交通事故で骨折した場合の慰謝料はいくら?
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名古屋市の公表している交通事故死傷者数の統計資料によると、令和2年の名古屋市内で発生した交通事故による死傷者数は、死者数が42人、負傷者数が9344人でした。負傷者数は、微増微減を繰り返しながらも減少しており、平成15年以降で最も少ない数値となっています。
交通事故の被害に遭って、骨折をしてしまった場合には、治療が長期化し、それに伴い慰謝料の金額も高額になる傾向があります。また、骨折の部位や程度によっては、事故前の状態には戻らず、後遺障害が生じる可能性もあります。このように骨折をした場合には、交通事故の賠償金が高額になる可能性がありますので、交通事故の被害者としては、示談交渉にあたって、どのような損害を請求することができるかを知っておいた方がよいでしょう。
今回は、交通事故によって骨折した場合の損害について、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故の骨折で早期に診察を受けることの重要性とは?
交通事故で骨折をした場合には、早期に病院の診察を受けることが重要です。早期に診察を受けることによって、以下のようなメリットがあります。
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(1)交通事故との因果関係を証明できる可能性が高まる
交通事故の被害に遭った場合には、加害者または加害者が加入する保険会社から損害の賠償を受けることができますが、損害賠償の対象は、あくまでも交通事故と因果関係のある損害部分に限られます。
因果関係の有無は、交通事故の被害者が証明していかなければなりません。
事故から治療までに期間が空いてしまうと、この骨折が事故によるものであるのか、それ以外の原因であるのかがわからず、交通事故と怪我との因果関係を争うことになる場合があります。
また、その際、因果関係の証明ができなければ、骨折によって重篤な障害が残ってしまったとしても、それに対する賠償は一切受けることができません。そのため、交通事故に遭った場合には、早期に治療を受けることが重要となるのです。 -
(2)骨折に伴う後遺障害のリスクを減らす
交通事故当日は、興奮していることもあり、骨折をしていたとしても痛みを感じず、骨折に気付かないということもめずらしくありません。自分だけで「大丈夫だろう」と判断して、治療を後回しにしてしまうのは非常に危険です。
骨折の治療が遅れた場合には、治癒するまでに時間がかかったり、可動域に制限が生じるなどの障害が残ることもあります。
障害を残さないようにするためには、早期に正しい診断と適切な治療を受けるということが重要になります。 -
(3)ヒビも骨折に含まれる
骨折という言葉からは、骨が折れている状態を想像する方も多いかもしれません。しかし、骨折には、さまざまな種類があり、骨にヒビが入ることなども骨折の一種です。
骨折の疑いがある場合には、エックス線写真を撮ることによって、骨折の有無が明らかになります。そのため、少しでも身体に痛みや違和感を抱いた場合には、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
なお、交通事故によって生じやすい骨折としては、単純骨折、開放性骨折、剥離骨折などが挙げられます。
2、骨折で通院する場合の注意点
骨折で通院をする場合には、以下の点に注意して通院をするようにしましょう。
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(1)痛みや違和感がある部分はきちんと申告する
骨折による症状としては、圧痛、変形・異常可動性、内出血、腫れなどがありますが、骨折の部位、程度などによってその症状は大きく異なってきます。そのため、交通事故の被害者によっては、骨折の症状があまりなく、骨折以外の痛みが強い場合には、骨折以外の部分だけを医師に伝えてしまい、初診時には医師も骨折に気付けないということもあります。
第1章でも述べましたが、事故から何週間も経過して、初めて症状を訴え、そこで骨折が判明したとしても、事故との因果関係が否定されてしまい、適切な賠償を受けることができない可能性も出てきます。
医療機関を受診した場合には、少しでも痛みや違和感がある部分については、遠慮なく医師に申告をして、検査を受けておくことが重要となります。 -
(2)通院を継続する
骨折の治療としては、主にギプスなどで固定をして骨がつながるのを待つという保存療法がおこなわれます。そのため、通院をしたとしても経過観察が中心となりますので、「通院をしてもやることがない」、「もう痛みがない」などの理由で、被害者自身の判断によって通院をやめてしまうこともあります。
しかし、自己の判断によって通院をやめてしまうと、治療期間が短いということで、慰謝料が少なくなってしまったり、後遺症が生じたとしても治療の中断を理由に、後遺障害等級認定を受けることができない可能性があります。
そのため、適切な賠償を受けるためにも、医師による完治または症状固定の診断がなされるまでは、通院を継続するようにしましょう。
3、交通事故被害者が請求できる慰謝料とは?
交通事故によって怪我をした場合には、以下のような項目について損害賠償請求をすることができます。交通事故の損害賠償のことを慰謝料と誤解している方もいますが、慰謝料は、交通事故損害賠償の項目のひとつであり、「慰謝料=損害賠償」ではありませんので注意しましょう。
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(1)人身損害
交通事故によって怪我をした場合には、以下のような損害を請求することができます。
① 治療費
治療費とは、怪我の治療に必要かつ相当な実費のことです。必要性・相当性のない治療を受けた場合には、「過剰な診療である」などとして否定されることがあります。
② 通院交通費
通院交通費とは、通院のために自家用車を利用した場合のガソリン代や公共交通機関を利用した場合の運賃などのことをいいます。通院にタクシーを利用する場合には、その必要性と相当性がなければ損害としては認められません。
③ 休業損害
休業損害とは、通院などのために仕事を休んだことによる収入の減少分の賠償です。会社員の場合には、事故前の収入を基礎として現実の収入の減少分について認められますが、専業主婦であっても家事労働に支障が生じますので、賃金センサスを基礎として休業損害を請求することができます。
④ 入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、入院や通院によって被った精神的苦痛に対する賠償です。
入通院慰謝料の算定基準には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」の3種類があり、どの基準を採用するかによって慰謝料の金額は大きく異なってきます。たとえば、自賠責保険基準では、通院実日数に応じて1日あたり4300円が基準になりますが、弁護士基準は、怪我の程度や入通院期間などに応じて計算することになります。
一般的には、弁護士基準が最も高額な基準です。
⑤ 後遺障害慰謝料
怪我が完治せずに、後遺障害が生じた場合には、認定された後遺障害等級に応じて慰謝料が支払われます。
入通院慰謝料と同様に、弁護士基準で算定した後遺障害慰謝料が最も高額になります。
⑥ 逸失利益
交通事故によって後遺障害が生じた場合には、労働能力が低下して、将来にわたって収入が減少することがあります。このような将来の減収分は、逸失利益として損害賠償請求をすることができます。
なお、逸失利益は、後遺障害の程度に応じて、以下のように計算します。
基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 -
(2)物損
交通事故によって車が壊れたりして損害が生じた場合には、以下のような損害を請求することができます。
① 修理費
車が傷ついたり、壊れたりした場合に修理が相当な場合、適正修理費相当額を請求することができます。ただし、修理費が車の時価を上回る場合には、経済的全損として、車の時価額が賠償の対象となります。
② 登録手続関係費
買い替えのために必要になった、登録費用などの法定手数料相当分、およびディーラー報酬部分のうち相当額、ならびに自動車取得税については、登録手続関係費として損害賠償の対象に含まれます。
③ 評価損
修理をしたとしても外観や機能に欠損を生じ、または事故歴によって車の価値が下がる場合には、事故前の車両価格と、修理後の車両価格の差額について評価損を請求することができる場合があります。
④ 代車使用料
車の修理などのためにレンタカーを利用した場合には、相当な修理期間又は買換え期間中、代車使用料も請求することができます。
4、まとめ
交通事故によって骨折をした場合には、さまざまな損害が生じることがあります。入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益が生じる場合には、弁護士基準によって算定することによってより多くの賠償金を得られる可能性があります。
弁護士基準で算定した賠償金を請求することができるのは、弁護士に依頼をした場合に限られますので、早期に弁護士に相談をすることをおすすめします。
交通事故の被害に遭った方は、ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィスまでお気軽にご相談ください。
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