【企業向け】監査役を解任する場合の方法と注意点について
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監査役は会社のコンプライアンスにとって重要な役割を果たす役職です。
しかし、その監査役が業務を全うしないがために、監査役を解任したい、解任するにはどのような方法があるかなど、悩んでいる企業も少なくありません。また、監査役を解任した場合には損害賠償などを請求されないか、不安がある経営者もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では、監査役を解任する方法や損害賠償を受けるリスクなどについてベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、監査役とは
まず、そもそも監査役とはどのような役職なのか、基本的な事項を中心にご説明します。
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(1)監査役とは何をするのか?
① 監査をする
会社法では、監査役は、取締役(および会計参与設置会社では取締役及び会計参与)の職務の執行を「監査する」役職とされています(会社法381条1項)。
それでは、「監査」とは、何を意味するのでしょうか。「監査」とは、取締役らが行った行為について、その行為者とは別の者(ここでは監査役)が、一定の基準(法令や会計基準)に基づいてその職務行為が適正か否かを調査検討し、必要な場合は是正することをいいます。
監査役には取締役らの職務の執行が法令や定款など基準となるルールに適合しているかをチェックする役割があるのです。これを適法性監査といいます。
監査役の監査の対象となる範囲は、
(A)会計に関する監査(会計監査)
(B)会計以外の業務全般の監査(業務監査)
があります。
なお、監査役会設置会社と会計監査人設置会社を除く非公開会社では、定款で定めることで監査役の権限を(A)会計監査に限定することが認められています(会社法389条1項)。
② 調査権限
さらに、監査役はこのような会計監査と業務監査を遂行するために、取締役の職務執行を調査する権限があります。
監査役は、いつでも、取締役や従業員に対して、事業の報告を求め、会社の業務・財産状況を調査することができるのです(会社法381条2項)。このような監査役の調査権は、子会社にも及びます(同条3項)。
③ 報告、是正権限など
加えて監査役は、取締役の行為を是正する権限があります。
取締役が不正の行為をし、もしくはそのおそれがあると認めるとき、または法令もしくは定款に違反する事実もしくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければなりません(会社法382条)。
監査役は、取締役が不正の行為をし、もしくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、または、法令もしくは定款に違反する行為を会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為を止めることを請求することができます(会社法385条1項)。
この場合に、監査役は、会社を代表して裁判を行うことができます(会社法386条1項1号)。
監査役は、取締役会の招集を請求することができますし、また自ら取締役会を招集することもできます(会社法383条2項及び3項)。
また、監査役は、取締役会に出席する義務を負い、必要に応じて意見を述べなくてはなりません(会社法383条1項)。
他にも、監査役は、監査の結果を株主等に報告しなければならないため、各事業年度毎に監査報告を作成する必要があります(会社法381条1項、436条1項)。
さらに、監査役は、株主総会の提出議案等を調査し、法令・定款違反等の事項があれば調査結果を株主総会に報告しなければなりません(同法384条)。 -
(2)監査役の選任
監査役は株主総会の普通決議で選任されます(会社法329条1項)。ただし、定款の定めをもってしても、定足数は総株主の議決権の3分の1までしか下げられません(同法341条)。
取締役が監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するためには、監査役(監査役が二人以上の場合にはその過半数、監査役会設置会社である場合には監査役会)の同意を得なければなりません(会社法343条1項)。
このルールはいわば監査役に監査役選任議案に関する拒否権を与えるもので、監査役の独立性を高めるためのものです。
また、監査役は、取締役に対し、監査役の選任決議を株主総会の目的とするよう請求することができます(会社法第343条2項前段)。さらに、監査役の候補者を特定して、取締役に対し、その選任決議を株主総会に付議するよう請求することもできます(同項後段)。 -
(3)監査役の任期
監査役の任期は4年です。正確には、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までです。この任期は定款などで短縮することはできません(会社法336条1項)。
なお、非公開会社では、定款によって任期を10年まで伸ばすことも可能です(同条2項)。
2、監査役の主な退任事由
監査役の主な退任事由は以下の通りです。
- ① 任期の満了
- ② 任期途中の辞任
- ③ 資格喪失
- ④ 非公開会社から公開社会になること
- ⑤ 監査役を置く旨の定款を廃止する定款変更
- ⑥ 会社が監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社となること
- ⑦ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款変更
- ⑧ 解任
① 任期の満了とは、前述した4年の任期が完了することで退任することをいいます。
② 辞任とは、監査役が自らの意思によって職を辞することです。会社と監査役は委任契約の関係ですので、監査役は自ら意思でいつでも辞任することができます。
③ 資格喪失とは、監査役には会社法で定められた監査役としての資格が必要となりますが、これらの資格が任期途中で失われてしまう場合を指します。たとえば、兼任禁止の規制に反すると、監査役は任期途中でも退任します(会社法335条2項)。
監査する者と監査される者が同一であっては、監査の実が上がらないので、監査役は、会社の取締役や使用人(従業員)などを兼ねることができないとされています。監査役になった後で会社の従業員になった場合には、この兼任禁止の規制に反してしまうので、監査役の資格が失われることになるのです。
その他、④ 非公開会社から公開会社になること、⑤ 監査役を置く旨の定款を廃止する定款変更、⑥ 会社が監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社となること、⑦ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款変更などは、会社の組織形態の変更に伴う退任事由となります。
⑧ 解任については、次の章でご説明いたします。
3、監査役を解任する方法は?
解任とは、辞任(=監査役が自ら意思で退任すること)とは異なって、会社が監査役の意思に関係なく退任させることをいいます。
監査役を解任するためには、株主総会の特別決議が必要です。取締役の場合も、株主総会により、解任させることができますが、監査役の場合には独立性強化の観点から特別決議が必要とされています。
特別決議とは、議決権を行使することができる株主のうち、議決権の過半数を有する株主が出席した株主総会において、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります(会社法309条2項7号)。
なお普通決議では、議決権を有する株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権のうち過半数の賛成があれば足ります。なお、定款などによって出席が必要な株主の割合(定足数)を3分の1以下にすることはできません(会社法341条)。
4、監査役の不当解任による損害賠償請求に注意
監査役を解任する場合には、会社は、損害賠償請求に注意する必要があります。
前述のとおり、監査役を解任するためには、特に理由がなくとも株主総会の特別決議があれば可能です。もっとも、監査役や取締役といった役員が正当な理由がなく解任された場合には、その役員は会社に対して、解任によって生じた損害の賠償を請求することができるのです。
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(1)正当な理由とは
では、正当な理由とはどのようなものをいうのでしょうか。正当な理由がある解任であれば、監査役は会社に対して賠償を請求できません。
正当な理由としては主に- 役員の法令・定款違反行為
- 職務への著しい不適任
- 心身の故障
- 担当事業部門の廃業
などが挙げられています。
経営判断の失敗も正当な理由に入れる見解も多いですが、反対する見解もあり、裁判例の蓄積が待たれます。 -
(2)請求できる賠償額
損害賠償の対象となる損害は、通常は在任期間で得られたはずの報酬(通常の役員報酬や退職慰労金など)の額が賠償額となるものと考えられます。
5、解任によるトラブルを避けるためのポイント
解任は、監査役の意思とは無関係に、会社の方から一方的に辞めさせることです。
しかし、監査役を解任するのに正当な理由がなく解任された場合には、その役員は会社に対して、解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。
このようなトラブルをできる限り避けるためには、以下の方法があります。
監査役が自らの意思で辞める、すなわち「辞任」するよう、交渉することが考えられます。辞任であれば、解任とは異なり、辞めさせられたことに関する損害賠償を請求されることはありません。もっとも、辞任の要請が社会通念上許容される限度を超えるものと評価される場合には、損害賠償責任が生じる可能性がありますので、弁護士に相談されることをおすすめいたします。
② 任期満了まで待つ
任期満了まで待つことが可能であれば、解任という方法をとる必要がありません。タイミングの問題がありますが、この方法の場合でも損害賠償を請求されるということはありません。
③ 証拠集め
どうしても辞任には応じず、任期満了も遠いといったような場合で、解任によって辞めさせるほかない場合には、実際に解任する前に十分な証拠集めをしておくことを推奨します。
損害賠償をしなくてもよいケース、すなわち正当な理由がある場合としては、主に役員の法令・定款違反行為、職務への著しい不適任、心身の故障などです。万が一訴訟などになった場合に備え、会社としてはこれら正当な理由にあたる事実があったこと立証できるように事前にしっかりと準備しておく必要があります。
6、まとめ
以上のように、監査役を解任するためには、いくつかの方法があるものの、損害賠償の請求を受けるリスクを考えると、慎重な対応が求められます。
具体的なケースで会社としてどのように対応すべきか、頭を悩ますことが少なくなく、会社の状況に即した個別的な対応が求められます。
ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスでは、役員の解任を含め、会社法に関する取り扱いが豊富にあります。ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでぜひお気軽にご相談ください。
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