ネットで風評被害を受けたときの対処方法とは? 弁護士が解説

2019年03月08日
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ネットで風評被害を受けたときの対処方法とは? 弁護士が解説

近年インターネット上で起きた風評被害の中でも、名古屋近郊で有名な事例としては、平成29年に開園したばかりのテーマパークにまつわるものでしょう。開園のニュースが出るや否や、事実と異なる情報や、ネガティブな風評がインターネット上で飛び交うこととなりました。

ネットの評判というのはいい加減なものであっても瞬く間に広がってしまうことがあります。デマやフェイクニュースなど、うその情報ほど拡散スピードが速く、事実を掲載した情報の20倍もあるという研究結果があるほどです。

もし、個人経営店の悪評をネットの掲示板やSNSに書き込まれた場合、それが拡散されてしまえば、その風評被害は多大なものとなるでしょう。そこで、ネットで風評被害を受けたときにできる対策について、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。

1、ネットの風評被害とは?

ネットの風評被害とは、インターネット上に書き込まれた誹謗中傷のことです。このようなネットにおける風評被害は、今やたとえ大きな店舗でなくとも、店舗などを運営するうえでは大きな問題となっています。

たとえ店側に何の落ち度がなくても、一般人の勘違いなどに基づいて書き込みが行われ、瞬時に情報が拡散することで、いわれもない風評被害にあわれる方や個人事業主は後を絶ちません。勘違いから発生することもあるので、突発的に発生する場合もあります。いつ自分や自分の店舗がその被害を受けるのかわからないところが怖いところです。

しかも、インターネットに詳しくない場合は、対処方法もわからずに呆然としてしまうことでしょう。しかし、ネット上のトラブルが発生してしまった際には、広がるスピードの速さと、風評被害の甚大さを考えると、いかに迅速に対応するかが重要になります。

2、店舗として対峙するネットの風評被害

個人に対してもそうですが、店舗などに対する誹謗中傷を含む内容をネットに投稿されて、風評被害が発生すると、そのまま営業妨害に直結することが多いでしょう。そのような被害にあったとき、どうすればよいのでしょうか。

  1. (1)ネットの風評被害が店舗に与える影響とは?

    最近では、なんでも購買行動をする前にネットで評判を調べることが多くなってきています。そのようなとき、たとえば飲食店ならば、口コミサイトに「おかしな肉を使っている」などと書き込まれていたら、被害は甚大となることが予測できます。その情報の真偽を確かめない多くの顧客が離れていってしまう可能性があり、会社の業績を直撃することも少なくありません。それほどに今やネットの風評被害対策は店舗にとって優先課題といえるでしょう。

  2. (2)ネットの風評被害を放置するとどうなる?

    昔は「人のうわさも75日」といわれていました。しかし、ネット文化が発達した今、それも過去の話といえるかもしれません。なぜなら、ネットに書き込まれた情報は、放っておいても自然に消えるものではないためです。しかも、自然と減ることはほとんどなくても、コピー&ペーストが容易であることから、日々増殖してしまう可能性があります。

    誹謗中傷対策をせずに、書き込まれた内容を否定しなければ、ネットに書き込まれた情報が「否定しないのなら本当のことだろう」とひとり歩きを始めてしまう可能性があるでしょう。そうなれば、店舗のイメージも低下しかねません。

    どう対策をしたらいいのか悩んでいるときや、インターネットなどに詳しくない場合は、ネットの風評被害事件に対応した経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

3、ネットの風評被害を実際に受けたケース

ここで具体的な判例を知っておきましょう。

フリーライターAが、インターネット上で名誉毀損(きそん)を伴う投稿や発言を行った被告Bに対して損害賠償を請求した事件で、平成29年6月19日、大阪高等裁判所で控訴審の判決が下りました。被告Bは、1審にてAさんに対する名誉毀損(きそん)、侮辱にあたる発言をし、投稿を行ったという事実が認められ、77万円の損害賠償を支払うよう命じられたことを不服として控訴していました。大阪高等裁判所は控訴内容を全面的に棄却し、1審判決を支持する判決を出しています。

判決内容は個々のケースで大きく異なります。現状、ネットの風評被害に苦しんでいるのであれば、ひとりで悩まず、まずは弁護士に相談したほうがよいでしょう。

4、ネットの風評被害を実際に受けたときの対処方法

ネットでの書き込みは放置していれば、半永久的に残ってしまいます。では、ネットの風評被害を受けたときには、どのように対処すればよいのでしょうか。

  1. (1)投稿の削除方法

    まずは風評被害につながるような誹謗中傷が書き込まれているネットの投稿を見つけたら、該当のURLと投稿を証拠として抑えておきましょう。事件化しそうになった途端、削除すれば証拠がないとして、損害賠償請求等をした場合に何の対応しない者もいるようです。まずは、風評被害につながる投稿をされた事実を、だれの目から見ても明らかにできるよう、準備する必要があります。

    証拠を確保したら、ウェブフォームなどから管理者に削除依頼を出しましょう。それでも反応が鈍い、遅い、過激化するときは、弁護士を通して削除を依頼することをおすすめします。個人や店舗で行うよりも迅速に対応してくれるケースが少なくありません(ただし、必ず削除されるというわけではありません。)。

    削除してほしい場所が大規模な掲示板やSNSなどの場合は、削除のガイドラインを設けているはずです。まずは、それに沿った削除依頼を出す必要があります。

    また、情報通信技術関連の企業が多く所属する一般社団法人テレコムサービス協会が、プロバイダ責任制限法の運用についてのガイドラインを制定しています。このガイドラインに則り、プロバイダ等に対して削除請求を行うことも可能です。
    ガイドラインに則った削除請求を行う際の書式も公開されていますので、この方法による場合には、公開されている書式を用いると良いでしょう。
    この方法によって削除請求を行った場合、原則として、請求を受けたプロバイダ等は発信者に対して意見照会を行います。そして、発信者が意見照会に応じず、反論をしない場合は削除を求める記事が削除されることになるのが原則ですが、発信者からの反論があった場合には必ずしも削除されるとは限りません。

    上記のような裁判外の請求を行っても記事が削除されない場合などは、裁判所を通じた手続きを利用することも視野に入れるべきです。そのような場合、記事の削除を求める仮処分手続きを利用するのが良いでしょう。仮処分手続では、通常の裁判よりも比較的早い解決が見込めます。仮処分手続の中で削除請求に関する主張が認められれば、記事が削除されることになるでしょう。

  2. (2)発信者情報開示請求

    もし削除されれば、ほっとできると思いたいところですが、実はそれだけでは安心できないことがあります。せっかく削除しても、誹謗中傷を投稿した人が、また書き込んでしまうことも少なくないためです。そのときは、同じことの繰り返しになるでしょう。

    そのような事態になりそうなときは、早期にやっておきたい手続が発信者情報開示請求です。「発信者情報開示請求」は、プロバイダ責任制限法第4条に基づく情報開示請求をいいます。これは、インターネット上で他者を誹謗中傷するような表現を行った発信者の情報(住所・氏名・登録された電話番号など)について、プロバイダに情報開示を求める制度です。

    住所や氏名などの個人情報を突き止めておくことによって、風評被害につながるような誹謗中傷をした投稿者と直接的に話し合いを進めることができるようになります。もし、個人情報がわからなければ、損害賠償請求も行えないという点に注意が必要です。

    また、話し合いがうまくいかない場合や、相手の反応が激化した場合は、名誉毀損などで被害届を提出することを考える必要があるでしょう。いずれにしても、相手の特定がとても重要になります。ぜひともやってほしいアクションですが、方法がわからない、対応する時間がないなどのときは、弁護士に依頼することをおすすめします。
    ただし、裁判外で発信者情報開示請求を行ったとしても、発信者情報が開示される可能性は高くありません。そのため、発信者情報開示請求は原則として裁判で行う必要があります。

  3. (3)損害賠償請求

    風評被害の元になった誹謗中傷を書き込んだ発信者が特定できれば、中傷によって違法に社会的評価を低下させたものとして、民事裁判で損害賠償を請求できる可能性があります。また、該当の投稿に著作権にかかわる画像などが無断で掲載されているときは、拡散を手伝った者(RTした者)に対しても著作者人格権侵害が認められることもあるでしょう。

    誤解している方が多いのですが、たとえ事実であっても名誉毀損罪は成立します。つまり、損害賠償請求が認められる可能性があるということです。まして真実ではなく、虚偽の内容であれば、なおさら損害賠償請求は成立する可能性が高いといえるでしょう。

  4. (4)刑事告訴

    民事裁判での損害賠償請求だけではありません。刑事事件としての告訴も考えられるでしょう。会社の業績が傾くような重大な誹謗中傷案件では刑事告訴してしかるべきケースもあります。

    特に店舗に対する誹謗中傷は、信用毀損罪または業務妨害罪として、3年以下の懲役または50万円以下の罰金で処罰される可能性のある行為です。信用毀損罪および業務妨害罪は、虚偽の風説を流布して、人の信用を毀損したり、人の業務を妨害したりする場合に成立します。「虚偽の風説の流布」とは、客観的真実に反するうわさや情報を不特定に、また多人数に伝えることです。ネットへの書き込みもこれにあたります。

    なお、信用毀損とは人の支払い能力・支払い意思など経済的信用を低下させることです。ですが、ここでいう信用には、商品の品質に対する社会的信頼も含まれるとした判例があります。

    被害届を出し、裁判にいたるまでのアドバイスは、ネットの風評被害の経験が豊富な弁護士にご相談ください。刑事告訴まで行く姿勢を見せるだけでも、今後のネットの風評被害につながるような誹謗中傷を行うつもりの潜在加害者にとっては、抑止力になると思います。

5、ネットの風評被害を受けたときの相談先

ネットの風評被害を受けたときには、ネットに詳しくないほど焦り、戸惑うものです。あらかじめ、万が一に備えて相談先を知っておくとよいでしょう。

  1. (1)法務省人権擁護局

    ネットの風評被害を受けたときの相談先としては法務省の人権擁護局があげられます。各地の法務局にある人権擁護局では、ネット上の誹謗中傷やプライバシー侵害といった人権侵害について、人権擁護委員が相談に応じてくれるでしょう。プロバイダ等への削除要請の方法について助言してもらうことができますし、相談者自身でプロバイダ等への削除要請を行うことが困難な場合等には、法務局が風評被害の事実を調査したうえで、書き込みを削除するようサイト運営者に対して要請をしてくれます。手続きに費用はかからず、書面での申し立てのような手続きは不要です。

  2. (2)風評被害の対策会社は弁護士法違反の可能性

    ネット上を検索すると、削除や風評被害の対策を行うと豪語する業者がヒットすることがあります。しかし、サイト運営者への削除要請を有料で代行するという業務を、弁護士以外の者が報酬を得て行うことは、弁護士法に違反するおそれがあります。非弁行為として、取り締まりの対象となる点に注意が必要です。

    さらに、削除要請は行わないことを明記したうえで、または削除要請を拒否したサイトに対して、技術的方法で当該サイトの記載を削除してしまうサービスをうたっている場合があります。ですが、このような行為は運営者の許可なく行われることから、実現できたとしても、不正アクセス禁止法で処罰される不正アクセス行為に該当するおそれがあります。3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性がある危険な行為です。

    なお、逆SEO対策会社は誹謗中傷情報自体を消すのではなく、被害者に関する他の情報・記載を掲載したサイトを多数作ったうえで、SEO対策によって検索上位に掲載されるようにする業者です。被害者に対する誹謗中傷の記事を埋没させ、検索サイトの上位に登場しないようにする対策ですが、風評被害の元となった記事は消えないという点は見過ごせません。

    インターネット上における風評被害に対策するときは、違法な行為をする業者に依頼しないよう、注意してください。個人情報を違法業者に渡すことになり、さらなる懸念が考えられます。

    また、風評被害などのトラブルに巻き込まれているときは、状況に合わせて、相手に損害賠償しなければならない状況になる可能性もあります。まずは弁護士に依頼して、状況に適した対応を行うことをおすすめします。

6、まとめ

風評被害を受けるような誹謗中傷は違法行為であり、損害賠償責任を生じさせる可能性、犯罪行為として刑罰を受ける可能性があるものです。店舗や業務が受ける被害の大きさを考えれば、怪しげな業者に頼らずに、最初から風評被害案件の経験が豊富な弁護士に相談した方が安心でしょう。

おかしな書き込みにお悩みでしたら、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスにご連絡ください。対策案を取りそろえて、迅速な対応を進めていけるようにお待ちしております。

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