ネットでの誹謗中傷被害はどこに相談すべき? 名古屋オフィスの弁護士が解説
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平成24年12月21日、名古屋高等裁判所では、ブログに書き込まれた誹謗中傷記事に対する損害賠償請求を認める判決を下しています。
今の時代、誰もが簡単にアクセスできるネット上で、個人情報をさらされたり、ありもせぬ書き込みで名誉毀損(きそん)を受けたりする危険性があります。そのようなとき、どのような対策を打てばよいのでしょうか? 被害相談する先について迷うかもしれません。警察に犯罪として通報すれば動いてくれるのか、サイト管理者に削除依頼をどのタイミングでするべきかなど、さまざまな疑問もあるでしょう。
今回は、ネット上の誹謗中傷への対処法や被害相談先について、名古屋オフィスの弁護士が解説いたします。
1、ネット上の誹謗中傷の概要と処罰
いつも見ているサイトを閲覧していたら、自分を誹謗中傷しているコメントを発見した。
個人情報までは明かされていないけれど、読む人が読めば個人が特定できる内容だった……。
このようなとき、削除請求したいと考えることは当然のことでしょう。しかし、サイト管理者に連絡をすればよいのか、はたまた別のところに先に相談すべきかなど、悩んでしまうものです。相手によっては、削除を求めることによって、さらにエスカレートする可能性も考えられます。デリケートになってしまうのは当然のことです。しかし、相手に削除を求めたり、誹謗中傷として損害賠償請求を行ったりするためには、ある一定の要件に該当することが求められます。まずは法律上でも認められる「誹謗中傷」などの定義について、解説します。
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(1)誹謗中傷の定義は?
「誹謗中傷」や「風評被害」といった言葉を耳にする機会が増え、それに該当する被害に遭う可能性も増えています。その一方で、これらの言葉を正しく理解している方は少ないのが実情です。
まず「誹謗中傷」とは、ふたつの単語を組み合わせた言葉で、本来は別々の単語です。なお、公的な場で使われることの多い言葉ですが、法律用語ではありません。「誹謗」とは他人の名誉を汚し、おとしめることを指します。ポイントとなるのが根拠のない悪口やののしりをもとに行う点です。「中傷」とは嫌がらせをする、悪口を言うことを指します。中傷も誹謗と同様に根拠なく行われるのが特徴です。
つまり誹謗中傷とは、根拠のない言葉などによって相手に嫌がらせをする行為を指すということです。もし、書かれている内容が真実であれば、「誹謗中傷」にはあたりません(ただし、真実であっても、名誉棄損やプライバシー侵害に該当する可能性はあります)。
なお、法律上では、誹謗中傷行為そのものについて罪に問われることはありません。「誹謗中傷」が行われた結果、誰かの権利が侵害された場合や、「誹謗中傷」によって、他人の名誉を害する危険や、他人の業務を妨害する危険を生じさせたことに基づき、処罰を受けることになります。
また、「風評被害」という言葉も法律用語ではありません。明確な定義はありませんが、一般的には、不明確な情報やうわさなどが個人の書き込みや報道から社会に広がり、無関係である個人や会社など団体が社会的、経済的な被害を受けることを指しています。 -
(2)ネット上の誹謗中傷・風評被害にあたる行為
インターネット上での誹謗中傷および風評被害にあたる行為は、下記のような場所で行われがちです。
- 掲示板
- Facebook、mixi、Instagram、LINEなどのSNS
- ブログ上
SNSにおいては、書き込みを見た人が「いいね!」や「シェア」などの行動を取ることで、さらに多くの人に誤った情報が拡散される恐れがあります。
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(3)ネット上の誹謗中傷・風評被害による刑罰
ネット上の誹謗中傷・風評被害によって、誹謗中傷などを行った相手を告訴すれば、刑法に基づき罪を問うことができる可能性があります。
誹謗中傷・風評被害に対して処される可能性がある刑罰は、主に4つあります。
●名誉毀損(きそん)罪
→3年以下の懲役刑もしくは禁錮刑、または50万円以下の罰金刑
●侮辱罪
→1日以上30日未満の身柄の拘留もしくは1000円以上1万円未満の科料
●脅迫罪
→2年以下の懲役刑または30万円以下の罰金刑
●信用毀損および業務妨害罪
→3年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑
また、刑法に基づき処罰してもらうことができなくても、損害賠償請求ができるケースもあるでしょう。たとえば冒頭の判例では、原告企業の実名をあげて批判する記事を自身のブログに投稿されたことで始まったトラブルです。ブログの投稿者が企業からの削除依頼に3年にわたり対応しなかったことや非常に誇張した表現を用いていたことが、「原告企業の社会的評価を低下させた」と認められ、損害賠償を認める判決が出ています。
2、ネット上の誹謗中傷の相談先と対処法
冒頭の判例のように、企業が削除を依頼しても対応してもらえないケースは少なくありません。個人であればなおさら無視をする可能性もあるでしょう。前述のように、より攻撃がひどくなる可能性もあり得ます。
ネット上であらぬ誹謗中傷をされた場合の相談先や対処法を知っておきましょう。
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(1)ネット上の誹謗中傷・風評被害の相談先は?
ネット上で誹謗中傷および風評被害にあった場合の相談先は、主に4つあります。
●弁護士
弁護士は法律のスペシャリストであることに加え、過去にも同様の事例を多く扱った実績を持っています。削除請求を代理で行うだけでなく、過去の判例や豊富な経験に基づき、どのように動くべきかについてアドバイスが可能です。なお、ITなどインターネット問題に対応した経験が豊富な弁護士に被害相談することをおすすめします。
●法テラス
弁護士費用のねん出が難しい方は、法テラスで被害相談する方法もあります。もし相手を名誉毀損などで訴えたり、損害賠償請求を行ったりする場合には、弁護士に依頼する費用の立て替えも可能です。ただし、利用するためには所得制限があります。
●警察
事件性があるものや、身の危険を感じるもの、前述した刑法に該当する可能性がある誹謗中傷記事に関しては、警察へ被害相談することも可能です。ただし、刑法に該当するものでない限り、警察には対応できないケースもあります。警察署のなかでも、県のサイバー犯罪対策室への問い合わせが有効でしょう。
●法務省
敷居が高く感じがちですが、法務省インターネット人権相談受付窓口などへ被害相談することもできます。メールや電話で回答をもらうことができますが、緊急性がある場合はおすすめできません。 -
(2)ネット上の誹謗中傷・風評被害にあったらすべきこと
まず、前述したとおり、誹謗中傷や風評被害というだけで不法行為があったとみなすことは難しいものです。そこで、まずは該当の誹謗中傷や風評被害の事実を証明し、どのような損害を受けたかを明確にしておく必要があります。次の手順で対応するとよいでしょう。
●証拠集め
ネット上の誹謗中傷・風評被害にあった事実があったとしても、「あなた自身だけが把握している」という状態では、誰も対応ができません。そこで、被害相談をするときはもちろん、最終的に法的処置を求める場合に備えて、誹謗中傷・風評被害にあった証拠をおさえておく必要があります。
相談前には、必ず書き込みなどが掲載されたページをプリントアウトし、URLなどを証拠として提出できるようにそろえておきましょう。
●被害の公表
ネット上に誹謗中傷などの書き込みなどが掲載されている場合、個人および会社を守るために、書き込みは事実ではない旨の公表が必要です。それによってうわさの拡散や、消費者の不安感をおさえることができます。これは個人であっても同様です。
●投稿の削除依頼
削除を依頼するときは、サイト管理者などに連絡を取り、管理者権限で削除をしてもらう必要があります。しかし、管理者が投稿者ではない場合は特に、言論の自由に配慮する必要があるため、簡単に削除はしてもらえません。
詳細な理由や削除するに相応する法的根拠を示す必要があるため、法に詳しい弁護士に先に被害相談をしてアドバイスを得ておくとよいでしょう。また、弁護士に対応を依頼するほうがスムーズに削除してもらえる可能性が高まります。
●投稿者の特定
サイト管理者に対して「発信者情報開示請求」を行い、書き込みをした人物を特定しておきましょう。なお、これには発信者情報開示請求書の提出が必要です。特に損害賠償請求を行いたいと考えている場合は、投稿者を特定しなければ請求はできません。対応が難しいときは弁護士に依頼することをおすすめします。 -
(3)ネット上の誹謗中傷・風評被害を受けた際の注意点
ネット上での誹謗中傷などの書き込みは、特に深く考えず、「みんなもやっているから」というノリで行っていたり、自らに正義があるという思い込みに基づいていたりするケースが多々あります。しかし、自らの身分を明かしたうえで面と向かって相手に伝えられない言葉は、公表すべき言葉ではありません。
一般的と考えられる社会常識が通じない、個人もしくは企業などが投稿者である可能性も少なくありません。よって、被害者であるあなたが単独で投稿の削除依頼をサイト管理者に行ったとしても、法的根拠を明確に示すことができなければ、返事すらないというケースも多いでしょう。このようなときは、速やかに弁護士に依頼することをおすすめします。相手が法律を知り尽くした弁護士であることを知ると、速やかに対応することもあります。
また警察に先に相談をしたあとに削除依頼を行ったことをサイト管理者に知られると、「警察の判断を待ってから対応するかどうか決める」と考えるケースもあります。このようなときは、インターネット上に記事が残る時期が延びるため、風評被害を止める時期が遅くなる可能性があることを知っておきましょう。
なお、削除請求自体が、弁護士でなければ行えない法律業務のひとつに該当します。弁護士が在籍していない削除代行業者に削除請求を依頼することは避けましょう。弁護士以外の者が削除請求を代行することは、弁護士法第72条で禁止されている非弁行為に該当するおそれがあります。不法行為をためらわずに行う会社や個人に対し安易に個人情報を渡してしまわないよう、気をつけてください。
3、まとめ
インターネット上に何度も誹謗中傷の書き込みがなされると、不快なだけでなく信用失態につながることも考えられます。しかし悪意を持って行われている可能性が高いことから、個人の判断で動くことは賢明だとは言えません。それによって誹謗中傷や風評被害を出している相手を刺激し、加速させることにもなりかねないためです。
スムーズに事態を収拾させ、書き込みや該当記事の削除を行わせるには法的知識が必要となるでしょう。誹謗中傷被害などでお困りの際はベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスで相談してください。インターネット上の削除請求に対応した経験が豊富な弁護士が迅速に対応するとともに、損害賠償請求を行う際も尽力します。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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