定められています。

    1ヶ月の日数 法定労働時間の上限(週40時間)
    31日 177.1時間
    30日 171.4時間
    29日(うるう年の2月) 165.7時間
    28日(2月) 160時間


  2. (2)変形労働時間制における残業の定義

    変形労働時間制で残業を計算する場合の基礎賃金は、すでにご紹介している内容と同一になります。基本的な考え方は以下の通りです。

    1. ①1日について8時間を超える労働時間を特定している日については、その時間を超えた部分
    2. ②1週間について40時間を超える労働時間を定めた週については、その時間を超えた部分が時間外労働となります。ただし、ダブルカウントとなるので、①で時間外とした部分を除いた残りの時間。
    3. ③1ヶ月(又は変形期間内)であらかじめ決められた所定労働時間をこえた部分を時間外とします。ただし、ダブルカウントとなるので、①②で時間外とした部分。

  3. (3)残業代の割増率

    もしも週1回の休日に勤務させたときは1.25倍の残業代ではなく、1.35倍の割増賃金(休日勤務手当)を請求することができます。

  4. (4)残業時間に含まれるケース

    サービス業において日常で行われている以下の項目などは残業時間に該当します。

    1. ①オープン前の掃除や接客の準備
    2. ②美容業におけるオープン前、閉店後のカットの練習
    3. ③閉店後の清掃や後片付け


    つまり、お店の営業時間外でお店を運営する上で必要な時間が労働契約上の勤務時間に含まれていない場合には、その時間が残業時間となります。

3、フレックスタイム制の残業代計算方法

変形労働時間制と似ているのが、フレックスタイム制です。こちらについても解説していきます。

  1. (1)フレックスタイム制とは

    フレックスタイム制を導入すると、労働者が始業・終業の時間を選択することが可能になります。企業側はコアタイムと呼ばれる必ず勤務をする時間を設ける必要性があります。ただし、このコアタイムを設けない場合には始業・終業時刻を含む勤務時間全体を労働者が選択することができます。企業側がコアタイムを設けた場合には労働者はコアタイムの時間内は就業を強制されることとなります。

  2. (2)変形労働制との違い

    変形労働時間制とフレックスタイム制の違いを簡単に整理しましょう。

    • フレックスタイム制
    • 各勤務日毎の勤務時間(始業時間・終業時間)は、一定の範囲で、労働者自身が決めることができる。

    • 変形労働時間制
    • 各勤務日毎の勤務時間(始業時間・終業時間)は、あらかじめ決められている。


    このように、労働者の選択可能な範囲の違いが2つの違いとなります。

  3. (3)残業時間の定義

    フレックスタイム制の残業時間の元となる基礎賃金は、他のものと同様になります。

    基本的な考え方は、「総労働時間(総枠)」を超えて労働した時間が残業時間となります。
    法定労働時間を超える残業は、法定時間外残業となりますが、法定労働時間を超えない残業は、法定時間内残業となり割増率が変わってきますので、注意が必要です。

  4. (4)残業代の割増率

    法定労働時間内であれば時給に換算した賃金を支払います。法定労働時間を超えるようであれば25%割増賃金を受取る事ができます。
    ここでいう法定労働時間は、変形労働時間制でご紹介した時間と同一になりますので、そちらでご確認ください。

4、まとめ

残業代の未払いでお悩みの方で、ご自身で会社に対して残業代を請求したいと考える方は多いと思います。しかし、会社に対して残業代を請求してもまともに取り合えってもらえないというケースも少なくありません。

ベリーベスト法律事務所名古屋オフィスでは、残業代請求をご自身でやってみたいというご相談も含めて、お問い合わせを受け付けております。

未払いの残業代を請求するのであれば、まずはおおよその受け取れる金額を知ることはとても大事なことですので、ぜひ本記事をご参考にしていただければと思います。ご不明点は、ぜひベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています