企業とフランチャイズ契約書を交わす際に気を付けるべきことは?

2019年07月24日
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企業とフランチャイズ契約書を交わす際に気を付けるべきことは?

コンビニをはじめとする小売店や飲食店、建設業など、新しく事業を始めてすぐに収益をあげるときは高いブランド価値をもつフランチャイズを利用することが考えられます。しかし、フランチャイズが事業者と事業者の契約であるからこその問題が起きている点には注意するべきでしょう。

本記事ではこれから何らかのチェーン店になろうと考えている会社や事業主のためにフランチャイズ契約書の内容やチェックすべきポイントを紹介します。

1、フランチャイズ事業とは?

日本フランチャイズチェーン協会の定義によると、フランチャイズとは、事業者(フランチャイザー)が他の事業者(フランチャイジー)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレードネーム、その他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージの元に商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助の下に事業を行う継続的関係をいいます。たとえばコンビニエンスストアや飲食店、学習塾、その他小売店で用いられています。

  1. (1)フランチャイズ契約とは

    上記のとおりであり、フランチャイズ契約により、フランチャイジーが、フランチャイザーの商標や経営上のノウハウを使用することができるとともに、フランチャイザーによる指導や援助を継続的に受けることができます。なお、フランチャイジーがフランチャイズ契約することを加盟と呼ぶことがよくあります。

    フランチャイズ契約をした場合、フランチャイジーはフランチャイザーと同じお店を営業することになります。

    フランチャイザーは常時加盟店を募集していますが、個人でも企業でもフランチャイズ契約によってそのチェーン店の経営者となることができます。決してフランチャイジーはフランチャイザーに雇用されるわけではありません。別の組織として一定の裁量が認められます。

  2. (2)中小小売商業振興法

    フランチャイズについて特別に決めた法律はないものの、参考にすべき法律はいくつかあります。まず知っておきたいのは中小小売商業振興法です。こちらの法律の中でフランチャイズ契約は特定連鎖化事業に当たります。

    フランチャイズ契約に必要な事項もこの法律および経済産業省令で決められています。

  3. (3)独占禁止法

    次に知っておくべきは独占禁止法です。独占禁止法ではフランチャイジーの立場を悪用した違法な要求やフランチャイズ契約終了後の苛烈な束縛を禁ずるための内容が書かれています。たとえば優越的な立場で要求を押し通し何かを購入させることは独占禁止法違反となり得ます。

    条文では優越的地位の濫用について禁ずるのみですから、具体的な制限は事例の蓄積で明らかになっていきます。不安であればフランチャイズ契約に詳しい弁護士に尋ねてみることがおすすめです。

  4. (4)労働法が関わることもある

    フランチャイジーは事業者としてフランチャイザーと契約します。そのため、あくまで経営者にお店の権利を貸すという意味合いです。ところがフランチャイズ契約の制約が厳しすぎて拘束時間を決められることがあります。

    こうなると、フランチャイザーの指揮命令によって働かされていると判断される可能性があるため、独占禁止法だけでなく労働基準法が問題となり得ます。なぜなら誰かの指揮命令にあるということは実質的に雇用契約だとみなされる可能性があるからです。

    フランチャイジーはあくまで事業者です。事業者である以上、何時間、どの時間に働くかは自由なので、拘束時間の制約が強い場合、実質的に雇用契約であると判断される可能性があります。

2、フランチャイズ契約書にはどのようなことが定められているか

フランチャイズ契約書にはフランチャイズ事業を始めるために必要な内容が書かれています。

  • フランチャイザーの名前と所在地
  • 使用する商号・商標について
  • フランチャイズ契約の目的
  • 契約の期間
  • 加盟金および保証金
  • ロイヤリティ
  • 経営の指導に関する事項
  • 営業時間
  • 商品の販売や在庫について
  • 契約の更新や解除について
  • フランチャイザーからの貸し付けについて
  • 損害賠償および違約金
  • テリトリー制
  • 従業員の扱いについて
  • 広告宣伝について
  • 競業禁止の取り決め
  • 譲渡禁止(お店をまた貸しすることはできません。)
  • 守秘義務
  • 管轄する裁判所

これらはフランチャイジーがどのような規律を守り、いくら支払うか。またフランチャイザーがフランチャイジーのために何をしてくれるのか等に関するものです。

ただ、これだけではフランチャイザーが本当に信用できるのかわからない部分があります。そこで中小小売商業振興法およびその施行規則では、契約書と別に一定の事項をまとめた書面を交付しその内容を説明しなければならないとしています。

契約書もこの法律に応じた形で作られていますが、先に紹介したもの以外では次の事項がフランチャイザーから説明されるようになっています。

  • 直近の3事業年度におけるフランチャイザーの決算書(あるいはそれに代わる資料)
  • 直近の3事業年度における加盟店の推移
  • 直近の5事業年度におけるフランチャイジーとフランチャイザー間の紛争件数
  • フランチャイザーの名称や所在、および役員の情報
  • フランチャイザーの資本金や主要株主
  • フランチャイザーが他に行っている事業について

これらは合意する事項でないもののフランチャイジーが知っておきたい情報です。気になる部分は細かく確認しましょう。

3、フランチャイズ契約書を見るとき特に気をつけるべきポイントは?

フランチャイズ契約書を確認する際、特に気をつけるべきポイントを紹介します。

  1. (1)フランチャイザーに何をいくら支払うのか

    フランチャイズ契約をする上で気になるのはやはりロイヤリティの金額でしょう。フランチャイジーとしては、できる限り売り上げに対する比率の低いロイヤリティであることが望ましいかと思います。ロイヤリティには定額制と変動制があり、定額制は売り上げが上がるほど得をする方式で、変動制は売り上げが少ないときの支払いを抑えられる方式です。

    もちろん、フランチャイジーが支払う月々のお金はロイヤリティだけではありません。経営指導を受けるのでその費用がかかります。店舗に売り上げ管理等のシステムを導入するための費用も必要です。
    さらに開始時は、加盟金と保証金の支払いも求められることが多いでしょう。

    これらを踏まえた上で本当に利益が出るのか、いつまで継続すると利益に転ずるのか等をよく考える必要があるでしょう。くれぐれも不意打ちのような追加費用を払わされることがないようご注意ください。

  2. (2)違約金はどうなっているのか

    フランチャイズ契約を途中で終了する際などに、違約金が定められている場合があります。違約金の額と違約金を支払う条件についてどちらもよく確認して検討するようにしてください。違約金が高すぎる場合は公序良俗に反することが考えられます、一方で違約金が低すぎる場合、フランチャイザーのメリットが少ないため経営難のサインともなりえます。

    違約金の条件は途中解約や競業防止義務違反などさまざまです。具体的に何をすれば違約金を支払うことになるのか、理解できるレベルまで確認することが後々のトラブルを防ぎます。

  3. (3)商標使用権について

    商標と商号はフランチャイザーの許可なく勝手に変えてはいけません。たとえば好みに合わないからと看板を勝手に別の色にしたり、マークを描き足したりなどしてはいけません。

    商標と商号はフランチャイザーに提示されたものを忠実に使ってください。どうしてもそれが難しい事情があるときは必ずフランチャイザーに相談してください。

  4. (4)契約期間と競業について

    契約期間と更新についても確認しておきましょう。契約日を1日間違えるだけでも損失につながりますし、競業禁止の取り決めも破ってはいけません。契約の期間や更新の条件については、よく確認しておくべきでしょう。

  5. (5)テリトリー制はどうなっているのか

    テリトリー制とは、フランチャイジーの商圏に別のフランチャイジーがお店を作らないようにするための決まりでフランチャイジーの利益を守るために重要なものです。どの範囲までをカバーしてくれるのかよく読みましょう。

    ただし、本部の利益のために直営店の進出を例外としているケースもあります。

  6. (6)ノウハウ提供はどのように行われるか

    フランチャイズのメリットのひとつは、看板の価値とノウハウ提供です。経営初心者でもすぐに運営ができるよう手厚いサポートをしてくれることは、フランチャイズ事業の大きなメリットといえるでしょう。しかし、中にはノウハウの提供が十分にできていないフランチャイザーもあれば、そもそもノウハウ提供の内容が不十分ということもあります。

    この点については契約書だけでなく、実際の加盟店状況を確認することが望ましいです。

4、まとめ

フランチャイズ契約は一般的な起業と異なり「最初から信頼がある状態で始めることができる」メリットがあります。そのメリットゆえにロイヤリティや事業者への義務が著しく不利になることもあるのが現状です。フランチャイジーが不利益を被る契約を避けたいときはベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスにご相談ください。経験豊富な弁護士がリーガルチェックをはじめさまざまな助言を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています