介護事業者必見! 介護ビザとは? 外国人労働者を採用する流れを解説
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日本では超高齢化社会が進展しており、愛知県では、令和元年における65歳以上の割合は25%で、前年より0.2ポイント上昇しました。超高齢化社会が進展すれば、高齢者を支える介護職の需要が増加します。しかし、介護職の人材不足は深刻で、今後ますます人材が不足する可能性があります。
こうした介護業界の人材不足を外国人労働者の受け入れによって補うために、平成28年に出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます)が改正され、在留資格「介護」(以下「介護ビザ」といいます)の制度が創設されました。
本コラムでは、外国人労働者の受け入れを検討されている介護事業者の方に向けて、介護ビザの概要とメリット、デメリットを、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、介護の現場では人材不足が深刻化している
介護の現場の人材不足は、年々深刻化しています。
介護労働安定センターによる「平成30年度 介護労働実態調査」では、約6割の介護事業所が従業員の不足を実感していることが明らかになっています。
ちなみに、65歳以上の高齢者を支える15~64歳の現役世代も、年々減少の一途をたどっています。具体的には、65歳以上の高齢者ひとりに対する現役世代は、昭和25年の12.1人から平成27年には2.3人と大幅に減少しています。2065年には、実に1.3%にまで減少すると推計されています。
つまり、このままでは現役世代の介護の負担は、ますます重くなることが明白な状況になっているのです。
そこで、こうした状況を打破するひとつの施策として、外国人労働者を受け入れて介護業界の人材不足を補う仕組みが整いはじめています。
2、介護職における外国人労働者の受け入れ
日本では外国人の単純就労は原則として認めておらず、就労するためには在留資格が必要です。
介護職において外国人が就労するための在留資格には、次のようなものがあります。
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(1)「特定活動」(EPA:経済連携協定)
EPAとは、特定の国や地域同士で結んでいる経済連携協定のことをいいます。
日本はインドネシア・フィリピン・ベトナムと協定を結び、この3か国から一定の能力のある人材については在留資格を認めて、介護福祉士候補者の受け入れを行っています。
ただしEPAは公的な枠組みで限られた国と経済的な連携を図ることを目的とするものであり、介護の人材不足を解消するための制度ではありません。 -
(2)在留資格「介護」(介護ビザ)
本コラムのテーマである介護ビザは、日本の介護福祉士養成施設を卒業し、介護機関で働く外国人の介護福祉士に対して認められる在留資格です。家族の帯同も認められており、長期的に外国人を雇用することができる制度といえます。
介護ビザについては、後ほど詳しくご説明します。 -
(3)「技能実習」
外国人技能実習制度の対象職種に介護職種が追加され、技能実習での在留資格が認められることになりました。
在留資格は最長5年で、勤務できるサービスに制約があります。また、技能実習制度は国際協力の推進を図ることを目的としているため、人材不足解消につながる制度とはいえないでしょう。 -
(4)「特定技能」
特定技能は、平成31年4月に導入された在留資格です。一定の能力や技能を有する外国人に5年間のみ在留資格を与える制度です。特定技能として5年間で受け入れる見込みの人数は、介護分野で最大6万人とされています。
短期的に人材不足の解消を図る制度といえ、家族の帯同は認められておらず、勤務できるサービスにも制約があります。
3、介護ビザのメリット・デメリット
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(1)介護ビザとは
介護ビザとは、前述したように介護福祉士の資格を有する外国人が、介護施設等との契約に基づいて介護(または介護の指導)の業務に従事するための在留資格です。
介護ビザは、平成28年に「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」(いわゆる改正入管法)で創設され、同法は平成29年9月に施行されています。
なお、介護ビザと呼ばれていますが、正式には外国人の在留資格の「介護」をさしています。
そもそも「ビザ」と「在留資格」は、別のものです。しかし、「ビザ=在留資格」と認識されているのが一般的です。そのため、在留資格「介護」は「介護ビザ」とも呼ばれています。 -
(2)介護ビザのメリット
介護ビザのメリットとしては、他の在留資格のような制約がないことが挙げられます。
たとえば介護ビザは、特定の国籍のみを受け入れるEPAとは異なり、さまざまな国籍の人材を受け入れることができます。また介護ビザは、訪問サービスも含む介護業務全般が対象になるので幅広い業務で外国人労働者の就労を可能にします。
介護ビザでの在留期間は最長5年とされていますが、在留状況に問題がない限り更新できるので実質的に在留期間の制約はない制度といえます。
そして、介護ビザを取得した外国人の家族も在留資格を取得することができるという大きなメリットがあります。 -
(3)介護ビザのデメリット
介護ビザのデメリットとしては、採用を仲介する公的な機関がないことが挙げられます。
たとえばEPAで就労する外国人は、公益財団法人国際厚生事業団が受け入れをあっせんしています。
しかし、介護ビザで働こうとする外国人には公的な機関のあっせんがないので、基本的にはハローワークや就職情報サイトなどで求人募集を行って採用する必要があります。
4、介護ビザを取得するための要件
介護ビザの取得においては、以下の要件をすべて満たす必要があります。
入管法上の要件として、(1)(2)が定められており、法務省令上の要件として、(3)(4)が定められています。
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(1)介護福祉士の資格を有すること
国家資格である介護福祉士の資格を有することが、介護ビザ取得の要件です。
ただし、経過措置として、養成施設を平成29年~令和3年度までに卒業する学生は、筆記試験に合格できなくても介護福祉士の資格を有するものとして働くことができます。
しかし、継続的に5年以上実務経験を積むか、5年以内に筆記試験に合格する必要があります。 -
(2)日本の公私の機関との契約に基づき、介護又は介護の指導を行う業務に従事すること
介護ビザを取得するためには、養成学校卒業後、病院や介護施設などの日本の機関と雇用契約を結ぶ必要があります。
そのため要介護者本人やご家族と直接介護の契約をしたような場合には、介護ビザの取得は認められません。
また、介護の周辺業務ではなく、介護または介護の指導を行う業務に従事することが必要になります。 -
(3)一定期間、日本の介護福祉士養成施設に通うこと
介護福祉士の資格を取得するためには、介護施設で経験を積んで研修を受け取得する方法や福祉系の高校に通う方法、一定期間護福祉士養成施設に通う方法があります。
しかし、介護ビザを取得するためには、上記の方法のうち、介護福祉士養成施設に通うことが必要であり、通常、2年以上通うことが必要となるケースが多いでしょう。 -
(4)日本人と同等額以上の報酬を受けること
日本人が従事する場合に受ける報酬と、同等額以上の報酬を受けなければいけません。
そのため、介護ビザを有する外国人労働者を、不当に低い金額で雇用することは認められていません。
5、介護ビザを有する外国人労働者を採用する流れ
介護事業者が介護ビザを有する外国人労働者を採用するためには、主に次のような手順で進めることになります。
まず、留学ビザを取得して日本に入国した外国人が、介護福祉士養成施設に2年以上通い介護福祉士の資格を取得します。介護事業者は、介護福祉士の資格を取得した外国人と雇用契約を締結し、採用します。
次に、採用した外国人本人が申請人となって、留学ビザから介護ビザに切り替えます。
具体的には、入国管理局に在留資格認定証明書などの必要書類とともに在留資格変更許可申請を行い、審査後介護ビザの在留カードが発行されます。
なお申請は、在留資格に変更が生じた日から変更前の在留ビザの満了日までに行わなければなりません。
本人がビザの切り替えを行わなければならないため、介護事業者は介護ビザに切り替えていることを確認する必要があります。
介護ビザを取得できたら、介護福祉士として業務に従事できることになります。
また、すでに介護ビザを取得している外国人を採用するケースも考えられます。
その際は、日本人を採用する際と同様です。ただし、採用にあたっては在留期間等に問題がないか確認することが大切です。
なお、介護ビザで介護業務以外に従事していた場合は、不法就労になる恐れがあります。採用した人材に任せる業務が、在留資格の活動に該当するかを確認するためには、入国管理局で「就労資格証明書」を取得してもらうと良いでしょう。
6、まとめ
本コラムでは、外国人労働者の受け入れを検討されている介護事業者の方に向けて「介護ビザ」について解説しました。
介護ビザで就労する外国人を雇用することは、長期的な人材確保につながります。一方で、在留資格(ビザ)を適切に更新することや、従事してもらう業務内容や報酬が適切かなど、採用する側もしっかりと管理することが求められるでしょう。
外国人を含めた従業員の雇用や介護事業所の運営に関しましては、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスにご相談ください。名古屋オフィスではビザの申請サポートも行っているので、外国人労働者を採用する際、さまざまな面からサポートが可能です。
まずは、お気軽にご連絡ください。
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