始業前の朝礼やラジオ体操は労働時間に含まれる? 残業代がもらえる場合とは

2019年04月09日
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始業前の朝礼やラジオ体操は労働時間に含まれる? 残業代がもらえる場合とは

企業における朝型勤務が徐々に浸透する中、一部では、朝型勤務が違法なサービス残業になっているケースも指摘されています。使用者は、時間外労働が発生した場合は割増賃金(残業代)を支払う義務があり、支払わないのは労働基準法違反です。ここでは、労働時間の考え方や未払いの残業代がある場合に請求する方法について、名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、始業前のラジオ体操は労働時間?

労働基準法には労働時間の定義はありませんが、最高裁は「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義しています。そのため、実際に労働に従事していない時間であっても、たとえば、次のような時間は労働時間になるといえます。

  • 昼休み中であっても、来客や電話着信があった際には対応しなければならないケース。
  • 所定労働時間外の講習、教育訓練などに参加するケース。※使用者から参加することを指示(業務命令)されたもの
  • 制服や作業服など着用が義務付けられている更衣時間。


従って、始業時間前のラジオ体操であっても、それが従業員全員参加必須のものとして位置づけられている場合、労働時間に該当する可能性が高いと考えられます。なお、使用者の指揮命令下に置かれた時間か否かの判断は専門的な判断になりますので、微妙な判断を必要とする場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

2、残業代は何分単位で計算されるべきか

残業代は1分単位で計算しますので、毎日の勤務時間の記録を5分や10分など端数切り捨てすることは、労働基準法違反になります。

3、労働時間についての相談先

労働時間や残業代の未払いについては次のような相談先があります。

  1. (1)労働基準監督署

    労働基準監督署は、労働基準法違反がありそうだということになれば、会社を調査してくれる可能性があります。問題が明らかになれば、指導・是正勧告などが出されます。指導・是正勧告の結果、会社が自主的に労働環境を改善することもありますし、未払い分の残業代が支給されることもあります。ただし、労働基準監督署の指導・是正勧告に会社(経営者)への強制力はなく、従って労働基準監督署に相談しても、残業代が支払われないこともあります。

  2. (2)法律事務所

    弁護士には、会社に対し残業代を請求することができそうかなど、法的なアドバイスを受けることができます。また、実際に会社に対して残業代の支払いを請求する場合にも、弁護士に依頼すれば、残業代の計算や会社との交渉だけでなく、訴訟など法的手段に進んだ場合でも、専門知識と経験をもとに継続して対応してもらえます。

4、過去分も請求できるの?

労働基準法は、賃金請求権の時効について2年と定めていますので、未払い残業代の請求は過去2年分までしかできません。未払いが長く続いている場合は、一刻も早く手続きを進めることが必要です。

5、残業代請求の流れや注意点

残業代を請求する場合の流れと注意点を説明します。

  1. (1)残業代請求の流れ

    請求の進め方として、従業員自身による会社との話し合いにより解決できればそれに越したことはありません。しかし、自身による話し合いによる解決が難しいケースは多く、その場合は弁護士などに相談するのがよいでしょう。弁護士による交渉を踏まえ必要に応じて、労働基準監督署へ相談したり、労働審判や裁判により解決をしたりすることになります(労働審判とは、労働審判官などのリードにより当事者双方の話し合いによって紛争解決を図る手続きで、裁判と比べて解決までの時間が短く、時間的金銭的に余裕のない労働者のために設けられた制度です)。ここでは、弁護士に依頼した場合の請求の一般的な流れを簡単に説明します。

    ①残業代の計算・内容証明郵便で残業代請求
    労働契約、就業規則、給与明細などの資料を踏まえ残業代を計算し、会社に対して残業代の支払いを催告する内容証明郵便を送ります。これにより時効の進行に一時的な猶予期間(6ヶ月)が与えられます。催告の効力は6ヶ月以内に訴訟提起しなければ失われてしまうので、その間に交渉をすることになります。

    ②交渉
    任意の支払交渉をし、会社と合意に至れば合意書を取り交わし、それに基づいて支払われれば解決となります。合意に至らない場合には、労働審判や訴訟などの法的手続きへ進むことになります。

    ③法的手続き
    法的手続きにおいても、和解の試みが行われるのが通常であり、合意に至れば和解成立となります。和解できない場合には、最終的に裁判所などの判断(判決や審判)が下され確定すれば、会社が支払わなかった場合に強制執行の手段を取ることが可能となります。

  2. (2)請求に関して注意すべきこと~証拠の重要性~

    会社に対して残業代を請求するうえで、正確な残業代を計算して、証拠に基づいて証明する責任は労働者の側にあります。そのためもっとも重要となるのが証拠収集です。実際に膨大な時間の残業をしていたとしても、客観的な証拠が提出されないと、裁判所がその主張を受け入れることはできないためです。

    残業代を請求する決意を固めたら、在籍している間にできる限り証拠集めをしておくことをおすすめします。労務管理に関する資料は請求の相手方である会社が有する資料であるので、退職してしまうとこれらの資料が容易に入手できないからです。また、証拠収集をしていることを知られないよう気を付ける必要があります。知られたことにより証拠を隠されたり、その他の不利益を受けたりする可能性もあるからです。
    もっとも、タイムカードその他の勤務記録が収集できない場合でも、未払いの残業代請求をすることは可能です。厚生労働省の通達は、「使用者(会社)は、労働時間の記録に関する書類を3年間保存しなければならない」と定めていますので、会社に勤務記録などを開示させたうえで未払い残業代を請求することができます。
    ただこの場合、会社に対し勤務記録などの開示を求めても、会社が全く開示に応じないこともありえます。そのようなときは、労働基準監督署に相談して会社に勤務記録などを開示するように促してもらう方法や、証拠保全という手続きにより、裁判所から勤務記録などの開示を求める命令を出してもらう方法などがあります。また、サービス残業があたり前となっている場合、会社にも正確な勤務記録がないことも考えられます。その場合には、間接的な証拠やメモなど自分で作成する証拠を可能な限り準備しましょう。

6、まとめ

始業前のラジオ体操であっても、会社から実施が義務付けられていれば、労働時間として評価される可能性が高いので、体操を行った時間を示す何らかの証拠が存在すれば残業代を請求できる可能性があります。

労働時間を適切に管理されておらず、正当な残業代を支払われていない可能性がある、自分で会社と交渉したが難航しているなどお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご相談ください。名古屋オフィスの弁護士が、正当な残業代請求に全力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています