詐欺被害にも時効がある!? 詐欺罪の刑事・民事の時効を解説!
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詐欺は思いの外身近な犯罪です。ここ、名古屋市でも詐欺犯罪は後を絶たず、オレオレ詐欺や保険金詐欺などの罪を犯した疑いで、多くの人間が逮捕されています。
詐欺に遭ってすぐに被害が分かれば良いのですが、ずいぶん後になって契約が守られないことで、詐欺だったのではないかと疑い始めることもあるでしょう。
そのような場合、詐欺罪について時効が成立してしまう可能性があります。時効が成立すると、罪に問えなくなったり、詐取されたお金を返してほしいと請求したりすることが困難になります。
そこでここでは、詐欺に遭った場合はどのように時効が成立するのか、時効が成立した後でも、対処する方法はないのかを解説していきます。
1、詐欺罪と時効
「時効」という言葉自体は聞いたことがある方が多いと思います。一般的には、罪を犯しても時効が成立すれば、もはや罰することができなくなるというイメージを持っている方が多いでしょう。しかし、法律は「刑事」と「民事」とで別れており、時効もそれぞれ異なっています。はじめに、それぞれの時効について見ていきましょう。
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(1)刑事の時効
刑事の詐欺罪は刑法第246条で規定されている犯罪行為です。第1項で「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」とされ、第2項で「前項の方法により、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」とあります。
つまり、
- 他人をだまし
- 相手がだまされ
- だまされた結果、お金を渡す・サービスを提供するなどの処分行為をし
- 財産や利益が、だました者もしくは第三者に移転すること
これらに因果関係があり、最初からだまそうとする意図があった場合は詐欺罪が成立し、懲役10年以下に罰せられるということになります。
しかし、いつでも詐欺罪の刑事上の罪を問えるかというと、そうではありません。
詐欺罪の場合、公訴時効は7年と定められています。この「公訴」とは、検察官が裁判において被疑者に対して有罪判決を求める訴えのことで、公訴を提起することを起訴といます。この期間を過ぎると罪に問えなくなるのです。
なお、いつからこの7年という期間が算入されるのかも重要な点ですが、公訴時効は、犯罪行為が終わった時点から進行します。そのため、詐欺事件が終わった時から7年経過した場合、起訴することはできなくなりますので注意が必要です。 -
(2)民事の時効
民事における詐欺罪の時効は、刑事の場合と異なります。
●損害賠償請求の時効
まず、民法第96条により、相手をだましたり、脅迫をしたりして結ばせた契約は無効になります。つまり、最初から契約が成立していない、ということになるのです。そこで、相手に渡してしまった財産(つまり損害)を取り返すため、詐欺という不法行為に基づく損害賠償を請求することになります。
そして、この損害賠償請求権の時効は
- 原因となる出来事が起きた時点から20年
- 損害および加害者を知った時点から3年間
です。
つまり、詐欺に遭ったと気がついた場合には、その時点から3年以内に損害賠償を請求しなくてはいけないことになります。
●慰謝料の請求
なお、被害に遭った金員だけではなく、詐欺被害により被った精神的苦痛に対する損害、いわゆる慰謝料についても、請求することが考えられます。この場合、慰謝料も損害賠償の一種のため、時効については、上記と同様に考えます。
よって、詐欺によって生じた神的苦痛に対する損害、すなわち慰謝料を請求する場合の時効期間も、詐欺の時点から20年、詐欺による被害及び加害者を知った時点から3年となります。
2、時効の期間が過ぎてしまうと被害は救済されない?
前述したように、詐欺に遭った場合、刑事も民事もそれぞれに時効が定められています。しかし、時効の期間が過ぎていたからといって、救済の方法がないわけではありません。
以下、刑事・民事それぞれを見ていきましょう。
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(1)刑事の場合
刑事の時効は、時間の経過によって捜査が難しくなるために、7年の時効があるという側面があります。しかし例外的に、以下の2つのケースでは7年以上過ぎていても相手を罰することができるのです。
1つ目は、被疑者が国外に逃亡した場合です。被疑者が国外にいる場合、時効はストップします。ただし、国内で逃げている場合は適用の範囲外です。
2つ目のケースは、起訴をするところまで手続きが進んだのに、被疑者が逃げて起訴状を渡すことができず、裁判が始められない場合です。この場合も、裁判所がこの訴え(公訴)を棄却する判決が確定するまでは、時効がストップします。 -
(2)民事の場合
民事の場合は、当事者が「この件は時効が成立しているので、時効を援用する」と言ってこない限りは時効が成立しない、というルールがあります。
そのため、まずは加害者の側から「時効を援用する」と書かれた通知が出されているかどうかを確認しましょう。それがなければ、損害賠償請求が認められる可能性があります。もっとも、訴訟において、時効を援用することもでき、時効を援用されてしまうと請求が棄却されてしまいます。
3、詐欺に遭ったら弁護士へ相談を! 時効の更新をしよう
ここまで時効について解説してきましたが、詐欺に気が付いたとして、まず、時効が進むのを止めるためにはどうしたらいいのでしょうか?
時効は、ただ相手の非を訴えるだけでストップするものではありません。実は、裁判を起こすことや支払い督促をすることで時効の完成が猶予されたり、時効期間が更新されたりします
しかし、どのような手続きをすれば時効の完成が猶予されるのか、そういった場合に時効期間が更新されるのか、一般的には知らない方がほとんどでしょう。
どのような場合に時効の完成が猶予されるのか、時効期間が更新されるのかというのは、非常に分かりにくいものです。
時効のために請求が認められなかったということを避けたいのであれば、一度、弁護士にご相談されることをおすすめします。
4、時効の更新以外にもある、弁護士に依頼するべき理由
前述したように、時効は権利関係が時間の経過によって曖昧になってしまうために定められている規定です。詐欺に気が付いたら、すぐに手を打つべきでしょう。
しかし、詐欺にあったかもしれない、相手と連絡が取れずどうすればいいのかもわからない場合などは、どのように対処すべきかわからない方も多いでしょう。
そんな場合はすぐにでも、弁護士にご相談ください。弁護士に相談すれば、時効に関してのアドバイス以外にも以下のようなメリットが得られます。
●証拠集めや複雑な手続きを任せられる
詐欺は、どの時点でどのような請求をすることが可能になるのか、見極めが難しいところがあります。時間がたてばたつほど、証拠も集めにくくなります。
しかし、弁護士ならば、どのような証拠をもとにどのような請求ができるのかを見定めて行動できますし、裁判になった場合に、代理人として行動することもできます。
●賠償金額の増額の可能性
詐欺の被害に遭った場合、民事事件において、だまし取られた金員を損害として請求するだけではなく、だまされたことによる精神的苦痛や弁護士に依頼をした場合の弁護士費用を「損害」として請求することもあります。
何を損害として請求すれば良いのか、一般の方では見極めが難しいと思いますので、弁護士にご相談されることをおすすめします。
刑事事件になったケースでは、加害者は被害者と示談をすることで、罪を軽くしようとすることがあります。そんなとき、弁護士がいれば被害者の代理人として、加害者との間で有利に交渉を進められる可能性も高まります。
5、まとめ
詐欺の場合、だまされたことに気が付くまでに時間がかかり、証拠が残っていない場合なども多くあります。また、だまされたことを誰にも相談できずに、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
詐欺事件はひとりで悩んでいても解決しませんし、そうしているうちに時効を迎えてしまう危険性もあります。詐欺にあった可能性のある方は、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。
もし、詐欺にあったかもしれないと不安を抱えている場合は、お気軽にベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでご相談ください。詐欺事件の経験豊富な弁護士が、迅速にお悩みを解決いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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