保育園で自分の子どもが怪我を負った! 保育園へ損害賠償請求できる?
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平成30年2月、名古屋の保育園で提供された給食にガラス片が混入するという事件が起きました。納入業者が配送途中に交通事故に遭ったときに、割れたガラスが飛び散り、そのいくつかが食材に入ってしまったことが原因だったことが判明しています。
幸いこの事件では怪我人は出ませんでしたが、万が一食べた給食にガラス片が混入していたことによって、子どもが口の中を切ってしまったとしたら、親としてどうすればよいのでしょうか。もしその怪我が、後遺症の可能性があれば、なおさら悩んでしまうことでしょう。
保育園に対して損害賠償ができるかどうかについて、名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、保育園で子どもが怪我をした場合、責任はどこにある?
保育園では生活している園児の年齢に差があり、集団で移動したり園児たちがケンカをしたりと、子どもが怪我をする可能性は決して低くはありません。また、子どもは突然走りだすこともあります。子どもが保育園で怪我をした場合、責任はどこにあるのでしょうか。
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(1)子どもが自分で転んで怪我をした場合
骨格が未発達の子どもは頭が重く、つまずいたりするとすぐに転んでしまいます。また、周囲を見ずに走りだして壁やドアにぶつかって怪我をしてしまう場合も考えられるでしょう。こうしたケースでは、特に誰かから危害を加えられたというわけではありません。
しかし、この場合は保育園の先生の監督責任が問われることになります。まず、大前提として保育園の先生がすべての園児の一挙一動を監督することは難しいものです。それは、あなた自身が子どもを育てている状態でも実感されていることでしょう。ずっとひとりの子どもだけを見つめ続けることは事実上できません。
そこで、どの園でも事故が起きないように対策を立て、万が一事故が起きてしまった場合は適切に対応できるように準備をしなければいけません。そのため、保育園で発生した園児の怪我については、保育園側に責任がある場合があります。
たとえば、園児の怪我を防止するため、手をつないで歩いていた状態でも、いきなり手を振り払って走りだしてしまい怪我をしてしまうケースもあるでしょう。この場合、子どもが勝手に走りだすことは十分予測できたと判断され、保育園の先生が監督する義務を怠っていたと責任を問える可能性もあります。 -
(2)他の園児から怪我をさせられた場合
未就学児は感情のコントロールが難しく、おもちゃの取り合いなどからケンカなどに発展することは日常茶飯事です。そのようにして心身ともに成長していくものですが、そのケンカがきっかけとなって、あなたの子どもが大きな怪我をしてしまった場合の責任はどこにあるのでしょうか。
このようなケースでも、保育園の預かり時間内に起きた園児の怪我であれば、保育園側に責任がある場合があります。また、怪我をさせた子どもにも責任を問いたいと思うかもしれません。しかし、法廷では、行為の是非を認識できるようになる年齢を12歳程度とすることが通例です。よって、法律上では、加害した園児の監督者である親が責任を問われることになります。加害者の園児本人に責任を問うことはできません。
2、損害賠償請求できるのか?
損害賠償請求が認められるかについては、保育園の制度や対策、監督責任、加害状況や怪我をしたあなたの子どもが取った行動によって異なります。誰に対してどのような状態であれば損害賠償請求ができるのかについて解説します。
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(1)保育園に損害賠償請求をする場合
子どもが怪我をしてしまった場合に、保育園に対して損害賠償請求をしたいと考えたとき、状況によって請求が認められます。前述のとおり、保育園は、園児が怪我をしないように予防する責任があるためです。
また保育園の先生を雇用する立場であることから、使用者責任も問うことができる可能性があります。「使用者責任」とは、民法第715条に定められている使用者(経営者・運営団体の代表など)の不法行為責任を指します。具体的には、先生に対してきちんと指導していないような場合に、その責任を問うことができます。保育園の場合は、法人やその園長に対して、使用者責任を問うことになるでしょう。
また、子どもの親と保育園は保育をしてもらうという契約を結んでいる場合、保育園に対して「安全配慮の義務に違反した」として債務不履行に基づく損害賠償を請求する手段もあります。
その他、会社法や社会福祉法に基づき、経営者(取締役、社会福祉法人の役員など)が賠償責任を負う場合も考えられます。 -
(2)保育園の先生に損害賠償請求をする場合
保育園の先生には、子どもたちが安全に過ごせるように取り計らう義務がありますので、監督責任や義務違反を問い、賠償を請求できることがあります。
ただし、公立の保育園の場合は、保育園の先生に損害賠償請求をすることができないことがほとんどです。国公立の保育園が不法行為の主体である場合は国家賠償請求の対象となり、自治体や国に請求することになるためです。また、私立などの保育園でも、前述した使用者責任のほうが大きいと考えられるときは、保育園の先生個人に賠償請求することは現実的ではないと考えられるケースもあるでしょう。状況によって異なるため、弁護士に相談することをおすすめします。 -
(3)加害者の園児の親に損害賠償請求をする場合
未成熟な子どもは、自分自身だけで善悪を判別することはできません。また、財産を持っているわけではないので損害を賠償する資力もないでしょう。そのため、12歳前後よりも小さい子どもが不法行為をしたときは、親が監督責任を負うことになっています。
普段から暴力的な振る舞いを子どもがすることを分かっていながら、注意していなかった、何も対策を採っていなかったなど、監督しなければならないのに怠ったことが明確なケースであれば、損害賠償請求ができる可能性があります。
3、損害賠償請求の注意点
保育園で起きた怪我に対し、不法行為に基づく損害賠償請求を行う場合、被害者側に立証責任があります。つまり、相手に故意や過失がなかったり、損害を受けたことが証明できなかったりすれば、損害賠償はできません。
損害賠償を行う際、知っておくべき注意点を解説します。
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(1)立証責任は被害者側にある
子どもだけが怪我をした場合や他の園児から怪我をさせられたケースで損害賠償請求をする際は、被害者側が証拠を集める必要があります。
子どもの怪我の治療費などについては医師の診断書などで立証できます。しかし目撃者がいない場合は証拠の提出が困難な場合もあります。監視カメラを設置している保育園では、監視カメラの映像が有力な証拠として扱うことができるでしょう。また、目撃していた園児がいれば証言をしてもらうことができます。なお、前述のとおり責任能力がないとみなされる園児の証言が認められるかどうかについては、状況によると考えておいたほうがよいでしょう。
証拠がなければ損害賠償請求をしても認められないため、注意が必要です。なお、保育園が契約を破っているとして債務不履行として損害賠償請求をする場合にも、債務不履行の事実については、請求する側が立証する必要があります。 -
(2)人間関係が悪くなる可能性がある
一般的に損害賠償請求をしようと思っても、いきなり裁判になるということはあまりありません。まずは被害者と請求された側の話し合いからはじめるケースが多いでしょう。
しかし、金銭が関係することや日常的に関わる相手の場合が多く、たとえ交渉であっても、損害賠償請求することによって関係が悪くなる可能性があります。 -
(3)損害賠償をしても認められるとは限らない
損害賠償を請求することそのものは権利として認められていますが、実際に損害賠償が認められるかどうかは別問題です。示談や和解に至らなかった場合は裁判に発展します。裁判では、証拠などから客観的に損害賠償請求が認められるかが判断されるため、証拠が不十分などの理由で損害賠償請求が認められないこともあります。
状況の判断が難しいこともあるため、まずは弁護士に相談して、進め方などのアドバイスを得ておいたほうがよいでしょう。可能であれば、最初の交渉の段階から、示談交渉に長けた弁護士に依頼することをおすすめします。
4、まとめ
損害賠償請求の請求先や方法などはケースによって異なります。特に、保育園に通園する子どもの報告をうのみにしてしまうと、周囲との関係性など繊細な部分でトラブルが生じる危険性もあるでしょう。
まずは状況をしっかり確認して、弁護士に相談することをおすすめします。相談することによって、冷静に物事を見渡せるようになったり、何を最優先で求めたいのかを見直すことができたりするものです。あなたにとっても子どもにとっても最善の方法を検討することができるでしょう。
保育園での怪我をめぐるトラブルで悩んでいるときは、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスへ相談してください。法律に関連する損害賠償請求や交渉は、弁護士の仕事のひとつです。名古屋オフィスの弁護士があなたにとってベストな結果をもたらすことができるよう、力を尽くします。
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