交通事故 後遺障害の申請方法とは? 名古屋の弁護士が解説します
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愛知県における令和2年中の人身事故発生件数は2万4879件、事故による死者数は154人、負傷者数は2万9559人でした。愛知県は令和2年時点で、交通事故の死者数が東京都に次ぎ第2位であり、交通事故が多い地域であることが分かります。
交通事故の被害者の中には治療を続けても完治せず、今後の生活に不安を抱えている方もいるはずです。症状が残ってしまった場合、それが後遺障害として認定されれば、加害者に対して後遺症慰謝料や逸失利益などの特別な賠償金を請求することができます。
本コラムでは交通事故の後遺障害について、後遺障害等級認定申請の流れや手続き上の注意点などを弁護士が解説します。
1、後遺障害とは?
傷病の治療を続けたにもかかわらず、何らかの機能障害や神経症状などが残ってしまうことを一般的に「後遺症」といいます。日本には交通事故によって身体に存することとなった労働能力の低下や喪失をともなう障害を「後遺障害」として等級認定する制度があり、「後遺障害」に認定されると適切な賠償を受けられるようになります。
後遺障害は状態や程度によって14等級に分けられており、等級によって自賠責保険から受け取ることのできる保険金が違います。
なお、後遺障害等級について詳しく知りたい方は以下のコラムをご覧ください。
後遺障害が認定された場合に支払われる賠償金について~後遺障害等級表の読み方と慰謝料・逸失利益の算出方法
2、交通事故で症状が残ったら後遺障害の申請を
一般的に認められる治療方法によっても効果が期待できない状態で、かつ、症状の改善がこれ以上見込めない状態を「症状固定」といいます。
交通事故の治療段階では、被害者は治療費や通院交通費、休業損害などを加害者(保険会社)に請求できますが、症状固定後は原則としてこれらの費用を請求できなくなります。しかし、症状固定後も痛みや思うように体を動かせないといった後遺症が残ると、継続的なケアが必要になったり、仕事へ支障が出て収入が激減してしまう可能性があります。
後遺障害が残存したという部分についての補償を受けるためには手続を踏む必要があります。具体的には後遺障害等級認定申請をして、後遺障害と認められれば、症状固定後の後遺症の精神的苦痛に対する「後遺障害慰謝料」、労働能力の損失に対する「逸失利益」を請求することができます。逸失利益とは、後遺障害がなければ今後仕事で得られたであろう利益を金銭的に評価したものをいいます。
3、後遺障害認定手続きの流れや注意点
後遺障害認定を受けるための申請手続きの流れを注意点とともに解説します。
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(1)認定手続きの流れ
後遺障害の認定手続きは、まず治療を担当した医師に「後遺障害診断書」を作成してもらうことから始まります。医師から症状固定と判断された時点で作成を依頼します。これを診療報酬明細書や交通事故証明書などの必要書類とともに自賠責保険会社へ提出します。
その後、損害保険料率算出機構の調査によって後遺障害の等級が決定し、調査機関から保険会社へ結果が通知されます。その後、保険会社から結果が通知されます。結果に不服があれば保険会社に対して異議申し立てをおこないます。 -
(2)後遺障害診断書の重要性
後遺障害の認定は被害者の治療を担当していた医師ではなく「損害保険料率算出機構」が行います。医師は医学的知見から適切な治療を実施しますが、後遺障害を認定する権限はありません。ただし、後遺障害の認定は原則として書面の審査によって決定されるため、医師が作成した診断書及び後遺障害診断書等は等級認定の重要な根拠となります。
つまり、症状に応じた後遺障害を正しく認定してもらうためには、医師に必要な検査を実施してもらい、不備のない後遺障害診断書を作成してもらうことが大切です。場合によっては医師に積極的な働きかけを行うことも視野に入れる必要があります。 -
(3)2つの申請方法と注意点
後遺障害認定の申請には「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。
事前認定とは、加害者の保険会社経由で申請する方法です。資料集めや手続きの手間が省ける一方、被害者側に有利な資料や証拠を集められない、被害者側に不利な記述を修正することができない、申請過程を把握できないという問題があります。そのため、思うような結果にならないリスクがあります。
被害者請求は、被害者が直接手続きを行う方法です。資料集めや手続きの手間がかかりますが、できる限り有利な証拠を揃え、不利な記述を修正したり、不利な事情を補う説明文書を提出することもできます。そのため、適正な認定を受けるためにも被害者請求をおすすめします。
4、後遺障害が心配なら弁護士へ相談を
交通事故で後遺症が残ってしまっても、適切な賠償を受けることができれば今後の生活費や治療費の面で安心できます。後遺症を心配し始めた時点で弁護士へ相談することをおすすめします。ここでは弁護士に依頼するメリットを紹介します。
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(1)賠償金の増額が期待できる
交通事故における賠償金の基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判所基準」の3つがあります。
自賠責基準は、自賠責保険が定めている基準のことで、後遺障害に関する保険金も「後遺障害別等級表」で明確にされています。ただし、人身事故に対する最低限の保障を早期に受け取ることを目的としているため、3つの中で賠償額がもっとも低く算定される基準です。
任意保険基準は、各保険会社が定めている非公開の基準です。一般的に自賠責基準と同じ程度の金額か、多少の高い金額が算出されます。
裁判所基準は、蓄積された判例をもとに裁判で決着した場合を想定して設けられた基準です。自賠責基準や任意保険基準よりも高額で、その差は2倍あるいは3倍以上になることもあります。弁護士は裁判所基準をもとに交渉するので、もっとも高額な賠償金の獲得が期待できます。 -
(2)後遺障害認定の徹底的なサポート
症状に応じた後遺障害認定を受けるためには、申請に際して、事前に入念に準備しておくことが重要です。専門的な知識を有する弁護士であれば、診断書作成において医師に伝えるべき内容をアドバイスしてくれますし、作成された診断書に不備がないかも検討してくれます。また、必要に応じて医師と面談し、審査に有利となる検査を依頼したりすることもあるでしょう。
申請手続きでは、被害者請求手続を被害者の代わりに行い、有利な資料・証拠を集めアドバイスをするとともに、必要に応じて弁護士からの意見書を提出します。これらのサポートによって被害者の手間を省くと共に、しっかりとした申請書面を作成することで適正な後遺障害認定の獲得を目指します。 -
(3)治療段階で相談を
弁護士へは症状固定後に相談することもできますが、交通事故後時間が経ってしまってからでは、通院の仕方や検査のタイミング等についてアドバイスすることができなくなってしまいますので、後遺障害認定において不利に働く可能性があります。後遺症が残るか分からない場合でも、後遺障害認定を申請する可能性を視野に入れて、治療段階で相談しておくことをおすすめします。
5、まとめ
今回は交通事故で被害者となってしまった方に向けて、後遺障害の認定を求める手続きや流れ、注意点などを解説しました。交通事故の補償をしっかり受けるためには、後遺障害の等級認定を受け、裁判所基準による賠償金を獲得することが大切です。とはいえ、慣れない手続きや交渉を行うことは、労力がかかるだけでなく希望した結果につながりにくくなることにも繋がりかねません。交通事故で被害に遭われたら、なるべく早く弁護士に相談することが大切です。
ベリーベスト法律事務所では、後遺障害認定手続きから加害者との交渉まで全面的にサポートいたします。もしも交通事故で被害者となり、交渉の不安に悩まれているようでしたら、ベリーベスト法律事務所・名古屋オフィスまでご相談ください。弁護士が力になります。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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